第435話 勝ち確お義姉ちゃん
次にクレアがグアラの視界に現れたのは彼の目の前だった。クレアは体勢を低くし両手腕を引いて白い刀身の先が自分に向けていた。グアラは必死に反応しようとしたが間に合うはずもなく、無情にもクレアの大剣は彼が指先を動かすわずかな時間で胸へと突き出された。
突き出された大剣はグアラの鎧をいとも簡単に貫く。大剣はグアラの体を貫通した。
「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
平原にグアラの苦しむ声が響く。クレアは大剣を突き出した姿勢のまま顔やや横へと動かした。グアラの横に立つケイネスが立っており呆然をグアラを見つめていた。クレアは口元を緩ませ視線をグアラへと戻す。
クレアを見つめるグアラの大きく開いた目から徐々に光が消えていく。
「はぁ…… グレン君にもうかまうなって言われましたよね…… まったく」
失望した様子でため息をつきつぶやいたクレアだった。彼女は左腕を伸ばしグアラの胸に当て、貫いた大剣を静かに抜くのだった。グアラの胸に開いた穴から血が吹き出し地面を赤い血で染めていく。
大剣を抜きクレアはグアラ左手で押した。グアラは背中から倒れた。
「あっ足が!!!!!!」
「クソ! 動かねえ!!」
平原の中から声が上がる。立ち上がった男たちに周囲の草が石を持ったように絡みついのだ。がっしりと草が絡みつき男たちは身動きが取れなくなった。
「あんまり暴れない方がいいぞ。草が食い込んで腕や足がちぎれるからな」
左手を草原に向けたグレンが驚く男たちに声をかけていた。グレンは特殊能力”森のソムリエ”により草を操作して男たちを拘束したのだ。グレンは顔を横に向けクロースへと声をかけた。
「クロース! 頼む!」
「はい。かしこまりました」
返事をしたクロースは持っていた、ハルバードを両手で頭上で豪快に一回転させ勢いよく石突きで地面をたたいた。ハルバードから放射状にゴロゴロと音を立て稲妻が伸びて行き草原へと向かって行った。激しい雷鳴が轟いて草原の草が青白く瞬いた。
「「「ウッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」」」
男たちの悲鳴が聞こえ青白く光り輝く草たちが風に揺れていた。キティルは顔をしかめ自分の背丈ほどあるララとラピとダグオンは何が起きたのか見えないが、悲鳴を聞いて顔を青くしていた。
光がおさまった草原には真っ黒に焦げた男たちが、草に拘束されたまま立っていた。爽やかなそよ風が吹く男たちからかすかなすすが飛んで宙に舞う。
顔を横に向け草原を確認したクレアはケイネスに視線を向けた。
「さて…… 他は片付きましたね。次はあなたですね」
「クソ!!!」
両手をクロスさせるようにして腰にさした二本の剣を同時に抜いた。抜いた剣はかぎりなく薄く風が吹だけでしなるほどだった。
「薄い刃……」
「死ねエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!」
ケイネスは駆け出した両手に持つ剣を回転させた。細長く薄い剣は縄のように回転する。クレアとの距離をつめたケイネスは右手に持つ剣を振り下した。
「遅いですよ」
「ふっ!」
振り下ろされる剣にクレアは大剣で受け止めようと振り上げた。クレアの大剣がケイネスの剣と衝突する。
「えっ!?」
鞭のようにしなった剣先が大剣に巻き付いた。にやりと笑ったケイネスは左腕を振り上げた。クレアの大剣を動かせないようにケイネスが右腕を引っ張った。ケイネスが左腕を振り下し、しなる剣がクレアへと向かって鋭く伸びていく。
「クッ!」
悔しそうに眉間にシワを寄せ大剣から手をはなした。クレアの大剣はケイネスの右手に引っ張られていった。彼女は下がりながら体を後ろにそらした。
縦に振り下された剣はクレアの胸をかすめて地面へと落ちていった。クレアの服は剣で引き裂かれ破かれた彼女の服の隙間から黒い下着と胸の谷間がのぞく。
「チッ…… まぁいい。良い眺めになったじゃねえか」
ケイネスはクレアを仕留めそこない舌打ちをしたが、すぐに裂かれた服を見て勝ち誇った顔をする。
「剣が…… なるほど…… 面白い武器ですね」
「ふん! どうだ我が薄刃流の剣術は! 降参するなら今だぞ」
左手で胸を隠してクレアはケイネスが持っている剣を見てつぶやく。ケイネスは鼻息荒くクレアに降伏をするように叫ぶのだった。薄刃流剣術とはしなるほど薄い剣を使用する剣術で、ノウレッジでケイオスが編み出したものだ。
ケイネスと対峙するクレアの後方でキティルが心配そうに見つめていた。
「クレアさん…… 大丈夫でしょうか?」
「平気ですよ」
「あぁ…… あいつはもう負けてる」
「えっ!?」
つぶやいたキティルにクロースとグレンが答えた。
「クレア義姉ちゃんに剣で戦いを挑んだ時点でな……」
ケイネスを睨みつけながらグレンはつぶやくのだった。
丸腰となり引き裂かれた服を押さえ、顔を下に向けているクレアをケイネスは余裕の笑みを浮かべていた。視線を下に向けていたクレアは顔をあげた。
「あっ!?」
顔をあげたクレアは笑っていた。ケイネスの武器を見た彼女は首をかしげた。
「降参するのは…… あなたですよ?」
「はっ!? 馬鹿が! この状況で俺が降参するわけないだろ!」
クレアは強く右拳を握りしめた。彼女の手が白く輝く光の剣が伸びていく。
「ふん…… 魔法剣でも同じだ!」
光の剣を出したクレアにケイネスは叫んだ。クレアはにっこりとケイオスに向かって微笑んだ
「なら試して見ますか?」
鋭い目をしたクレアは地面を蹴って駆け出した。ケイオスとの距離を詰めると右手を振りかぶった。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「無駄だ!」
右手でクレアは光の剣を振り下した。ケイネスは後ろに飛んで光の剣をかわした。クレアはニヤリと笑い剣を横に大きく振り、光の剣を自分の体の左へと動かした。クレアの光の剣がケイオスの剣のように柔らかくしなった。
「うっ嘘だろ…… 剣が…… 馬鹿な…… ハッ!?」
左へ動かした強く戻すとしなった光の剣はケイオスへと向かって伸びていく。光の剣は飛び上がったケイオスの足に巻き付く。
「終わりですよ!!!」
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
クレアはケイオスの足に巻き付いた光の剣を大きく振りかぶり、そのまま地面に向かって振り下ろした。光の剣は地面へと振り下ろされると同時にケイオスの足から離れた。ケイオスは放物線を描き飛んで行き、腹から地面に叩きつけれ転がる。ケイオスの顔や手足や体に強い衝撃があり苦痛に顔を歪みボキボキと骨がきしみ折れる音が体を駆け巡っていく。両手から剣が離れて地面に転がっている。
転がるケイオスを見てクレアは前に出て自分の大剣を拾う。
「うーん。すごいですね…… しなる剣の不規則な動き軽い薄刃で体力の消耗も低くずっと攻撃を繰り出せます…… ただ…… この剣では防御ができませんね。私には必要ないかも知れませんね」
首をかしげるクレアだった。倒れたケイオスが顔をあげる彼の額からは血が流れている。
「なんでだ…… 薄刃をいきなり使いこなせるわけ……」
ケイオスは自分が編み出した剣術をいとも簡単に模倣した、クレアを信じられないという表情で見つめていた。
「ふふ。私の特殊能力は聖剣大師です。全ての剣は我の中に……」
左手で胸を押さえたままクレアはケイオスにニッコリと微笑み頭をさげたのだった。聖剣大師は全ての剣を支配し剣術を見て体感すれば模倣できるのだ。




