第467話 置いていかれる人
エンドレスアイスへと向かってグレン達は歩いている。町を出て西へ下る山道を歩き出してすぐにふとダグオンが立ち止まった。彼は手に折りたたまれた二枚の地図を持っている。
「昨日見た塔の地図と同じ…… いやあすごい! ほら見てください」
「うん!?」
ダグオンが風景を見ながら二枚の地図を開き、両手に持ってグレンに見せて来る。グレンの横からララが顔をだして地図を見る。ダグオンが見せて来たのは八十三階と天井監視所の周囲の地図だった。地図を見比べるグレンだった。二つの地図はサイズが違うが地形などは酷似していた。
「そうだな……」
「でも、どうしてこんなに似ているのにみんな気づかないのかしら?」
ララは右手の人さし指を立て顎にあて視線を空に向け疑問を口にする。天井監視所が気候以外に地形も再現していると気づている人間は少ないのが不思議だった。
ダグオンは地図を折りたたみながらララ
「地形は長い年月で変化しますからね。まったく同じというわけでないですから」
右手で周囲の山々を指すダグオンだった。ノウレッジに古代文明があったとされる数千年前から地形は少し変わっておりまったく同じではないのだ。ダグオンは振り向いて後方に立つ天へと伸びている天井監視所へ向ける。
「それに…… ここに来られる方々は天井監視所の宝にしか興味ないでしょう。周囲に農作物が出来るの内も資源になるような好物もありませんからね」
「なるほどね。つまりお金にならない地形や気候を気にする変な人はダグオンだけってことか」
「なっ!? ララさん! ひどいですよぉ」
セントリバリティ山脈には農業に適した土地は少なく、鉱石はあるがコールドニアの方が有望な鉱山であるため開発は進んでない。町が出来たのは開拓民のためでなく、天井監視所目当ての冒険者と冒険者目当ての商人のためだ。そのため周囲の地形と塔の地形が一緒なのに興味をみな持つものは少ない。
二人の会話を聞いていたグレンは前を歩くクレアの元へいき顔をしかめた。
「なんか…… 難しい話しているよ」
「えぇ。グレン君とどっちが年上かわからないですね」
「うっうるせえな」
「ふふふ」
グレンの横でクレアがほほ笑む。二人が並ぶ姿を見て今度はララが顔をしかめた。
「…… 不潔」
「どうしました?」
「なんでもないわよ!」
「はっはあ……」
ぼそっとつぶやくララだった。ララの声がよく聞こえずに聞き返すダグオンだっただが、彼女は不満げに口を尖らせ怒ったように話す。ダグオンはなぜララが怒っているのかわからず首をかしげるのだった。
立ち止まったグレン達に背後から声が聞こえる。
「まっ待ってーーーーーーー!!!」
グレン達が一斉に振り向くと数十メートル後ろを駆けてくるケイトの姿が見えた。町の出入口で彼女を待っていたグレン達だったが現れないため置いていった。
長いスカートの裾を両手であげてケイトは坂道を駆け下りっていた。夏になったといえ山頂に近いこの辺りは雪が残っている、道の上にもわずかに残った凍って滑りやすくなっている。
「あっ!?」
走っていたケイトは勢いよく足を滑らせ前のめりに倒れる。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ケイトは前転するように地面に突っ込みそのまま坂道を転がってしまった。坂道を転がりながらグレン達を追い越していった。
「おっおい! まずいぞ」
下り坂はグレン達の先で大きくカーブしていた。カーブの先は崖になっておりケイトは一直線に崖に向かって転がっていく。クロースが手を前に出してケイトを指さした。
「ララ! ケイトさんを止めてくださいまし!」
「はーい! 任せて! はああああああああああああああああああああ!!!」
クロースの指示に返事をしたララは両手を前にだした。白く光る腕がケイトへと向かって一直線に高速で飛んで行く。
「よっと!」
「キャッ!」
飛んで行った光る腕は崖の直前にケイトへと追いつき彼女の襟元をつかんだ。
「やったな! ララ!」
「えっ!? うっうん…… まぁ当然よ」
止まったケイトを見たグレンが嬉しそうにララに声をかける。ララは頬を赤くして小さな声で返事をしたのだった。すぐにグレン達はケイトの元へと駆け寄る。崖から足を外に放り出した姿勢で彼女は崖の向こうを見つめいた。
「大丈夫か?」
「!!」
駆け寄って来たグレンに声をかけられ、我に返った振り向いたケイトが返事をする。
「はっはい! 死ぬかと思いまいました…… いてて」
「大丈夫じゃないですわね。クレア! 治療を」
「はーい」
右手を上げようとしたケイトが肩を押さえた。クロースが彼女を見てすぐにクレアに治療をするように指示をしたのだった。
ケイトはララによって道の脇に引き上げられ、座った彼女の横でクレアが回復魔法をかける。
「ふぅ…… 生き返る!」
クレアに魔法をかけられ満足げにするケイトだった。クレアの手から発する緑色の光が彼女を照らしていた。ケイトの後ろでグレンが腕を組んでいる。
「まったく…… 雪山に住んでいるのに走るのあぶねえのがわからないのか……」
「しょうがないでしょ! 私は雪山に住んでるだけの天井監視所に上る専門の冒険者だもん」
振り向いて不服そうに口を尖らせるケイトだった。
「はーい。終わりましたよ」
「ありがとうございます!」
治療が終わりケイトが立ち上がる。
「あっ!? ケイトさん! スカート」
ララがケイトの足を指して叫ぶ。ケイトは視線をララが指した先に向ける。
「えっ!? あーあ…… せっかくお家で変えて来たのに……」
ケイトのスカートの裾が裂けて膝から太ももが見えていた。彼女は昨日グレンが作った服を家で服を予備に交換していた。スカートの裾を持ってグレンにもう一度振り返るケイトだった。
「グレンさん! これ直せません?」
甘えるような声でグレンに直せないか尋ねるケイトだった。
「しゃーねえな…… よっと!」
面倒そうに返事をしたグレンは左手をケイトへと向ける。雪の下にある地面から草が伸びてケイトの足に絡みつき上っていく。
「あは! くすぐったい! もう…… またですか? ふふふ」
「大人しくしろ! しかもなんで嬉しそうなんだ?」
「えっ!? いや…… 別に……」
ケイトは顔を赤くして視線をそらすのだった。すぐに草が元に戻った草が無くなるとケイトのスカートは綺麗に元に戻っていた。
「おぉ! すごい! あっ! そうだ! グレンさんがくれた服って売れるんですか? まだ家にあるんですけど」
「昨日言っただろ? 三日で元に戻るって……」
「あっ!? そうだった…… まっまあいいか」
グレンの前で気まずそうに頭をかく仕草をすぐケイトだった。
「あれは…… 売りましたね。おそらく遅刻の原因かと……」
「えぇ。まぁどうせ後で服屋さんから怒鳴り込まれるだけですね」
クレアとクロースが少し離れた場所で、ケイトを冷めた目で見つめていた。ダグオンはつまらなそうにして崖の近くへ歩いていく。
「おお! 見てください! あれが城じゃないですか!」
ケイトが落ちそうになった崖のヘリにたっていた、腕を前にだし何かを指してダグオンが声をあげた。グレン達が彼の元へ向かう。ダグオンの頭越しにグレンは崖の向こうを覗き込んだ。
「あぁそうだな…… 八十三階で見たやつと同じだな。規模は全然大きいけど……」
崖から林が見えて奥に巨大な湖があり八十三階と同じで城と橋が見えたのだった。




