第502話 可愛いハンター
ゴミ捨て場の脇にある詰め所にララ、ラピ、クレア、ジャンセンが丸いテーブルに並んで座っていた。
四人に会話は少なく扉の外の音は薄い壁と扉に阻まれ静寂に包まれていた。しかし、すぐにその静寂は扉の開く音と明るい声で
「戻りましたー!」
扉が開いた鎧に身を包んだ銀色の髪に耳の尖ったエルフの女性が現れた。目はぱっちりとして瞳は深紫色をして顎は細く口は小さい、すらっとした体形で背は高いが顔は幼く可愛らしい感じの女性だ。
「ジャンセンさん。私にお客様が居るって聞いたんですけど……」
自分を指して首をかしげる女性だった。彼女がミーロを発見した神聖騎士ステファニーのようだ。
「あぁ。こちらだ」
立ち上がったジャンセンはステファニーを呼ぶ。彼女は
「うん!? トーキー…… 君も来たのか?」
顔が長く細い目をした男性の神聖騎士がステファニーに続いて詰め所に入って来た。彼は右腕に赤い腕章をつけている。気づいたジャンセンが声をかける。
「つめてえな。隊長。俺はステフの相棒だぜ。なぁ?」
「そうだよー!」
振り向いて男に手を振るステファニーだった。彼の名前はトーキーという。彼はステファニーとの相棒で二人はジャンセンをリーダーとする部隊の隊員である。
「まぁそうだな……」
ニヤニヤと笑いながらステファニーに続くトーキーだった。ジャンセンは顔をしかめていた。前を向いたステファニーはララ達に見ると首をかしげた。
「えっと…… 君達は?」
「おらはラピ! ヴァンパイアハンターだべ」
「私はララ。ヴァンパイアハンター…… 見習いよ……」
自分を指してヴァンパイアハンターと元気に名乗るラピと声が小さくなり最後は聞こえないくらいになるララだった。彼女たちの話を聞いてステファニーは目を大きく開いて驚いた顔をする。
「おぉ!? 君達はヴァンパイアハンターさんなの! すごい!」
ステファニーは丸テーブルに並ぶラピとララの間に立ってかがむ。二人を交互に見たステファニーは嬉しそうに笑う。
「可愛いハンターさんだねぇ。あっそうだ! お姉さんね。飴もっているんだよ? いる?」
「飴くれんのが? もらうべ!」
慣れた手つきで腰のベルトにつけていた小さな袋から、飴を取り出しラピの前に差し出した。ラピは喜んで飴を受け取る。ステファニーはゴミ拾いに来る貧民街の子供たちに飴を配っている。
「コロコロ」
「なによ! 飴とか子供扱いして! 馬鹿にしないで」
「えっ!? ごっごめんね」
笑顔で満足げに飴を舐めるラピにララは不満げに腕を組んでいた。彼女の様子を見たステファニーはすぐに彼女に謝った。ララは目を細くして飴を舐めているラピに視線を向けた。うらやましそうにラピを見つめララは小さく息を吐く。
「ふぅ。まっまあ…… あなたがどうしてもっていうならもらってあげるけど……」
「えっ!? 本当? あげる! はーい! ララちゃんあーん」
「ふん…… あーん」
飴をつまんでララの前に差し出すステファニーだった。鼻で息をして腕を組んだまま口を開けるララだった。ステファニーは笑ってつあまんだ飴をララの口へといれた。
「コロコロ…… フフ」
飴を舐めながら嬉しそうに笑うララだった。満足げなララの横で同じく飴を舐めながらラピが彼女を見て笑った。
「文句いってももらうんだべな」
「うっうるさい! わっ!」
両手を上げて叫ぶララ、とっさに勢いよく口を開けたため飴が口から飛び出しそうになり慌てて口を押える。彼女を見てステファニーは慈愛に満ちた表情でほほ笑みクレアに顔を向けた。
「ふふふ。かわいいハンターさんですね」
「えぇ。二人共とっっっってもかわいくていい子なんですよ」
うなずくクレアにララは顔を赤くした。
「うるさいわよ! クレア! 黙ってて!! わっ!」
「こーら! 騒ぐとまた飴が飛び出ちゃいますよ」
「うっ…… わかったわよ…… コロコロ」
シュンとしてうつむきながら飴を舐めるララだった。クレアは彼女を様子を見て優しくほほ笑むのだった。
「えっ!?」
驚くクレアがステファニーに視線を向けた。クレアの前に彼女が飴を差し出していた。クレアと目が合うとステファニーはにっこりとほほ笑んだ。
「あなたも飴どうぞ! えっと……」
「私はクレアです。ありがとうございます」
飴を受け取り名乗るクレアだった。ステファニーは嬉しそうに笑ったのだった。
挨拶を終えたステファニーはララ達と同じ丸テーブルに着きトーキーは彼女の後ろに立つ。ラピが口を開いた話を始めた。
「おらたちはミーロさんを助けた時の話が聞きてえんだ」
「ミーロさんを助けた時の話ですか? えっと…… 確か…… 三日前にトーキー君と私で別れて夜間警備の巡回中でした」
振り向いてトーキーの顔を見たステファニーだった。トーキーは彼女を目が合うと小さくうなずく。
「ゴミの山から悲鳴が聞こえて…… 東側の柵の近くに行ったらヴァンパイアとミーロさんがもみくちゃになっていて彼女の首筋に噛みついんです」
「ヴァンパイアを見たの? 顔は?」
ステファニーの話を聞いていたララがハッと目を見開き尋ねる。視線をララに向けステファニーは小さく首を横に振った。
「ごめんなさい。背中を向けていて…… 振り向いたんですが…… いきなり氷の刃を飛ばし来てかわしているすき逃げられてしまったよく覚えてないんです」
「そうなんだ…… 残念」
逃げられたというステファニーにララは残念とつぶやいた。話を聞いていたラピがステファニーに質問をする。
「他になにか特徴はあったが?」
「えっ!? そうですね…… そうだ!」
ステファニーは顎に指を置いて天井を見つめて何かを思い出したようだ。
「両手に銀色の手袋をしていました。ランタンの光で照らされていたんでよく覚えてます」
「「!!!」」
ヴァンパイアは両手に銀色の手袋をしていたと聞いた、ララとラピは目を大きく開いて顔を見合せた。
「銀色の手袋って…… もしかしてエンドレスアイスで見た……」
「んだな……」
真剣な顔でうなずいたラピだった。彼女はさらに詳しくステファニーに手袋について確認する。
「手袋ってどんなのだった?」
「うーん…… そう! 鍛冶屋さんが使う裾の広い手袋でした……」
「近くに鍛冶屋はある?」
ララの質問に花で笑ったトーキーがあきれたように肩をすぼめた。
「おいおい。ここは貧民街だせ。お嬢ちゃん。そんなものあるわけ…… うっ!?」
トーキーの言葉を遮るようにステファニーが彼の前に手を出した。いきなり手を出されトーキーは驚きたずねる。
「どっどうした? ステフ」
ムッとした顔をしてステファニーはトーキーに口を開く。
「もう! トーキー君! 適当に答えないの! 鍛冶屋はないけどテックさんの修理屋さんはあるでしょ」
「うっ…… それはそうだけど……」
顔をしかめる下を向くトーキーだった。ララとラピは笑いクレアはジッとトーキーの顔を見つめている。
ステファニーはララ達に向き直り笑顔で口を開く。
「酒場の近くにテックの修理屋さんがあります。あそこなら鍛冶屋さんが使う手袋を持っていると思いますよ」
「わかったわ。行くわよ! ラピ」
「んだ」
二人はクレアに顔を向けたクレアは優しくほほ笑む。会話を聞いていたジャンセンはステファニーにしぞを出す。
「ステファニー…… 皆さんをテックのところへお連れしろ」
「わかりました。じゃあ行きましょう」
「ありがとうだべ!」
ラピが礼を言うと右手をあげるジャンセンだった。目を輝かせてトーキーが右手をあげた。
「じゃあ俺も!」
「お前はダメだ。まだ見張りの途中だろ!」
「そんなぁ……」
トーキーに向かって厳しい表情で扉を指すジャンセンだった。しょんぼりとするトーキーにララとラピとステファニーは笑っていた。




