第431話 やっぱ金よ
ケイトに馬乗りになったままグアラは呆然とグレン達を見つめ動かないでいた。動かないグアラに段々とイライラして来たグレンは顔をしかめた。
「おい! 聞いてんのか!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
「「うわああああああああああああああああああああああ!!!」」
不機嫌そうな顔でグアラに向かって叫んだ、グレンはわしづかみにしたマーラを横に投げた。悲鳴を上げマーラは飛んで行く人だかりにいた冒険者を吹き飛ばした。一直線に飛んで行ったマーラは壁にぶつかり大きな音を立てる。
「あがががが……」
体の横から壁に打ち付けられたマーラは声をあげ、壁を滑り落ちて床に倒れた。
「あっあああああ……」
壁から垂れるマーラの血を見つめ、グアラは恐怖で顔を引きつられ声を震わせていた。今度はキティルがグアラをイライラした様子で見つめ持っている杖に力を込めた。
「早く答えてください…… よ!!!」
「うわああああああああああああああああああああああああ!!!!」
キティルが杖を力強く振り上げた。ダイアンの体が浮かび上がっていった。ダイアンは勢いよく天井へと向かっていき大きな音が響く。ダイアンの体は天井に突き刺さり足がプラプラと揺れている。
「あああああああ……」
グアラはぶらぶらと揺れるダイアンの足を見上げている。グレンとクレアの二人はゆっくりと顔をグアラに向け口を開く。
「「次は……」」
「おまえだ!」
「あなたよ!」
同時にグアラを指したグレンとキティルだった。顔を見合わせてうなずいたグレンとクレアはグアラへと向かって歩き出す。
「あっああああああ!! クソオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
恐怖で顔を引きつらせていたグアラは視線を下に向けた直後に大きな声をあげた。彼は立ち上がり背負った大剣に手をかけ引き抜く。両手で大剣を逆手に持ち、グアラは剣先をケイト胸につきつける。
「こいつがどうなっても良いのか!!!!!!!!!!!!!!」
必死にツバを飛ばしグアラはグレンとキティルに向かって怒鳴りつける。グレンは呆れた顔でつぶやく。
「まぁ…… そうなるか…… だっせえやつだ」
「ですよね……」
キティルがうなずいて同意する。グレンの左腕に乗っているララが横を向いて口を開く。
「どうするのよ? グレン!」
「任せておけよ。キティル? 行けるか?」
「はっはい…… いつでも……」
視線をキティルに向けグレンが問いかけた。キティルは静かにうなずき杖の先をグアラへと向けた。
「待つべ!!!」
ララと並んでグレンの左腕に座るラピがグレンとキティルを止めた。
「おらが解決する。下してけれ」
「ラピ? いや…… でも」
自分が行くから下せというラピにグレンは困惑した様子でキティルに視線を向けた。
「いいですよ。ラピちゃんお願いします……」
「よし! じゃあ頼んだぞ」
グレンがしゃがむとラピは飛び下りた。さらに続いてララも飛び下りた。ラピは驚いた様子で自分の隣に立つララに口を開く。
「なっなんでおめさも?」
「当たり前でしょ。あんたが行くなら私も行くわ」
「おめさは見習いだべ」
ララはムッとした顔をしたがすぐに自分の胸に手を置いて大きく息を吐いた。
「みっ見習いだからよ! あんたの近くで学ばないとね!」
顔を真っ赤に不服そうに話すララを見てキティルはほほ笑んだ。グレンは笑ってうなずきラピに声をかける。
「あぁ。そうだな。連れってってやれラピ」
「んだ…… じゃあ付いてごい」
「じゃあ行くわよ」
二人は並んでグアラに向かって歩き出した。近づく二人に気づいたグアラはすぐに声をあげる。
「なっなんだ…… お前ら! ガキが! 動くんじゃねえ!」
「グッ」
グアラは剣先をケイトに押し込み、胸を押されたケイトは蛙のような声をあげた。二人は声を聞いて立ち止まった。ララは横にいるラピに視線を向け、小声でささやくように話しかける。
「どうするのよ……」
「両手をあげるべよ」
「えっ!?」
「ええから! こうするべよ」
ラピはララに手本を示すように勢いよく両手を上げた。ララは不服そうにしながらゆっくりと両手を上げた。
「オラたちは何もしねえべ! その人を離すべ」
両手をあげたまま無抵抗を示してグアラにケイトの解放を求めるラピだった。グアラはラピを睨みつけ叫ぶ。
「うるせえ! こいつは報酬をちょろまかしたんだよ」
「ちっちが……」
「黙れ!!」
「がは!!」
グアラはケイトの腹を踏みつけた。彼女は苦しみ声をあげる。グアラは何度もケイトの腹を踏みつけていた。苦しむケイトの姿を見てられずララが顔を背けた。
「ラピ! こっこれ以上は……」
「おめさ…… おらが合図したら…… あれで……」
前を向いたラピはララにのみ聞こえる程度の小声何かを彼女に伝えた。話が終わりララが小さくうなずくとラピはほほ笑み。視線をグアラへと向けた。
「やめろ!」
「なんだと!」
グアラがララに顔を向け彼女を睨んだ。ラピは小さく息を吐くと落ち着いた口調でグアラに口を開く。
「わかったべ。そいつがごまけした報酬はいくらだ? オラが払う!」
「へっ!? お前がか?」
「あぁ。オラは金持ちだかんな!」
笑顔で堂々とうなずくラピだった。グアラは堂々した彼女の言葉を一瞬信じそうになったがすぐに首を横に振った。
「そんなこと信じられるか! だいたいこいつをお前が助ける理由はなんだよ!!!」
グアラは右手で大剣を強く押さえ後に、左手を大剣から離しケイトを指した。彼の言う通りであっても居ないラピにケイトを助ける理由はない。
ラピはうっすらと笑って視線をララへと向けグアラに答える。
「こいつが言ったべ! オラたちはヴァンパイアハンターだ。女はヴァンパイアへの囮に使うんだ。すぐに稼げるべ」
顎でララを指してラピが答える。ララはラピの答えを聞いて目を見開き驚いている。グアラは交互にララとケイトを見てから少しの間考え込んでいた。グアラは左手の指を三本立てラピに向け答える。
「三千ペルだ!」
「ちょっと! 私は千ペルしか……」
「黙れ! お前がちょろまかして手間がかかった手間賃だ!」
ケイトを怒鳴りつけるグアラだった。ラピは首元のマフラーを引っ張って中に手を入れた。手を出した彼女は何かを握っていた。笑顔になったラピは手のひらを上に向けゆっくりと指を開く。
「わかったべ。これを見るべ」
開かれていくラピの指の隙間から光が漏れて周囲を照らす。金色の輝く小さな球がラピの手のひらに握られていた。光は強く照らし周囲にいた冒険者たちはまぶしく手を額にかざす。
「黄金…… すげえ……」
「あぁ。あの大きさなら…… 余裕で一万ペルになるぞ……」
冒険者達がラピの手のひらを見てつぶやいている。話が聞こえたグアラは満足そうにうなずいた。
「いいだろう! それをこっちに投げろ!」
「ダメだべ! 先にそいつをよこすべ!」
グアラは視線をケイトに向けた後に大きく首を横に振った。
「いーや。ダメだ! そっちが先だ!」
「グッ!!」
ラピの要求を拒否しグアラは右手に持った大剣をまた押し込む。苦しそうな声をあげるケイトを見てラピは慌ててグアラに返事をし黄金の球を差し出す。
「わっわかったべ! ほれ!!」
うなずいたラピは右手を大きく後ろに持って行き下から黄金の球を投げた。キラキラと眩い光りを放つ黄金の球が放物線を描きながらグアラの元へと飛んで行く。
にやりと笑った飛んでくる黄金の球を受け取ろうと左手をあげるグアラだった。彼の意識がわずかにケイトから外れ大剣をもつ右手の力がわずかに緩んだ。
「いまだべ!」
「わかったわ!!!」
返事をしたララが右手をいきおいよく前に突き出すように伸ばしたのだった。同時に床に転がっていたケイトのメイスが浮かび上がった。




