第432話 喧嘩は終わり
黄金の球がグアラの左手におさまった。彼は満足そうに笑みを浮かべ懐にしまった。
「なっ!? クソ!!!」
グアラの目の前にメイスが飛んで来た。彼は慌てて体を横にして飛んで来たメイスをかわした。目の前をメイスが飛んで行くとグアラは前を向いた。そこには右腕を伸ばしたララが立っていた。ララはグアラを見て笑顔を向けた。ララは特殊能力でケイトのメイスを操っていた。
「やるじゃない! でもまだよ!」
ララが手のひらを広げたまま横に腕を大きく動かした。グアラの後ろへと飛んで行ったメイスが回転しながら戻って来る。グアラは右手に持っていた大剣を後ろに向くと同時に振り上げた。大きなと音が響いて飛んで来たメイスは大剣に弾かれて天井に激突しグアラの目の前に落ちて来た落ちて来た。
床に転がってメイスを見て眉間にシワを寄せグアラはララを睨む。
「舐めやがって…… チッ!」
舌打ちをしたグアラが体を横にむき持っている大剣に力を込める。
「おりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
地面を蹴ったラピが金棒を振り上げグアラへと迫って来ていた。ラピは金棒をグアラへと振り下ろした。グアラはラピに反応しすぐに大剣を返して金棒へと向けて受け止めた。
ラピの金棒は大剣によって阻まれ、彼女の右手が重くしびれていく。金棒が受け止められ目をおおきく見開いた。
「なっ!?」
「ふん!」
大きく鼻から息を吐き出したグアラは大剣で一気に押し出した。押されたラピの体は簡単に吹き飛ぶ。
「うわあああああ!!!」
吹き飛ばされたラピは背中から床に叩きつけられた。衝撃でラピの手から金棒がはなれて床に転がった。グアラは倒れたラピを睨み怒鳴りつける。
「クソガキどもが! 舐めるな!」
「うう……」
大剣を構えグアラはラピへと近づく。倒れたラピは痛がり唸り声をあげ、必死に起き上がろうとしていた。
「やめなさいよ!! はっ!」
ラピへと迫るグアラにララが叫んだ。彼女は右手の指を二本立て横に動かした。ララの手の動きに呼応してラピの近くの床に転がっていた金棒が浮かび上がりグアラへと飛んで行く。
「邪魔するな!!」
グアラは金棒を大剣で弾いた。金棒は回転しながらララへと向かって行く。ララは両手を向け金棒へ向け必死に動かそうとしていた。しかし、ララへと金棒は向かって来る。金棒が直撃しそうになりララは避けようとした。
「クッ!!!」
金棒はララの頭をかすめてふらついたララは膝をつき頭を押さえる。ララの指の隙間から血が滲みゆかへと垂れていく。
「ガキが舐めるからだ…… ペッ!!!」
グアラは膝を付き額を押さえうずくまるララを見て満足に笑って前を向いた。彼のすぐ前には立ち上がろうとして必死の形相のラピが居た。彼はラピに向かって唾を吐いた。異臭を放つツバがラピの顔にかかった。グアラは大剣を振り上げた。
「死ねエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」
「クッ!!!」
大剣が迫りラピが目をつむった。しかし、一瞬で誰かが背後へと迫り手を伸ばした。
「はっ!?」
大剣が止まりグアラが声をあげる。彼は何者かに大剣を持った腕を掴まれた。
冷や汗をかきながらグアラが横に視線を向けた。彼の視線にはにっこりと微笑むグレンの姿が見えた。グレンはラピに気を取られていたグアラとの距離を詰めていた。グレンはグアラの背後から左手一つで大剣を止め、右手で首筋に剣を突きつけていた。
「おっと! 動くなよ……」
「あっ!!!」
悔しがり声をあげるグアラだった。グレンは顔を横に傾けグアラの背中のから顔をだしラピに声をかける。
「詰めが甘めえよ。ラピ」
「すっすまね……」
倒れていたたラピが立ち上がって服の埃をはたいた。グレンは視線をラピからグアラに移し彼と目が合った。悔しそうにグアラはグレンを睨みつける。
「クソ! 卑怯だ…… うっ!!!」
グアラが口を開くとグレンは彼の首筋に当てていた剣を押し込み、強引に黙らせてから自分が口を開く。
「卑怯だと? これは女神に捧げる儀式か? ルールがある試合か違うよな? ただの喧嘩にルールがあるかよ。それにガキ相手に人質とっていきがってたやつに言われたかねえよ」
「うっ……」
まくし立てるグレンにグアラは黙り込んでしまう。グレンは呆れた顔でグアラを見て剣を持つ手に力を込める。
「いいか? 少しでも動いたら…… お前の頭は体からバイバイすることになるぜ? どうする?」
「わっわかった! 降参する!」
グアラは大剣から手を離した。床に大剣が落ちて音がし彼は両手をグレンに見せるようにした。グレンはうなずいて剣を引く。
「よし! もう俺達に関わるなよ」
「へっへい!」
返事をしたグアラはグレンに背中を向け逃げるように酒場から出て行こうとする。
「おい! 仲間を…… チッ!」
グレンが声をかけるがグアラはダイアンとマーラを置いていてしまった。
「行っちまった。まぁいいか」
首を横に振りグレンは剣を鞘におさめた。人だかりを作っている冒険者に口を開いた。
「ほら! もう喧嘩は終わりだ! とっとと解散しろ!」
冒険者たちはグレンの言葉に従い解散する。喧嘩に慣れているのかダイアンとマーラは冒険者達が連れて行き治療を始めた。
グレンは頭を押さえてうずくまるララの元へと歩いていく。キティルとラピが彼女の元にすでに駆けつけていた。
「大丈夫だべか?」
「あっありがとう…… 大丈夫よ」
「無茶しないのよ。クレアさん! 治療をお願いします」
ラピが声をかけるとララは額から血を流し気丈に返事をした。キティルはすぐにクレアを呼びララの治療を依頼した。クロースとダグオンもクレアに続いてララの元へとやって来る。
クレアはすぐにララの元へと駆けつけ回復魔法を彼女に使用する。
「よく頑張りましたね」
「ふん…… 当たり前よ!」
回復魔法ヒールビッグシスターハンドを使用し、緑に光る手をララの額にかざしララを褒めるクレアだった。ララは恥ずかしそうに頬を赤くして腕を組み口を尖らせ当然だと答えていた。クレアはそんなララを見て優しくほほ笑むのだった。
「んだな。見習いにしては頑張ったべ!」
「はいはい。どうせ私は見習いですよーだ!」
ラピに向かって舌を出すララだった。キティルとグレンは顔を見合わせて笑うのだった。そっとグレンの後ろにクロースが近づく。
「グレンさん……」
「あぁ。わかっている」
「私も行きます」
クロースに呼ばれ振り向きうなずくグレンだった。グレンとクロースはケイトの元へ向かいキティルも続く。三人は床に座っているケイトの前に立った。ケイトは破かれた服を押さえたまま、自分の前に立つグレン達を見上げていた。
キティルが帽子を外しケイトの横にしゃがみ声をかける。
「大丈夫ですか?」
「えっええ…… 大丈夫…… ありがとう……」
うなずいて答えるケイトにキティルは帽子の中から毛布を出して彼女の肩にかけた。礼を言ったケイトは毛布を肩にかけたまま立ち上がる。
「まったく何で喧嘩なんかなさったんですの?」
クロースの問いかけにケイトは立ち上がってムッとした顔で答える。
「喧嘩じゃないわ。あいつらが成果順の分け前に文句を言って来たのよ」
「あぁ。分け前が少なかったんですのね?」
ケイトは苦い顔をしてクロースに向かって首を大きく振った。
「違うわよ! 私が一番多く成果をあげたのよ。あいつらは大したことしてないくせにいっちょ前に分け前をもらおうとしたから全部わたしがもらってやったのよ」
「はぁ……」
「そりゃあ喧嘩になるだろ……」
胸を張って得意げな顔をするケイトにあきれた顔をするグレンとクロースだった。




