第434話 余計な人がついてくる
食事を終えたグレン達は休憩所で仮眠を取った。翌朝、グレン達は朝食を食堂へ取っ手休憩所の前へ出て来た。休憩所から出たクレアは満足げに腹をさする。
「ふぅ…… 朝ご飯美味しかったです」
「んだな。甘くてうまかったべ!」
「ねえ。まさか塔の中で生クリーム乗せパンケーキが食べられるなんて……」
クレアとラピとララが先ほど食べた朝食の味を思い出し笑っている。三人の会話を聞いていたダグオンが地面を指して答える。
「一階下は小麦畑、二階下には牧場と養鶏所があるようです」
「塔のなかとは思えないわねぇ……」
「でも面白いですよ。やはり見るところはたくさんあります」
「うん。わかる!」
ララがうなずくとダグオンは笑顔になって少し恥ずかしそうに頬を赤くする。クロースは少し後ろで二人の様子を見て笑った。
「ふふ。じゃあ行きましょうか」
「はーい。行きますよー」
クレアが前を指して歩き出した。グレン達は彼女に続いて歩き出した。歩き出したグレン達の後ろから誰かがパタパタと駆けて来た。
「ちょっと! 待って下さい!!!」
背後から声がしてグレン達が振り返った。休憩所からケイトが飛び出して来てグレン達の元へと駆けて来ていた。昨日、彼女のグアラに破かれた服は替えられていた。
走って来たケイトは最後尾に来たグレンの前に来ると立ち止まり、膝に手を付いて息を整える。グレンのすぐ後ろにクレア達がやって来る。
「はあはあ…… おっ追いついた……」
「ケイト…… どうした?」
息を切らしているグレンが声をかけるとケイトは勢いよく顔をあげた。
「もう! 早いわよ! なんでよ。まだ起きる時間じゃないでしょ!」
「しっ知らねえよ。だいたいなんで俺達がお前に起きる時間に文句を言われるんだよ」
「そっそれは……」
やや気まずそうに目線をさげ、甘えるように下からグレンの顔を覗き込むケイトだった。彼女は意を決したような顔をして彼に口を開く。
「わっ私も一緒に行かせてください!」
「嫌だよ。なんで一緒にいかなきゃいけないんだよ?」
即答で拒否するグレンにケイトはムッとした顔をした。グレンの顔をうらみがましく見つめ口を開く。
「あなた達は噂のA1冒険者ですよね?」
「えっ!? そうだけど?」
ケイトがグレン達をA1ランクの冒険者だと言い当てた。グレンは少し驚いた様子でケイトに答えた。彼女は少し前を開けて話をする。
「じっ実は…… 私の仲間が行方不明なんです。探しに行きたいのに階層がロックされて…… だから一緒に連れて行ってください!」
目を涙をため話すケイトだった。彼女は行方不明になった冒険者の仲間で捜索に行きたいという。
「俺達は冒険者の捜索は……」
グレンが口を開くとケイトはにんまりと微笑んだ。
「知ってますよ! ナウローさんが凄腕の冒険者に捜索を依頼したって自慢してましたもん!!」
決めポーズのように腕を伸ばしてグレンを指さすケイトだった。昨日にナウローがグレン達に冒険者捜索を依頼したことを触れまわったようだ。グレンは苦い顔をして悔しそうにつぶやく。
「あの野郎…… 口が軽すぎだろ……」
「ナウローさんはこれ冒険者が混乱するのを避けたかったんですよ」
「分かるけどさ……」
納得いかないという顔をするグレンの横にクレアが並び彼に視線を向けた。
「じゃあいくらにしましょうか?」
「そうだな……」
ちいさくうなずいたグレンを見てクレアは笑顔をケイトに向けた。話を聞いていたケイトは驚き声をあげた。
「へっ? お金をとるんですか?」
「当たり前だろ? 連れて行ってやるんだからな」
「えぇ」
報酬を要求するのは当然だというグレンにクレアは同意した。クレアは指を立て顎に当ててながら少し考えてから口を開く。
「うーんと…… 確かグアラさんからちょろかまかしのが千ペルでしたっけ?」
「そっそんな千ペルも取るんですか?」
全部を取ろうというクレアに声をあげるケイトだった。グレンが首を大きく横に振って笑った。
「おいおい。俺達は鬼じゃねえんだからそんなことしねえよ。九百ペルで勘弁してやるよ」
「鬼!!!!!!!」
右手を出して金を要求するグレンにケイトが叫ぶのだった。クレアはニコッとほほ笑みグレンの手を上から押して下げさせる。
「なら良いですよ。別に私達はあなたを連れて行く理由はないので」
「あぁ。そうだな。行こうぜ」
顔を見合わせてうなずいたグレンとクレアはケイトに背中を向けた。両手を広げ後ろに居たキティルたちにも背中を向くように合図する。慌てたケイトはすぐに手を伸ばして二人に向かって口を開く。
「まっ待て!!! わかったわよ。払う! 払うわよ!!」
グレンとクレアは顔を見合わせてうなずいた。こうしてケイトはグレン達と同行することになった。
休憩所へと続く脇道を下り大きな道に戻る。先頭はクレアでララ、ラピ、クロース、キティルが続きケイトがいて最後尾はグレンである。
道を歩くと円筒の大きな塔が見えて来る。円筒は上の階へと向かう魔導エレベータである。先頭を歩いていたクレアが立ち止まり横を腕を伸ばして皆を止めた。
「うん!? あれは…… やっぱり…… グレン君!」
魔導エレベータの大剣を右手に持ったグアラと白いズボンに赤い上着を着て腰に細長い剣を二本さし、長い黒髪をオールバックにした目つきの悪い青年が立っていた。クレアは振り向きグレンを呼んだ。クレア達に気づいたグアラと青年は近づいて来る。
「おっと! こっちもだ」
「あら…… じゃあそっちは頼みます」
「あぁ…… ちょっと人数が多いがな…… クロース、キティル! 準備をしろ」
グレンの言葉にクロースとキティルはうなずいて武器に手をかけた。クレアは背負った大剣に手をかけ近づくグアラと青年を見つめている。
「おい!! お前ら! よくも騙したな!!!」
歩いて来たグアラはクレア達の二メートルほど前で立ち止まり彼女を怒鳴りつける。
「騙した? なんのことでしょうか?」
「これだ!」
首をかしげるクレアに向かってグアラは左手を前に突き出した。彼の左手のひらの上にはつぶれたフェイクゴールドが乗っていた。フェイクゴールドをグアラが握り潰したようだ。
「金じゃねえただのきたねえ兎の毛じゃねえか! 換金できなかったんだぞ!!!」
左手をさらに前に突き出すようにしてグアラはラピを睨みつけた。
「おっおらは別にそれは金だなんて言ってねえべ」
「そうですね。勘違いしたのはあなたですね」
「うっうるせええ!!! おい! 皆でてこい!!!!」
グアラが大声で叫ぶと周辺の草むらが揺れた。武器を持った十人の男たちが生えて来た。草むらに武装した男たちが潜んでいて一斉に立ち上がったようだ。彼らは手に剣や斧などの武器を持っている。服装はズボンにシャツの上から上着を着た軽装だが胸当てに籠手や関節に装甲を付けていた。
「でてこいじゃねえだろ!」
「そうだ! こいつから? お前の借金を返してくれるってのは?」
「チッ……」
舌打ちをするグアラだった。グアラの態度に隣にいる青年が横を向き口を開く。
「おい聞いているのか? グアラ!」
「へっへい。ケイネス様…… こいつらです!」
「チッ! 調子に乗るなよ」
ケイネスと言われた青年が舌打ちをして剣に手をかけクレアたちに顔を向けた。
「あれ? 仲間の人が変わりましたね?」
「仲間? あぁ。マーラとダイアンか? あいつらは売られたぜ…… こいつの借金のせいでな!」
横を向き顎でグアラを指すケイネスだった。ケイネスは顔を前に向け舐めるようにしてクレアを見た。
「まぁいい。お前も後ろのやつも高く売れそうだな…… まぁ少し年を取っているみたいだがな……」
クロースとクレアを見て高く売れると笑うケイネスだった。クレアはムッとした後につぶやく。
「そうですか……」
「「!!」」
目の前にいたクレアの姿がグアラとケイネスの視界から消えた。二人は目をおおきく見開いたのだった。




