第444話 雪を燃やせ
駆け出したスノーゴブリン達は躊躇なく崖から飛び下りた。畑の前にスノーゴブリンが次々に着地していく。
「がうあ! がうああああああああああああ!!!!」
上から押しつぶされたり武器が当たったりしていくつかのスノーゴブリンが倒れる。だが、彼らは傷など気にせずに前を向き赤く目を光らせ牙をむき出しにして垂らしながら、畑をキティル達に向けて駆けて来る。
畑をかけ向かって来るスノーゴブリンにキティルは静かに杖を向けた。
「食らいなさい! ファイアボールよ!!! はああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
キティルの杖の先端が赤く光り巨大な火球が飛び出し、うねりをあげながら火球は放物線を描きながら高速でスノーゴブリンへと向かっていった。駆けて来るスノーゴブリンの中へ飛んで行った火球は地面に着地する寸前に爆発した。
「「「「「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」」」」」
爆風はスノーゴブリンを吹き飛ばし炎へと包み込む。火球は砕かれ炎を纏う石となって周囲に飛んで行いきいくつものスノーゴブリンを貫き燃やす。地上へと下りた五百匹のスノーゴブリンの半分以上が燃え上がり周囲を赤い炎で照らしもくもくと黒煙が天井へと上っていく。
「私だってもうこれくらいできるんだから!」
燃え上がるスノーゴブリンを見つめながら、得意げな顔をするキティルだった。
火はすぐに消え黒煙が徐々におさまる。畑にはスノーゴブリンが百匹以上が丸焦げで倒れていた。勢いよく駆けていた残りスノーゴブリンたちは遠巻きに倒れた仲間を見つめていた。
「あら!?」
黒こげになったスノーゴブリンたちの指先や足がわずかに動き体が赤く光っていく。黒焦げだった体は徐々に修復され再生されていく。同様に彼らの背後で飛び下りた際に踏まれたり傷つけらたスノーゴブリンが立ち上がるのが見えた。
再生されるスノーゴブリンを見てダグオンが顔を横に向けた。
「ラピさん! クリアブルーアイを!」
「んだ!」
キティルから受け取ったクリアブルーアイをラピがかけてスノーゴブリンを見た。
「どうですか?」
「えっと…… あいつらピンクに縁どられているべ……」
うなずいたダグオンはキティルに向かって叫ぶ。
「キティルさん! スノーゴブリンはヴァンパイアです!」
「わかりました」
キティルはダグオンに向かってうなずいて右手一つで杖を持ってスノーゴブリンへ向けた。左手は彼女の帽子を外しつばを上にして逆さに持った。
「ラピちゃん! ダグオンさんをお願いね。ララちゃんは手伝って」
「んだ!」
「わかったわ!」
腰につけた金棒を抜きラピはダグオンを背中に隠す。ララはキティルの横に駆けて来た。キティルは杖を構えたままララに視線を向け口を開く。
「準備が出来るまで時間を稼いで」
「任せて! 全部わたしが片付けてやるわ」
「無茶しちゃダメだよ」
「もう…… わかっているわよ!!! 下がって!!!」
うなずいたキティルは後ろに下がって杖を前に向け口を小さく動かす。彼女の杖の先端がわずかに赤く光っていく。後ろを向きキティルが下がったのを確認するとララは両手を広げた。斜めにかけられたベルトからいくつも銀の短剣が浮かびあがっていく。
「「「「「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」」」」
声をあげたスノーゴブリンが一斉にララへと向かって来る。ララは両手を広げたまま迫って来るスノーゴブリンたちをジッと見つめていた。彼女の周りに数十本の銀の短剣が浮いている。
「来るよ。ララちゃん!」
「ふん!!」
キティルの言葉にララは横を向け笑うと、彼女は大きく鼻から息を吐き出し右腕を振り払うようにして動かした。
ララの右腕の動きに呼応して銀の短剣がいくつも飛んで行った。目にもとまらぬ速さで一直線に飛んだ短剣がスノーゴブリンを襲う。
銀の短剣は半分はスノーゴブリンたちの足を貫き切り裂いた。バランスを崩してスノーゴブリンが倒れる。勢いよく駆けているスノーゴブリンたちは前が倒れると、前のスノーゴブリンに足が引っかかって次々とと倒れていく。
「はっ!!!」
ララは右手を広げ下に向かって振り抜いた。銀の短剣は一斉に上に上がってすぐに地上に刃を向けて一世の落下してくる。
「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」」」」」
倒れたスノーゴブリンの心臓を銀の短剣が次々に貫いていった。畑がスノーゴブリンの赤黒い血で染まっていく。
「まだよ!!!」
ララは右手を上げ左腕を前に突き出した。スノーゴブリンを貫いた銀の短剣が浮かび上がりララの元に戻る。ララの周囲に残っていた短剣が左腕の動きに呼応して前に飛んで行く。
スノーゴブリンたちは前の仲間が倒れ一瞬だけひるんだがすぐに再度走り出した。前に飛んで行った短剣が高速で飛んで行き、今度は走るスノーゴブリンの心臓を直接貫く。
「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア」」」」」
銀の短剣が次々とスノーゴブリンを倒していく。杖を前に構えているキティルは笑ってララに口を開く。
「すごい…… さすがララちゃん!」
「早くして……」
「えっ!?」
スノーゴブリンを順調に駆逐するララに早くしろと言われ、困惑した表情をするキティルだった。ララは視線を横に向け悔しそうにした。
「数が多いわ…… 私の短剣だけじゃ…… いずれ突破されるわ…… だから! 早く」
「ララちゃん…… うん! わかったわ! もう大丈夫!!」
キティルの言葉にララは口元を緩ませ、両手を上にあげ手招きするように動かした。銀の短剣が彼女の元へと戻って来る。かっと目を見開いてキティルはスノーゴブリンを冷たい目で見つめた。
「炎の精霊よ! 天に輝く炎の力を我に授けよ! ラインジングリトルサン!」
大きな声で叫んだキティル、彼女の杖の先端から小さな太陽が飛び出した。ゆっくりと回転しながら小さな太陽はスノーゴブリンの頭上に輝く。
「ちょっと!? キティル! 効いてないわよ!!!」
スノーゴブリンは小さな太陽の光に苦痛の表情をゆがめたが、すぐに平然となってまた走り出した。慌てて振り向いてキティルに叫ぶララだった。キティルは走り出したスノーゴブリンを見て平然としていた。
「日除けを塗っているのね。まぁ想定内ですけどね!!!」
キティルは左手に持っていた帽子を傾け太陽に向けた。帽子の中から火の球が飛び出した。火の球は炎をまとまった白く輝く石で回転しながら小さな太陽へと向かって飛んで行った。
大きな音が響いた。炎を纏った白く輝く石は小さな太陽の手前で砕け散り、キラキラと輝く雪のような細かい粒となってスノーゴブリンへ降り注いだ。
「アガ!!! アガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!」
スノーゴブリンが苦しみだすとキティルはニヤリと笑った。
「どう? グダール塩湖の塩よ!」
キティルが帽子から打ち出したのはグダール塩湖の塩の塊だった。細かく砕け散った塩をかぶったスノーゴブリンの皮膚は小さな太陽の熱で焼けただれ火がついた。スノーゴブリンは必死に自分の手足を叩いて火を消そうとしていた。だが、拡大する火は簡単には消せずにあっという間に全身に火が回る。
「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
畑にスノーゴブリンの悲鳴が響くのだった。キティルは燃え上がるスノーゴブリンを見て小さくうなずき杖を下すのだった。




