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新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~  作者: ネコ軍団
第5章 メスガキヴァンパイアハンターは蝕まれる聖都を目指す!

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第510話 実験用ヴァンパイア

 男へ向けたローキンスの左手が青く光り出した。笑顔でローキンスは男に声をかける。


「大丈夫。すぐに終わるから大人しくしようね…… 風の精霊よ。心地良い風の手触りで子羊を安らぎへといざなえ。ウィンドルミー!」

「あっああああ…… やめ…… やめて…… グゥ……」


 青く優しい光に照らされた男は眠りについてしまった。ローキンスは睡眠魔法を男にかけたのだ。慣れた様子で鉄格子を開け中へ入った。


「さっさと日除けを塗ってと……」


 ローキンスはポケットから丸い缶を取り出し蓋を開ける。深緑色のドロッと液体が中に入っておりローキンスは手で液体を取って男の体に塗りつけていく。缶に入った液体はダグオンが作った日除けである。


「なっなだべ? あいつは…… ヴァンパイアだべか?」


 倒れて日除けをローキンスが


「はい。実験体ですね。クロースさんに捕まえてもらいました」

「クロースさんに!?」


 振り向いたダグオンが笑顔でうなずいた答える。男は捕獲されたヴァンパイアで実験体としてここに連れ来られたようだ。


「グレンさん。クレアさんは知ってただが?」


 ラピはグレンとクレアに叫ぶように大きな声で尋ねる。二人はラピの問いかけに平然とうなずいた答える。


「あぁ。ヴァンパイアハンター協会は検体としてヴァンパイアをダグオンに提供しているんだ」

「ヴァンパイア用の対策にヴァンパイアを実験体にするのが最適ですからね」

「そっそげな…… ひどくねが?」


 グレンとクレアの言葉にラピはショックを受けたのか顔を青ざめさせている。ヴァンパイアを捕獲し実験体として使用するという非人道的行為を、ヴァンパイアハンター協会が率先しておこなっていた。

 ショックを受けているラピの横でクレアは冷たい目を男に向けた。


「彼はキョウジ…… 自らヴァンパイアへと身を落としその能力を使って殺人に強姦をしたヴァンパイアです。ノウレッジからの排除が確定しています。だから有効活用しているんですよ」

「でっでも…… 法廷に……」

「ありません」


 法廷で裁きを受けさせるべきというラピにクレアは即座に否定し首を大きく横に振った。彼女は冷対目でキョウジを見つめて淡々と答える。


「ヴァンパイアに法廷で審判を受ける権利はありません。教会は彼らを人として認めてません。魔物と同じです」

「あぁ。だから人として最後を迎えたきゃ血清をうつ必要があるんだ。もちろん犯罪者に貴重な血清はうてないからな」

「うっ…… でも…… ずっと実験してたら…… あいつは……」


 グレンは大きくうなずき自らの胸を右手の親指で指した。教会とヴァンパイアは古くから争っており、教会の現生主義派が統治するノウレッジではヴァンパイアに一切の権利は認められていないのだ。

 二人の言葉にラピはうつむいてしまった。ダグオンはラピの背中に優しく手を当てた。彼の手に気づいたラピが顔をあげた。


「心配しなくても大丈夫ですよ。彼は最後に僕のサザンクロスでちゃーんと処分しますから」

「そげなことじゃねえべさ!」

「えっ!?」


 ダグオンはラピがヴァンパイアの処分について気にしていると勘違い声をかけた。ヴァンパイアの境遇に同乗していたラピは的外れなダグオンの言葉にムッとして叫ぶのだった。

 腕を組み不満そうにするラピだった。ふと彼女が視線を横にするとララが平然としてかすかに口元を緩ませた表情で檻を見つめている。ラピはララに声をかける。


「おめさは驚かねえんだな?」

「魔法技術の発展なんてこんなもんよ…… あんたを助けた血清だったグレンが動物で試したんだから…… ねぇ?」


 ララが視線をグレンとダグオンに順に向ける。グレンとダグオンは大きくうなずいた。


「あぁ。そうだ…… 何かをなすには何かを犠牲にすることもある……」

「はい。生存競争は時に厳しいんですよ」


 二人に続いてクレアもうなずいて口を開いた。


「そうですね。魔王軍との戦争がなければノウレッジはこんなに急発展してませんでしょうね」

「んだか……」


 魔王との戦争は多くの犠牲を生んで終結したが、同時に魔導技術が飛躍的に発展し現在のノウレッジの発展に大きく貢献した。魔王軍との戦争がなければ開発は十年以上遅れていただろう。ラピは難しい顔をして考え込んでしまった。心配そうにグレンとクレアはラピを見つめるのだった。


「さぁ! 始まりますよ!」


 ダグオンが声をあげた。寝ているヴァンパイアを抱えてローキンスが檻から出て来た。ヴァンパイアは手足を縛られ拘束されていた。

 ローキンスは実験室の中央にヴァンパイアを置いた。振り向いたローキンスは作業台へと戻り、置かれた水晶に手をかざした。

 浮かんでいたサザンクロスが青く光りだし天井に雨雲が立ち込めていく。


「あのヴァンパイアにはグローブ草に日除けを塗っています」

「えっ!? 全部食べちゃったのに?」

「いくつからサンプルを持って帰りましたので作りました」


 得意げに笑うダグオンにララは呆然としていた。グローブ草を使った日除けゴッドスキンケアパウダーはダグオンが開発したもので材料さえあれば簡単に作れる。

 実験室に風が吹いた。風とポツっとララの頬に振り出した雨粒が当たる。彼女は手を広げ上に向けて天井を見上げる。


「雨が…… それに風も」

「これはレインシャワーですね。サザンクロスに雨を降らせてたんです」


 雨雲を指すダグオンだった。雨雲の隙間からサザンクロスの青い光が漏れていた。レインシャワーは小さな範囲の天候を操り雨を降らす水属性の中級魔法だ。雨は強くなり倒れてヴァンパイアに降り注ぐ。


「うーうー!!!」


 頬に雨が当たったヴァンパイアが目を覚またようだ。彼は声をあげ必死に動いて逃げ出そうと体をよじらせていた。

 ローキンスは体をヴァンパイアに向け彼の様子を見るともう一度水晶に手をかざした。雨雲が消えていき赤く神々しく光るサザンクロスが現れた。


「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」


 赤い光に照らされたヴァンパイアが光に照らされると顔や手足が燃えだした。


「成功です! ダグオン! 教授!」

「えぇ…… 雨ながら服の中にも浸透してくれあますね」


 ダグオンは燃え上がるヴァンパイアを見て満足そうにうなずいた。


「ねぇ!? なんで雨を降らせたの?」

「あの雨にはグダール塩湖の水が溶けだしているんですよ……」

「そうか! だから日除けを…… でも雨に塩を混ぜるなんてできるの?」


 首をかしげるララにダグオンは口元を緩ませどこか嬉しそうに話を始めた。


「サザンクロスは魔法再生装置です。グダール塩湖の塩を巻いて風で周囲に巻き上げそこに雨を降らせるんです……」

「そうか! 雨に塩がぶつかって…… あんたすごいわね」

「イタタ……」


 笑顔でララはダグオンの背中を勢いよく叩いた。叩かれたダグオンは前のめりになり、倒れそうになり顔を歪めて背中をさするのだった。

 すぐにダグオンは体を起こし視線を作業台に向けると、ローキンスの元へと向かい彼に声をかける。


「実験は成功ですね」

「じゃあ。サザンクロスを停止……」


 右手を水晶にかざそうとしたローキンスをダグオンが止めた。


「いえ…… 彼はもうこのまま処分をしてください」

「はい。わかりました」

「引き続き…… 今度は……」


 作業台に置かれた踏み台に飛び乗り顔を上にだした。ダグオンは真剣な表情で何かを指さしローキンスと話を始めた。

 彼を見たクローディアが笑って顔を横に向けララとラピに口を開く。


「フッ。あぁなったらしばらくはここから離れないわよ。あんた達ももう話は終わったでしょ。ダグオンには言っとくもう行きなさい」

「んだな。あんがと」

「ありがとう。じゃあね」


 礼を言ってクローディアに右手を上げるララとラピだった。二人の後ろでクレアとグレンは頭をさげていた。グレン達は大学を出ようと階段に向かって歩き出す。

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