第474話 付けれないけど外せます
レイニーに静かに黙って近づくダグオンにララが気づいて声をかける。
「ダグオン! どうしたの?」
「……」
ララがダグオンを呼んだが返事がない。何かに集中しているダグオンの様子を見て、彼が何をしようとしているのかララは気づいた。慌てた様子で
「グレン! すぐにレイニーの服を脱がして!」
顔を横に向けレイニーの死体を指して、グレンにドレスを脱がすように指示するララだった。
「はぁ!? なんでだよ。俺はスカベンジャーじゃない」
「いいから! 早くしないとダグオンが手をだすわよ」
「えっ!!? おい!」
必死にレイニーを指して叫ぶララだった。ダグオンがレイニーの前に立って彼女に手を伸ばす姿があった。グレンは慌てて駆け出してダグオンを呼びながら彼の手首をつかんだ。
「なんですか!」
いきなり手首を掴まれダグオンは少しだけ不服そうにグレンに顔を向けた。グレンは視線をレイニーに向けてダグオンを諭すように話す。
「あぶねえから素手で触るなよ」
「はっ!? えっ!? あっ!? そうですね…… すみまん…… つい」
自分の手を見たダグオンは恥ずかしそうにしてグレンに謝罪した。恥ずかしそうに頭をかく仕草をするダグオンにあきれた笑ったグレンはレイニーを指し尋ねる。
「あれを調査したいんだろ?」
「はっはい! 彼女から外してもらえますか?」
グレンはうなずくとダグオンに手を向けた振り向いた。
「わかった。ちょっと待て! おーい。クレア義姉ちゃーん」
「はーい」
ダグオンを止めたグレンは手を振ってクレアを呼ぶ。呼ばれたクレアは返事をしてすぐにクロースと一緒にやって来た。
「なんですか?」
「ダグオンがレイニーのドレスを調べたいんだってさ。良いか? ほらこれ一応クレア義姉ちゃんのものだろ?」
クレアにダグオンがドレスを調べて良いか尋ねるグレンだった。彼女は顎に指を当て少し考えてからグレンに答える。冒険者が仕留めた獲物には優先権がある。レイニーはクレアが仕留めた獲物であるため、現在冒険者であるグレンはクレアに許可を取ったのだ。
「うーん。そうですね。あのドレスは私も気になります。危険なものかどうかをまず確認しましょう」
「わかった。ダグオン! 調べて良いってよ」
振り向いてダグオンに答えるグレンだった。うなずいたダグオンは手帳を開いてページをめくっていく。
「えっと…… まずドレスの外しかたは…… グレンさん!?」
手帳を見ているダグオンの横を通ってグレンは倒れたレイニーをひっくり返して背中を向けさせる。ドレスをジッと見ながら剣を抜いてつついて安全を確認する。
「とりあえず触っても平気そうだな……」
つぶやいやグレンはしゃがんでドレスを止めている紐に手を伸ばす。
「丁寧にしてくださいね……」
「任せて置けよ」
紐を外すグレンに声をかけるクレアだった。彼は手際よくレイニーからドレスを脱がしていく。グレンの動きを見てクロースが首をかしげニヤリと笑った。
「あれ!? グレンさんはドレスの着付けなんてできるんですの?」
「いや。着せないけど前に脱がしたことが……」
「グッグレン君!」
ドレスを脱がすのに集中していたグレンが余計なことを口走ろうとした。慌ててクレアが止めた。グレンの顔が真っ赤になっていく。もちろんグレンが脱がしたドレスはクレアのである。少し前に招待されたパーティで、着飾ったクレアとグレンは気分が盛り上がり熱い夜を過ごしていた。その際にグレンはドレスの脱がし肩を覚えた。
「不潔……」
「うっうるせえ」
腕を組んでララが目を細め嫌悪感丸出しでグレンにつぶやく。ララのつぶやきが聞こえグレンは耳まで真っ赤にした。グレンは視線をクロースに向けた。どうやら自分のうかつさを棚にあげグレンはクロースを逆恨みしている。
「なんてこと言わせようとさせるんだ」
「別に私は出来るか聞いただけですわよ」
首を横に振って笑顔で平然と答えるクロースだった。彼女は言い終わると舌を出したのだった。
「もう…… グレン君……」
「ごっごめん……」
恥ずかしそうに顔を赤くしてグレンの袖を引っ張るクレアだった。二人は互いに頬を赤くして恥ずかしそうにしている。クロースは満足そうに二人を見ていた。ケイトとララはあきれて笑っている。しかし、一人だけ不満げに口を尖らせる。
「あの! 早く外してください」
「あぁ! もう! わかったよ!」
グレンはレイニーからドレスを脱がした。彼はドレスを広げてダグオンの前に置いた。グレン達はドレスの周りに立っている。ドレスは血や汚れが付いており一部はクレアの攻撃が破れていた。
「綺麗なバラ……」
「そうですね。棘がたくさんありましたけどね……」
体の中央に装飾されたバラを見てつぶやくララだった。クレアはうなずいて彼女に顔を向け笑っていた。
「なぜ銀色に…… なるほど……」
しゃがんでダグオンはドレスをめくって裏地を確かめながら何かを考えていた。グレンは何かが起きないか念のため彼の後ろに立っている。ダグオンの元へララが近づいて来て彼に声をかける。
「何かわかったの?」
「えぇ。いろいろと……」
ダグオンはララに顔を向けうなずいて答え手帳に何かを書き込んでいる。ララはダグオンに顔を向け少しだけ申し訳なさそうに口を開いた。
「あの…… グレン達が言うイプラージって結局なんなの?」
「はい。イプラージと銀細工は同じです。人体を強化する技術ですね」
手帳をみながらダグオンがララの質問に答える。
「魔力反応させた銀を注入し体内の魔力と融合させるんです。銀細工は魔力反応した銀を体の一部で定着させるんです」
ダグオンの説明を聞いていたグレンがうなずいた。
「なるほど…… そういうものだったんだな……」
隣でつぶやくグレンにララが勢いよく振り返った。
「えっ!? グレンも知らなかったの? なんか詳しそうな顔してたの」
「まぁ。俺はノウレッジに居る銀色野郎を絶対殺すマンなだけだからな……」
「はぁ…… これだから脳みそまで筋肉の人は嫌いよ」
得意げに胸を張って笑うグレンにララは肩をすぼめて首を横に振っていた。二人の会話に興味がないダグオンはまたしゃがんでドレスを調べていく。
「これは……」
ダグオンは手を伸ばしドレスのバラの部分に手を置いた。そのままバラを優しく触っていた。
「柔らかい…… なるほど……」
つぶやきながらダグオンは手を動かしドレスの胸元に持って行った。そこにあるバラを執拗に手で揉んでいる。ララはダグオンの手を見て眉間にシワを寄せた。左手を前にだした白い光の腕が現れダグオンがバラを揉む手を軽く叩いた。
「なっなんですか!」
「なんかいやらしいのそれ…… グレンみたい! 嫌!」
「はははっ……」
唖然とするダグオンに叫ぶララだった。グレンは苦笑いをしケイトとクロースはニヤニヤしていた。クレアは首を横に振る。我に返ったダグオンは立ち上がり口を開く。
「もうなんですか…… でも、もういいですよ。わかりましたから」
笑顔でうなずいたダグオンにグレンが口を開いて尋ねる。
「わかったのか?」
「はい。この服は特殊な繊維で出来ているようですね。おそらくは貴重な魔力反応しやすい銀を編み込んだ糸でつくられています」
ダグオンの説明にグレンは首をかしげた。横で聞いていたララはうなずいてドレスに視線を向けた。
「つまりどういうことだ?」
「簡単にいえばこのドレスを着て魔力を注入すれば、体の負担が少なく銀細工やイプラージの効果が出るってことですね」
「なるほどねぇ」
腕を組んでグレンは難しい顔でレイニーが着ていたドレスに視線を向けるのだった。




