第516話 真面目な騎士を追え
朝食を終え屋台から出たグレンたちは路地を抜けたところで、ステファニーと別れることになった。ステファニーはララとラピの前にしゃがんで声をかける。
「今日も夜にパトロールに来る?」
「もちろんよ。まだ捕まえてないからね」
「んだ!」
「わかったー。ありがとう」
大きくうなずくララとラピをステファニーは二人の頭を撫でて立ち上がった。
「じゃあ今日の夜も待ってるねぇ! バイバーイ!」
ステファニーは駆け出してすぐに振り向き両手を大きく振った。ララとラピが手を振り返すとすぐに前を向いて走って去って行った。
「ふわあああ…… 俺達も早く帰るろうぜ」
「そうですね」
通りの向こうにステファニーが消えると、グレンが大きくあくびをし背伸びをした。地下へと続く階段の方角を指さして歩き出す。
四人はヴァンパイアハンター協会へ戻り深夜巡回で疲れた体を癒すのだった。
その日の夜…… グレン達は今日も貧民街へとやって来た。神聖騎士団の詰め所の扉の前にステファニーが立ち彼女の前にグレン達が並んでいる。
「じゃあ! 気をつけてね。何かあったらすぐに連絡してねぇ」
「んだ!」
ラピは大きくうなずく。手を振るステファニーに見送られグレン達はゴミ捨て場の巡回を開始した。山の間に道をグレン達は進む。視線を横に向けると貧民街の町の人々がゴミ拾いに勤しんでいる姿が見える。
「さて…… 今日も気合をいれ…… えっ!?」
気合を入れようと腕をまくる仕草をしたララだったが何者かに後ろに引っ張られた。慌てて彼女が勢いよく振り向いた。
「ちょっとクレア……」
「グレンさんもなんだべ……」
ララを引っ張ったのはクレアで同時にラピもグレンに引っ張られていた。グレンは指を口に当て二人に静かにするように指示をする。
「シー! 静かにしろ!」
「なんなのよ……」
ララとラピは引きずられるようにして道を戻り、神聖騎士団の詰め所の前へと戻って来た。
「どこか…… あそこだな!」
「そうですね…… ララちゃん行きますよ!」
「「わっ!?」」
クレアとグレンが飛び上がった。二人に引っ張られララとラピも浮かび上がる。詰め所の横にある監視塔へと飛んで来た。木で組まれた監視塔の頂上は屋根があり一メートルほどの壁に囲まれていた。梯子がかけられ壁がない隙間からグレン達は監視塔の中へ入った。
「なんでこんなとこ……」
「あっ! まずい! 隠れろ!」
「えっ!?」
しゃがんで櫓の壁に隠れろと指示するグレンだった。すぐにグレンが壁から顔を出して下を向く。横でララも彼と同じように顔を出した。
「あれは…… ジャンセン…… どこに……」
詰め所の扉が開いてジャンセンが出て来てゴミ山の方角へ歩いていく。ララがジャンセンを目で追っていた。横に彼女と同じように顔から壁を出していたラピが何かに気づいた。
「トーキーさんもだべか……」
ジャンセンが出てからすぐに続いてトーキーが扉を開けて出て来た。トーキーはゴミ山の前で横を向き酒場の方角へ向かって歩いていく。
監視塔の上から二人の行動を覗いていたクレアが立ちあがる。グレンが彼女に続き、ララとラピは身長からちょうど壁から顔が出るくらいでかがんでいたので体を起こす。
四角い監視塔の中央にグレン達が集まりクレアが口を開く。
「さて二人は別に行きましたね…… どうしましょうか?」
「二手に分かれるか」
「そうですね」
クレアとグレンが会話をしていると首をかしげてララが口を開く。
「ねえどういうこと? なんで二人を……」
「ステファニーさんが言ってましたよね? テックさんの手袋を盗んだのは神聖騎士か私達だって」
「えっ!?」
驚くララに横にラピがハッと目を見開いて手を叩いた。テックの店に入ったのはグレン達とダイアと神聖騎士だけだ。ジャンセンもトーキーも神聖騎士であり疑う必要がある。
「そっそっか! あの二人も神聖騎士だべな」
「はい。ラピちゃん! 偉いですよ。そして昨日二人は私達が来てから姿を消した……」
「怪しいわね」
顎に手を置いて視線を横に動かしララがつぶやいた。彼女は右手を突き上げラピに顔を向けた。
「よーし! じゃあラピ! あんたはジャンセンをお願いね。私はトーキーを追いかけるわ」
「わかったべ!」
胸を叩いてうなずくラピだった。二人を見てグレンとクレアは顔を見合せた。
「じゃあグレン君はララちゃんをお願いします。ラピちゃんは私と一緒ですよ。終わったらここに戻って来てください」
「おう。わかった」
返事をしたグレンはララの元へ向かい、クレアはラピを呼ぶのだった。
二手に分かれたグレン達はトーキーをクレアとラピがジャンセンをグレンとララが尾行する。
「真面目そうなのに…… 泥棒なんかするのかな?」
「見た目と素行なんて一致しないもんさ」
歩くジャンセンの後方で物陰に隠れながら彼を覗き込みララがつぶやく。彼女の頭の上から顔をだしたグレンが答えた。ララをわざとらしく驚いた顔をして視線を上に向けた。
「えぇ?! グレンは不真面目そうで不真面目だけど……」
「うっうるせえな! 俺の話じゃねえよ」
「あははは。怒った」
笑うララにグレンは顔をしかめていたいる。前を行くジャンセンが足を止めた。前からボロボロの服を着た男がジャンセンの元へ歩いて来た。
「見て…… 誰かと会うみたいよ」
「おう。気をつけろよ」
「わかった」
ジッとジャンセンを見つめるララだった。ジャンセンと男は立ち話をしていた。途中でジャンセンに男が何かを渡しているのが見える。
「行っちゃったね……」
「そうだな。行くぞ」
ジャンセンは男と別れまた歩きだした。グレン達は距離を置いて彼を尾行する。
「うん!? またか……」
しばらく歩くとジャンセンは立ち止まる、すると今度は男性と女性の二人組が近づいて来た。ジャンセンと男女は軽く会話をしまたジャンセンに何かを渡して別れ歩き出した。
「何をしているのかしら……」
「さあな……」
視線をジャンセンへ向けるグレンだった。ゴミ捨て場を進むジャンセンをグレン達は尾行し続けた。
「あっ…… あれ!? あいつ……」
「どうした?」
ゴミ山の前に立ち止まったジャンセンに三人の男が近づいて来て会話を始めた。
「あれ…… 私達がゴミを触ったら襲い掛かって来たやつよ。確か捕まったはずなのに……」
「そうなのか……」
視線をジャンセンに向けるが売れんだった。ジャンセンは先ほど同様に同じく何かを受け取りまた歩き出した。
「おっと! 急ぐぞ!」
「わっ! 待ちなさいよ」
ゴミ山の間を歩いていたジャンセンがゴミ山とゴミ山の隙間にある角を曲がって姿を消した。グレン達は彼を見失わないように小走りで後を追う。
二人が角を曲がった。ゴミ山とゴミ山の間に出来た道で奥は暗がりになって見えない。ジャンセンの姿は暗がりに奥へとすでに消えていた。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
暗がりの奥で悲鳴が聞こえたララとグレンは顔を見合わせると同時にうなずいた。ララは右手を横に伸ばし短剣をうかせる。グレンは剣に手をかけた。二人は奥に見える暗がりの中へとかけていく。
「もうやめてください!」
「ふん…… 黙れ!!!」
グレン達が飛び込んだ暗がりの奥で、ボロボロの服を着た女性の手をつかみ馬乗りになるジャンセンだった。女性は若く青い短い髪に青い瞳を持っている。彼女の服は上半身を脱がされていた。
ジャンセンが口を開け女性に顔を近づけていくのだった……




