第494話 強き者の弱き部分
勢いよくグレンが腕を伸ばすと扉が開かれた。グレンは扉を押さえて振り向いて部屋の中を手で指しララ達に声をかける。
「さぁ。入れ。ここが今日の宿だ」
グレンに促されララとラピが扉から部屋の中に入った。
扉の向こうは広くフカフカの絨毯が敷かれて、大きなソファに高そうなテーブルなど高級宿のような豪勢な家具が並んでいた。
「広ーい! すごい……」
「んだな…… おらの村の村長のいえよりも広いべ……」
入り口の側でララとラピ豪勢な部屋を見て、目を大きく見開き思わず声をあげていた。振り向いて後ろにたつクレアにララがたずねる。
「ハンター協会の部屋ってこんなすごいの?」
「いいえ。この部屋だけ特別に広いんです」
首を横に振って少しだけ気まずそうに答えるクレアだった。
「ちょっと! なんでグレン達だけずるいじゃない」
広く豪勢な部屋を独り占めにする、グレンとクレアにずるいと声をあげるララだった。彼女の横にいるラピも同意したのか小さくうなずいている。ずるいと言われたグレンは二人の様子を見ながら笑って答える。
「別に俺たちが要求したわけじゃないぞ。これはオフィーリアの指示だ。俺達に長くいて欲しいんだったさ」
グレンが答える。二人の部屋が広いのはオフィーリアの指示であり、居心地を良くして聖都での滞在を伸ばそうという魂胆である。
「そうだ! ララ達もあいつに頼めばやってくれるぞ。明日依頼にしに行こうぜ」
ニヤニヤと笑いグレンはオフィーリアに頼みに行こうとララに提案する。ララは話を聞いて顔を青ざめさせグレンに首を横に振って答える。
「えっ遠慮しとく…… うん。グレン達はすごいからいい部屋で当然よね! さすが」
ごまかすように笑いグレン達を褒めて話を逸らすララだった。
「逃げたべな」
「うるさいわよ!!!」
目を細め冷めた視線をララに向けるラピだった。二人を見ていたクレアが軽く手をパンと叩いて口を開く。
「ほーら。明日からヴァンパイア退治ですからね。早く寝ますよ」
クレアに促されてララとラピは寝室へと向かう。寝室は扉から右の奥にある。扉を開けると広い寝室には大きなベッドが二つ置かれ、間に二つの小さなベッドが置かれていた。入り口から部屋の奥に向かって横に並んでおり奥には小さな窓が見える。部屋の普段は二つの大きなベッドだけの寝室だ。今日はキティルの指示でララとラピが相部屋になり、プリシラが強引に間に子供用のベッドを置くように手配をしたのだ。
「ふぅ」
寝室に入り並んだベッドを見て、ララが胸に手を置いて安堵したように息を吐いた。グレンはララの行動に首をかしげて尋ねる。
「どうした?」
「別に…… グレンはどっちに寝るの?」
「俺はあれだな」
手前にある大きなベッドを指すグレンだった。ララはすぐにグレンの隣のベッドを指さした。
「じゃあ私はこっちね…… って! クレア! なんでそこに居るのよ」
「えぇ!? だって……」
ララがベッドを指すと、同時にクレアはグレンの隣の小さなベッドに腰かけていた。ララは不満げに腕を組みクレアをジッと舐めるように見つめ、さらに彼女は視線をベッドへと向けた。ララはベッドとクレアを比べるように視線を向けていた。
「子供用のベッドが重くて可哀想でしょ! お尻も大きいんだし!」
「なっ! 怒りますよ」
「べーだ! ほらほらどいてどいて」
ベッドまでクレアの手をつかんでどかそうとするララだった。クレアは抵抗していた。二人の様子を見てグレンが口を開く。
「静かに寝たいからラピが隣でいいか?」
「「キッ!!!!」」
ベッドの前で同時に振り向いてグレンを睨むララとクレアだった。グレンは大きなため息をついた。
「はああ……」
「グレンさんは大変だべな……」
ラピがグレンの背中を撫でてグレンはラピの頭を優しく撫でるのだった。結局、ララがグレンの隣になった。ララの隣はラピでクレアは窓際のベッドになった。
移動で疲れていたのかグレン達はベッドに入ってすぐに眠りについた。
深夜…… 物音がしてララの顔に光が指して彼女は目を覚ます。ぼやけたララの視界に光が狭まり閉まる扉が見えた。ララは体を起こすと同時に扉の向こうから何かが閉じる音がした。視界がはっきりし暗闇になれてくると隣にいたはずのグレンの姿がなかいことが分かった。
「グレン…… どこに……」
ララがつぶやいた。扉が開いてグレンが寝室から出て行ったのだ。彼女は着替えるとグレンを追いかけ扉を開けてでいく。
廊下に出て下へと続く梯子を下りるララだった。梯子を下りたララが視線を横に向けると廊下の窓から町を歩くグレンの後姿が見えた。
「何をしているのかしら…… もしかして浮気!? 暴いてやらないと!」
想像を膨らませララは眉間にシワを寄せ、窓から見えるグレンの背中を睨んでから急いで梯子を下りてヴァンパイアハンター協会本部を出た。
外に出たララがグレンを追いかけ探す。左右に視線を動かしながらララはグレンを探し地下街を進む。
「あれは……」
地上から下りて来た階段の前でグレンが立っていた。ララは近くの建物と建物の間に路地に身を隠した。
「何しているのかしら…… よーし」
首をかしげるララは少し考えてから、意を決してグレンに声をかけようと路地から出ようした。
「えっ!?」
後ろから誰かが近づいて来てララの肩を叩いた。ララは勢いよく振り向くそこには……
「クックレ…… モガ」
ララが振り向くとクレアが立っていた。クレアはララが自分の名前を呼ぼうとすると右手を伸ばして、彼女の口を押さえ左手の人さし指を自分の口に当てた。
「しー! 静かに…… グレン君に気づかれちゃいますよ」
「コクコク」
小声で話すクレアにララは小さく小刻みにうなずいた。クレアはララの口から手を離した。二人は前後に並んで路地から顔をだしグレンの様子を眺める。ララの頭の上からクレアが覗いている。
「何をしているの? グレンは……」
「下に行くのが怖くて…… 躊躇しているんですよ…… ラピちゃんの補助をすぐに受けなかったのもそれが理由ですね」
顔を横に向け驚いた顔をしてララはクレアに尋ねる。
「どうして? グレンだったら怖いことなんてないでしょう?」
ララの質問にクレアは寂しそうな表情をうかべ小さくうなずく。
「はい。グレン君はとてもとても強いです……」
静かに答えたクレアは心配そうにグレンの背中を見つめるのだった。不思議そうな顔をするララだった。クレアは視線をララに向けて優しく彼女の頭を撫でた。
「そんなグレン君でも怖いことはあるんですよ」
「ふーん…… そうなんだ。ちょっとかわいいと子もあるじゃない」
クレアの言葉にララは少し嬉しそうに笑っていた。クレアは喜ぶララに優しくほほ笑エム。
「ふふふ。そうですね」
「そっか。クレアはグレンが心配で……」
「えぇ。でも見つかると怒られちゃいますからね。そろそろ戻りましょう」
「わかったわ」
大きくうなずいたララと手を繋ぐクレアだった二人は部屋へと戻った。部屋に入るとラピが起きており二人を見ていた。
「どしただ? みないなぐなって……」
「なんでもないよ。トイレに行ってたの」
「なんだ怖くて便所さクレアさんに付いて来てもらったのか!」
どこに言っていたのかというラピの質問に答えるララだった。ラピはニヤリと笑ってララをからかった。ララはムッとした顔をした。
「違う…… ううん。そうよ。だからあんたも怖かったらついて行ってあげるから! 遠慮なく言いなさい!」
「はっ!? どっどうしただ?」
胸を張って得意げな表情をするララだった。いつもと違う彼女の反応に困惑するラピだった。
「ふふふ……」
二人のやり取りを見てクレアは笑っていた。ララ達がベッドに戻ってからしばらくしてグレンは戻って来た。そして夜が明ける。




