第430話 食事の時はお静かに
立ち上がり人だかりへと向かうラピを慌ててララが追いかけていく。ララはラピに手を伸ばして彼女の手首をつかむと引っ張って止める。
「危ないわよ。やめなさい」
止められたラピは振り向いて首を横に振った。
「ダメだ! 誰がいじめられているんだべ? だったら行くべ。オラは苦しむ人間を助けるためにヴァンパイアハンターになったんだ!」
真剣な表情でまっすぐにララを見つめるラピだった。決意を決めた彼女には迷いはなく誰が止めても行くという強い意志がにじみ出ていた。ララはラピの気迫に圧倒されたが、すぐに彼女から手をはなし胸に手を置いて笑った。
「そう…… わかった。だったらあたしも行く。見習いなんだからついて行って学ばないとね」
「んだ!」
付いていくというララにラピは嬉しそうに大きくうなずいた。二人は一緒に人だかりへと向かって行く。
「チッ…… 行くか」
「そうですね…… 二人はダグオンさんをお願いします」
舌打ちをしたグレンだがどこか嬉しそうに人だかりをさして立ち上がる。クレアは小さくうなずきグレンに続いて立ち上がろうとした。しかしすぐにクレアが立ち上がりクレアを止める。
「いえ。私が行きます。クレアさんはここに居てください」
「えっ!? でも……」
心配そうに歩く二人に視線を向けるクレアにキティルは胸を張って答える。
「私はヴァンパイアハンター協会の会長ですからね。新人の面倒をみるのも会長の務めです」
自信満々ににっこりと微笑むキティルだった。クレアは微笑んだうなずいた。
「わかりました。じゃあお願いします。グレン君。頼みましたよ」
「はい」
「あぁ!」
返事をしたキティルとグレンは一緒にララとラピを追いかけていった。クレアはゆっくりと座りキティルの背中を笑顔で見つめていた。クロースも同じようにキティルに見つめてほほ笑み口を開いた。
「たくましくなりましたね…… キティル」
「えぇ。任せても大丈夫…… まあ!?!?!?」
目をおおきく見開いて驚いた顔をするクレアだった。クロースは苦笑いをしていた。
「なっなんだよ……」
「怖いんです。ちょっとだけ」
「はあ……」
キティルはグレンの手をつないだ。驚いて手を振り払おうとしたグレンだったが怖いと言われると首を振り手をつないで一緒に歩き出した。
「やっぱり行かせるんじゃなかったです…… プク!」
「うふ。グレンさんは自覚がないみたいですけどね」
「そうなんですよね…… まったく」
手をつないで歩く二人を見て頬を膨らませていた。クレアは愚痴りクロースは相槌を打って聞いていた。
人だかりの中央で三人の男女が一人の女性を取り囲んでいた。取り囲む三人の冒険者で鉄の鎧を着て大剣を背負う男性戦士。剣士と白いローブを着た魔法使いの短い黒髪の魔法使いの女性。銀色の長い髪に羽根が幅広い帽子を白いミニスカートの青い上着の上から胸当てを装備し腰に細長いに剣をさした剣士の男性だ。戦士はグアラ、魔法使いはマーラ、剣士はダイアンという。
グアラはメイド服を着た女性を怒鳴りつけながら殴りつける。
「ケイト! てめえ!! いい加減にしろよ!」
「キャッ!!!!」
メイド服を女性の名前はケイトという。彼女は長い赤い髪を後ろで結んで、丸い鼻をして水色のやや垂れた目に唇は薄くほんのりとピンク色だ。冒険者なのか手には小手とめくれたスカートから見える足には膝までの長さの金属製に膝当てを装備し背中には丸盾と片手用のメイスがある。
殴られたケイトは尻もちを着いてグアラを睨みつけていた。衝撃で背負っていたメイスが床に転がっている。
「さっさと返しやがれ! 仲間を裏切るのか!」
「いやよ…… 私の分だから!」
どうやらケイト、グアラ、マーラ、ダイアンは冒険者パーティのようだ。グレンの予想通り仲間内のでの喧嘩だろう。
「クソが!」
叫んだグアラはケイトの肩を蹴りつけ仰向けに倒した。マーラが倒れたケイトを見てグアラにしゃべりかける。
「やっちゃいなよ。どうせこのまま売るんでしょ? だったら練習よ」
「そうだな」
「ぐはああ!!!」
にやりと笑ったグアラはケイトの腹を踏みつけると馬乗りになった。彼は胸へと両手を伸ばして服をつかんで強引に引きちぎる。
「いやああああああああああああああああああああああああああ!!! やめて!!!」
服の破れる音に四人を囲っていた冒険者が盛り上がり声をあげている。ララとラピは彼らの後ろで顔を見合わせた。
「どくべ!」
「おい! なにするんだよ! 邪魔だ!!!」
「うわ!」
人だかりの中に入ろうとしたラピだったが蹴られて尻もちをついた。慌ててララが彼女の元へ駆け寄り背中を支え声をかける。
「大丈夫?」
「うぅ……」
悔しそうにうつむくラピだった。二人の元にキティルとグレンが追いついた。尻もちをついているララを見たキティルが厳しい顔で人だかりを見た。
「許せない。グレンさん…… お願いします。ちょっとくらい怪我させても良いですよ」
「あぁ! わかった」
うなずいたグレンの目が赤く光りオーラを纏い彼の体は巨大化した。グレンは獣化全解放を使用したのだ。グレンは冒険者に向かわずララとラピに手を伸ばした。
「わっ!? わっわ」
「ちょっと乱暴にしないでよ!」
「いいから…… お前らはそこで大人しくしてろ」
獣化全解放により巨大化したグレンはララとラピを左腕に乗せた。次にその大きな右手をケイト達を囲み盛り上がる冒険者達に伸ばす。
「ほいほい!」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
グレンは冒険者達を次々に放り投げて人だかりを減らしていく。四人ほど放り投げると冒険者達が振り向いてグレンを見て自然と道が開いていく。人だかりがなくなるとケイトに馬乗りになっているグアラと近くにマーラとダイアンが立っていた。
ケイトの服は破かれスカートをまくられ水色の下着と胸の谷間があらわになっていた。
「なっなんだ!? お前らには関係ないだろ!」
グアラは横を向きグレン達に顔を向けて怒鳴りつけた。ムっとしたララがグアラに言い返す。
「なにって! 私達はヴァンパイアハンターよ」
「はぁ!? だったらなおさら関係ねえだろ! これは冒険者の話だ!」
「えっ!? だからなによ!! あんたちはうるさいのよ! うるさいのは嫌いなの!! 目ざわりなの!」
関係ないと言われたララはうるさいを連呼して強引に首を突っ込む。グレンはグアラを睨んで強く大きくうなずく。
「んだ暴力はよくないべ! ここは飯食うとこだべ! それに…… 飯食う時にうっせえとまずくなるべ!」
「そうよ! そうよ!」
「だってさ!」
ラピがララに強く同意しララがグレンが彼女に同意する。グアラは三人を見て眉間にシワを寄せ舌打ちをした。
「チッ! うるせえ奴らだ! おいマーラ! ダイアン! こいつらをやっちまうぞ…… いっ!?」
グアラが指示を出した直後にグレンの姿が消えた。彼はマーラの前に現れにっこりと微笑んだ。マーラの顔は青ざめて恐怖に震えた。
「あががが……」
グレンはマーラの頭をわしづかみにして持ち上げた。
「クックソ! ギャアアアアアア!!」
マーラの近くに居たダイアンが剣に手手首を伸ばした。だが、彼の右手首に細長い炎を纏った鞭がからみついた。ダイアンの右手首は燃え上がりながら右手を上に伸ばされる。熱く焦げていく腕にダイアンは悲鳴を上げた。
「グレンさーん! こっちも捕まえましたよ」
ダイアンの腕にからんだ炎の鞭が伸びている杖を持ち、魚を釣り上げたような姿勢をしているキティルがグレンに声をかけた。グレンは彼女に向かってうなずくと視線をグアラへと向けた。
「でっ? こいつらをなんだって?」
笑顔でグレンはマーラの頭をわしづかみにしたままグアラに声をかけるのだった。




