第500話 ゴミ捨て場に巣食う者たち
聖都ギガンゴスの最下層に存在する貧民街。中心に魔力を吸う召喚獣ギガンゴスの消化器官魔法煙の池があり、聖都で出たゴミはこの池に放り込まれ召喚獣の栄養となる。
上層部で集められたゴミは専用のダストシュートへ送られ、池の近くへと落ちて堆積するようになっている。池のほとりには大量のゴミが堆積した山が出来る。山は三つほどで円錐に近い形をして直径が三十メートルくらいで高さは二十メートルくらいある。
積み上げられた三つのゴミの山…… ここが本当の聖都の最下層である。
クレア達はゴミの山の十メートルほど手前に立ち止まる。ゴミの山を腰くらいの高さの柵が囲み三人の前には木製のゲートがあり腰の辺りに小さな両開きの四角い扉がついている。
「うぅ…… すごい臭いだべな」
「そうね」
積み上げられたゴミの山を見つめ鼻を手で覆うラピとララだった。ゴミは生ごみや廃材や家具や排泄物が混じり異様な臭いを醸し出していた。
「これって何年分なのかしらね……」
「えっと…… 明日がサラマンダーですから…… ちょうど一週間分ですね」
「「えぇ!? 一週間!?」」
驚いてクレアをミルララとラピだった。クレアは視線を二人に向け小さくうなずいた。
「はい。聖都や周辺の地域で出たゴミを集めて一週間溜まったら池に放り込むんですよ」
「池に…… 何のために?」
「魔法煙で魔力を吸収させてギガンゴスさんの餌にするんです」
「なるほど」
ララは相槌をうち感心しながらゴミの山を見つめていた。ここのゴミは一週間溜められ池へと捨てられギガンゴスの魔力供給に使われる。
ちなみにゴミだけでギガンゴスのエネルギーは賄っているわけではない。本来ギガンゴスは魔法煙を周囲に吹き出し、生物や物体から影響のないほどの微量な魔力を吸収してエネルギーにしている。
「ジャンセンはどこにいるのかしら?」
「探すべ」
二人はうなずくとゲートの扉を押して中へと入る。クレアは二人の後ろを歩いてついていく。山の周囲や中にはボロボロの服を着て革の袋を持った町の人たちがたかっていた。彼らは袋を引きずるように持ってゴミを拾い上げ自分の革の袋へ入れていた。
「あれは…… 何をしているの? ゴミなんか持って帰るの?」
「はい。ゴミを漁ってまだ使える物を持って帰るんです。それで売ったり自分で使ったりするんですよ。本来なら違法行為ですが生きるために見逃されてます」
「そうなんだ……」
返事をしてララは視線をゴミの山へと向けた。町の人はまだ使えそうななゴミを持って帰り、自分で使用したり売って日銭を稼いだりする。
最初に貧民街に流れ着いた者が始めたのがゴミあさりだった。廃材で小屋やテントをゴミ捨て場の周囲に立て住み着いた。そうして徐々に人数が増えて行き貧民街が構築されていった。
話を聞いた二人は山の前に立ち止まる。彼女らの足元にもゴミが落ちている。
「こんな物が……」
「不思議だべな」
足元に落ちていたゴミを向くララ、ラピはしゃがんで落ちていたヒビ割れた瓶を手に持った。
「おいいいいいいいいいいいい!!! あんさん! なんしよっとか!!!」
ラピがゴミを拾うとすぐにボロボロの兜に錆びた胸当てをつけ腹が出た男が、慌てて駆けて来て彼女を怒鳴りつけてきた。
「それはおいのシマのもんだ!!! 勝手に触るな!!!」
男は曲がった金属の槍を背負っておりラピが持つ、ゴミを左手で指して怒鳴りながら背中に右手を回す。
「どっどういことよ? あいつの物なのこれ?」
「ゴミにも縄張りがみたいですね。勝手に触ったらまずかったようです」
首をかしげるララニ腕を組み、難しい顔で答えるクレアだった。ララは話を聞いてあきれるのだった。
「なっなによ。それ! これゴミでしょ! さっさと戻しなさいよ。ラピ」
「んだ…… すまね」
うなずいたラピはしゃがみ持っていた瓶を元にあった場所に戻した。ララは男に体を向け手でラピが置いたゴミを指した。
「ほらこれで文句ないでしょ?」
立ち止まった男はララを見て顔をしかめた。
「そうはいかん! ここで勝手なことされても困るたい! おい! おまんら! 出て来んさい!!」
振り向いた男が左手を動かし合図を送った。後ろから四人の男が出て来た。男たちはボロボロの服に壊れた防具を身に着け剣や槍を持っている。
「なんだい? こいつらは?」
「おいたちのシマを荒らしてたたい。身ぐるみ剥いで全部売っぱらちまうたい!」
腹の出た男に一人の男が声をかけて来た。腹の出た男はララ達を指して答える。男はララ達を見てニヤリを笑ってまた腹の出た男に口を開く。
「なぁ? 売る前に味見させてもらっていいか?」
「好きにしろ殺すなよ」
舌を出した男はララとラピを見比べるように視線を向け股間に手を滑らせた。
「やった! しまってそうなガキどもだぜ」
「なんだ!? しょんべんくせえガキが良かたいか? じゃあおいは後ろの女もらうたい」
「年増好きかよ……」
クレアを見て笑う腹の出た男だった。五人は腹の出た男を先頭に左右に広がるようにしてララ達に迫って来る。年増と言われたクレアは無表情だが冷たく殺意のこもった目で男を見つめている。
「なっなによ! あんたたち! どういつもりよ」
「しゃーねーべ。やるしかない……」
ラピが腰に付けていた金棒を取り出した。ララは迫って来る男たち見て顔をしかめた。
「まったく…… なんてとこなのよここは…… まあいいわ」
右腕を横に開きラピに下がるように合図を送るララだった。
「なっなんだべ!? 」
「ここは私に任せて……」
「でっでも……」
「大丈夫よ。いいから」
ララは一人で前に出て行く。一人で向かって来る彼女を見て男たちは笑っている。
「なんだ!? お前一人たいか?」
「自分から俺らの相手してくれるのか? はははは!」
「いやっほおおおお!」
一人の男が下品に腰を前後に動かし他の男たちはそれを見て笑っている。ララは動じることなく笑って両手を開いた。周囲のゴミたちがかすかに震え出している。
「あらあ!? 私の相手をしてくれるの? でも…… あなたたちの相手なんかしてられないわ…… よ!!」
素早く両腕を開いて交差させるララだった。彼女の腕の動きに反応し周囲のゴミの一部ア浮かび上がり一斉に男たちへと向かっていく。
棚や瓶や椅子や瓦に丸太が男たちに襲い掛かる。
「ギャッ!!!」
「ウギャ!!!」
高速で飛んできた瓶と瓦が後頭部に直撃し二人の男は膝をついて倒れた。
「ぐわあああああああああ!!!」
男の一人の足元に横になった椅子が回転しながら飛んできた。横から男は回転して来た両足を払われ横に倒れた。椅子はそのまま一旦上にいくと最後は男の体を上に落ちた。脚で男の体を挟んで男を拘束する。
「ごはあああ!!!」
斜めになった棚が高速で飛んで来て男の一人に覆いかぶさりそのまま押しつぶした。腹が出た男以外はララが飛ばしたゴミであっという間に倒された。
腹の出た男はララを睨みつけ持っている槍を力強く握りしめた。
「なんばしよっと! ぶはあああああああああああああ!!!!」
槍を振りかぶった腹の出た男だったが。前から高速で飛んで来た丸太が男の腹へと激突した。出ていた腹が押しつぶされ体を圧迫し、目が飛びしそうになっていた。
苦痛に顔を歪ませ口から胃液を吐いて男は膝をついて倒れた。襲い掛かってきた男たちは全て倒れララは満足に笑った。
「ふん。たわいもないわね。さぁ…… 終わらせてあげる」
ララが右腕を上げ指先を空に向けた。彼女のベルトの銀の短剣が小刻みに震え出す。




