第503話 修理屋で再会
ジャンセンに指示されたトーキーはすごすごと扉へ向かう。ふと彼の視線に笑うラピとララが見え顔をしかめた彼は扉ん手をかけて振り向いた。
「気をつけろよ。テックの爺さんは貴族の嫁さんを寝取って追放されたらしいからな。女だけで行くと…」
「うるさい! 余計なこと言ってないでさっさと行け!」
「はーい……」
適当に返事を見て扉を開けて詰め所から出て行くトーキーだった。扉が閉じられるとジャンセンは首を横に振り腕を組んだ。眉間にシワを寄せステファニーに顔を向けた。
「まったく…… ステファニー! 相棒としてあいつをちゃんと教育しろ!」
「うーん…… トーキー君には教えているんだけどねぇ。ちゃんとしないとメーだよって!」
口を尖らせて怒った顔をするステファニーだった。しかし、やや幼く可愛らしい彼女の怒った顔は小動物のように迫力なく少しも怖くはない。
「はあああ……」
「????」
首を横に振りため息をつくジャンセンだった。首をかしげてステファニーは不思議な顔でジャンセンを見つめていた。二人を見てララとラピとクレアは顔を見合わせ苦笑いをするのだった。
数分後…… 詰め所の前にララとラピとクレアが並んで立っている。扉の前にはジャンセンがいてララたちの横にステファニーが居る。
「ありがとうだべ……」
「いや。騎士として当然のことをしただけだ。気をつけてな」
ラピが代表でジャンセンに礼を伝える。ジャンセンは右手をあげ挨拶をした。
「これは…… どういことだ?」
袋から銅貨を出して差し出すラピに顔をしかめて尋ねるジャンセンだった。
「おっお礼だべ……」
「あぁ。悪いな。神聖騎士は礼も寄付も受け取れないんだ」
「んだか…… すまねえ」
手を横に振り謝礼と寄付を断るジャンセンだった。すぐに下がってラピは頭を下げたのだった。ララたちは改めてジャンセンに礼を言いステファニーの案内で移動を始めるのだった。
ステファニーとララ達は貧民街の中心にある池から東に向かって歩いていた。
「礼も寄付もダメだか……」
「神聖騎士なんて頭が固そうだもんねぇ」
歩きながら残念がるラピにララは渋い顔をしていた。二人の後ろを歩いていたクレアが口を開く。
「本部に戻ったらプリシラさんに伝えればいいですよ」
「なして?」
驚いて首をかしげるララとラピにクレアは優しくほほ笑む。
「ハンター協会から神聖騎士団への差し入れとしてお礼を送ってもらえますよ」
「でも…… さっきお礼も寄付も受け取れないって……」
「ジャンセンさんとしては受け取れないですが神聖騎士団としてなら市民からの寄付や差し入れは受けてくれますよ」
「なにそれ?」
意味が分からず腕を組み難しい顔をするララだった。クレアは視線を前に向けた彼女の視線はステファニーの背中に向けられた。
「ですよね? ステファニーさん」
「えっ!? そうですねぇ…… ジャンセンからたまに市民からの差し入れってお菓子をもらいます」
ステファニーの背中に話しかけるクレアだった。話を振られたステファニーは振り向いてうなずいて答える。ララはステファニーの言葉に納得できないという顔をする。
「それだったらラピが渡した時に受け取ってくれらば良いのに…… 面倒くさいわ」
両手を頭の後ろあて渋い顔をするララだった。彼女はちょっとした礼をするのに回りくどいやり方に面倒とつぶやくのだった。
「ねぇラピもそう思わな…… えっ!?」
顔を横に向けラピに同意を得ようとしたララだったが、彼女が必死にメモを取っている姿が見え驚く。
「なっ何しているの?」
ラピは顔を横に向け笑顔で答える。
「メモを取っておくんだべ。ヴァンパイアハンターなら教会や神聖騎士団との付き合いは大事だべ」
「そうか…… そうよね…… 私もメモしておこう」
ララははっとしてペンと取り出しメモを取る。並んでメモを取る二人の姿をクレアは優しくほほ笑んでみていた。
小屋とテントが並ぶ細い路地をステファニーの先導で進むララ達だった。
「あっ! あそこだよー。あれがテックの修理屋さんですよー」
通りの先を指してステファニーが振り向きララ達に声をかけた。視線を彼女の指先に向けるララとラピだった。通りの先に小さな煙突が見える。
「修理屋ってなんだが?」
屋根を見ていたラピがステファニーに尋ねる。ステファニーは立ち止まって振り返り笑顔を向けた。ララ達が立ち止まるとステファニーは話を始めた。
「ここで拾った物を修理をしてくれるんだよ。すごく腕が良くて修理した物を上の町で売ることもだってできるんだ」
「ゴミが売れるようになるだが?」
「うん。すごいよねぇ。元は別の町で大工さんだったんだよぉ」
「んだな」
返事を聞いたステファニーは前を向いて歩き出しララ達も続く。少しするとステファニーは立ち止まりララ達に向かって前を手で指した。
「着いたよー。ここがテックの修理屋さんだよー!」
修理屋は大きな扉がついた小屋と広場のように開けた柵に囲まれた作業場に金床やハンマーが乱雑に置かれていた。家の右手にかまどが置かれていた。
「あれ…… 居ないね…… 奥で休憩しているのかな?」
ステファニーは首を左右に動かし首をかしげた。修理屋にテックはおらず。彼女は顔をあげ奥にある小屋へ視線を向けた。小屋はテックの住居でよく奥で休憩している。
奥の小屋に向かうステファニーにララ達が続く。小屋の前で立ち止まり先頭のステファニーが何かに気づいて身をかがめた。
「やっぱり休憩しているみたい」
振り向いてララ達に笑顔を向けた。こちらを向いたステファニーの横から扉が見え休憩中と札が扉にかけられていた。ステファニーは体を起こすと扉を勢いよく開いた。
「テックさーん。お邪魔しまーす」
ステファニーはテックに声をかけながら開いた扉か小屋へと入った。
「えっ!?」
中に入ったステファニーは目を見開いた驚いて固まった。彼女の視線の先には壁にテックがもたれかかるように座っている。テックは白髪の老人で口を囲み首の真ん中まで伸びる立派な髭をたずさえている。服はシャツに黒のズボンを履き穴の開いた口を履いていた。
「どうしたのよ…… はっ!?」
「んだ!?」
「まぁ……」
動かないステファニーを不思議に思った、ララが彼女の近づき横から前を覗き込んだ。ララが声をあげラピとクレアも続いて同じように声をあげる。
三人の目にテックの膝の上に酒場で給仕をしていた女性が座っているのが見えた。女性のスカートはまくり上がり白い下着が見え、はだけた胸元にはテックの手が伸びていた。
女性はこちらを見つめるララ達の視線が耐え切れずにテックの顔を見て声をかける。テックからは女性が影になりララ達が良く見えないようだ。
「えっ!? テックさん…… あの…… もう…… あは!」
驚き甘い吐息を漏らす女性だった。はだけた胸元の膨らみがもぞもぞと動いているのが見える。テックが彼女の胸を触って手を動かしているようだ。
「やっやめて…… テックさん。人が……」
女性が必死にやめてと声があげテックは手を止め頭を傾けた。
「チッ! なんじゃお前ら!? 今は休憩中だって札を置いてあっただろ」
扉の前に立つララ達を見たテックは舌打ちをして怒鳴った。怯えたように体を一瞬ビクッと痙攣されたララとラピの前でステファニーは平然と前に出て口を開く。
「神聖騎士のステファニーです。ゴミ捨て場に現れたヴァンパイアに付いて話を聞きに来ました」
「はぁ!? クソ! どけ」
「キャッ!」
テックは女性の胸から手を引き彼女を押してどかすのだった。




