第451話 古城の待ち伏せ
グレン達は岸から湖にかけられた橋へと上がり急ぐ。茶色の石を積まれた巨大な橋は幅が十メートル以上あり、城までの距離は五百メートル近くあった。
橋を歩く隊列はクレアとクロースが先頭に並び、ダグオンとララが続いて最後尾はグレンとケイトだ。
「どうした?」
「いえ…… ちょっと……」
前を歩いていたダグオンが橋のヘリの石作りの柵をジッと見つめている。グレンがダグオンに声をかける。橋のヘリに立つ石造りの柵をジッと見つめる、ダグオンの後ろにララが興味深くに見つめている。橋の左右の柵はは高くグレンでさえ頭が出るくらいだった。
グレンは手で合図をしてケイトを先に行かせると、ララとダグオンを背後から見守っていた。飽きてきたララがダグオンに背後から声をかける。
「なにかあるの?」
「はい。この穴を見てください」
「あな? それって飾りじゃないの?」
石が積まれた柵を指してダグオンが答える。彼が指した柵には長方形の穴が開いている。ララがダグオンの前に出て興味深く穴を覗き込む。穴の先には穏やか湖面が見える。
「弓を通す穴ですね…… あっ! そうだ! 確か…… 橋の下部も!」
「えっ!? あんた! ちょっと」
「おっおい!」
柵に開いた穴は弓を使うためのいわゆる矢狭間だ。
手を叩いたダグオンは柵の石のわずかな隙間に足をかけ策をよじ登ろうとした。驚くララにグレンが慌てて駆けよっと彼の肩に手をかけて止める。
「何しているんだ! 危ないぞ」
「えっ!? いやぁ。この橋の下を柵の上からのぞこうかと……」
「はぁ!? ったく……」
頭をかきながら恥ずかしそうにグレンに答えるダグオンだった。彼は柵の上から橋の下を覗きたかったようだ。呆れたグレンはダグオンに両手を伸ばす、彼はダグオンの脇に両手をつっこみ持ち上げる。
「ほらよ!」
「うわ!」
ダグオンを持ち上げるとグレンは彼を肩の上に乗せた。柵に接近したグレンは体を斜めに傾け、視線を上に向けた。
「これで見えるだろ?」
「はい! ありがとうございます」
「あまり身を乗り出すなよ」
グレンの肩の上でダグオンは必死に体を伸ばし、柵の上から橋の下を覗き込む笑顔で返事をした。グレン達が立つ橋の下の壁に同じように穴が開いていた。
「おぉ! やはり二重構造ですね…… ありがとうございます。下ろしてください!」
「おう」
うなずいたグレンは体を起こしてから柵から離れしゃがんでダグオンを下した。立ち上がろうとしたグレンの袖をララがつかんで引っ張った。
グレンが視線をララに向けると彼女は頬を赤くして恥ずかしそうに口を開く。
「わっ私も! 見たい!」
「へっ!? なんだよ…… 急がねえと……」
「いいじゃん! みたいー! みたいーーー!」
「はあ…… わかったよ」
袖を持ってララは左右に振って駄々をこねる。グレンは諦めたように息を吐き首を縦に振った。両手をあげ喜ぶララだった。グレンは立ちあがりララを抱き上げると肩車した。
「どうだ?」
「すごーい! 高ーい! ねえ! 端に行って!」
「はいはい」
グレンはダグオンを肩車した時と同じように柵に接近する。ララはグレンの肩車され湖を見ていた。
「はぁ…… また…… ララちゃん……」
肩車されるララを見て眉間にシワを寄せるクレアだった。
「ふふふ。子供に嫉妬するのおやめなさいな。そんな怖い顔したらシワになりますわよ」
「うっ…… だって…… 私がねだっても滅多にしてくれないんですよ……」
「まぁ…… ふふふ。あなたが人前でねだるからですよ。どうせ二人きりの時はしてくれますでしょ?」
「それは…… その」
恥ずかしそうにするクレアにクロースは笑っていた。
「ふぅ……」
ケイトは両手を頭の後ろに持って行きつまらなそうにしながら、視線を城に向け何かを気にしているようだった。
「あっ! なんか大きな影が……」
「へっ!?」
「消えた……」
湖面を指して叫ぶララだった。湖面に大きな影が見えてすぐに消えてしまった。残念そうにするララだった。グレンの視線が横に動いて鋭くなった。
「城から迎えが来たみたいだぞ。お姫様!」
「えっ!? もう終わりか……」
グレンはしゃがんでララを下した。すぐに起き上がり右手を剣にかけた。
「クレア義姉ちゃん! 城から……」
「わかってます。みんな! 来ますよ」
うなずいたクロースが背中のハルバードを抜いて構える。クレアは右手を背中の大剣にかける。
「ララ! 俺と一緒にダグオンを守れ」
「うん!」
ララは返事をしてダグオンの横に立つ。グレンは剣を引き抜き二人の前へと移動した。橋の先に見える城の門が開かれ三人の人間が走って来る。さらに城の窓が開かれ十数体の魔族が飛び出して来た。魔族たちは翼を動かして飛んでくる。
「あれは……」
三人の冒険者がクレアとクロースの前へと駆けて来た。
「グアラさん…… それにマーラさんにダイアンさん…… みんなヴァンパイアになったみたいですね」
「えぇ……」
冒険者三人はグアラとマーラとダイアンだった。三人は半開きの口から牙をのぞかせ目を赤く光らせていた。続いて魔族がグレン達の上へと飛んで来た。
赤や紫や緑の色の体色をした魔族が翼を動かしグレン達の上に浮いている。彼らは鎧に身を包み槍や剣などの武器を持っている。
「へへへ…… 女だ」
「あぁ。新血療隊候補だな」
「おい! ガキもいるぞ! あれは食って良いんだよな?」
「小さい男の方はダメだぞ!」
魔族たちはグレン達を見てにやけながら話をしていた。
「大きい男は殺せ! ゴミだ! 他は利用価値がありそうだ」
手斧を持ち赤い体色をした大柄な魔族が声をあげた。クレアはムッとした顔で魔族を見渡した。
「あーあ…… 機嫌損ねたな」
「えっ!?」
クレアを見ていたグレンが失望の声をあげた。直後……
「「ギイイイイイイイイイイイイイイイヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」
赤い体色の大柄な魔族の体をクレアの大剣が貫いた。彼女は同時に左手を後ろに向けて伸ばしていた。クレアの左手から伸びた光の剣が後ろにいた魔族の額に突き刺さっていた。
クレアは飛び上がり瞬時に二体の魔族を片付けた。
「あっがっがががが……」
目の前にいきなり現れたクレアを魔族は見開いて見つめていた。
「グレン君はゴミじゃありません…… そんなこというあなたがゴミです…… よ!!」
クレアは回転しながら大剣を斜め下に振り抜いた。大柄な魔族の体が大剣から抜け下に飛んで行く。橋の上に居たマーラの上に落ちた魔族は押しつぶした。マーラと魔族は交差するように倒れている。
「がうあああああああああ!!!」
「ナイスアシストですわ…… ねっ!!!」
クロースが押しつぶされた魔族の頭の前に立つとハルバードを振り下した。魔族の頭とマーラの脇腹にクロースのハルバードが押しつぶされてように斬られた。床までハルバードが届くとクロースは勢いよく手前に引いた。マーラの腹をハルバードが切り裂き体から血が吹き出す。
「グレンさんからもらったワックスの効果は絶大ですわね……」
「あがあがた……」
頭が割れて魔族の下で血を流しながら苦しむマーラだった。クロースは彼女を見て満足そうにうなずくのだった。
「なっ!?」
「おっおい! みんなやっちま…… ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
指示を出そうとした魔族の前にクレアが現れ横から大剣を振り抜いた。魔族はあっという間に真っ二つに切り裂かれた。二つになった魔族はララの近くに落下して血で床を染めていく。
「クソがああああああああああ!!!」
魔族たちが一斉にグレン達に襲い掛かるのだった。




