第425話 歴史は繰り返す
ハンマーをかついだ姿勢でガウローリは自分の前に並んで立っている、グレンとクレアをクロースの三人を見下ろし睨みつけている。
「ここは私にお任せください」
左腕を横に出しクロースが前にだしグレンとクレアと声をかけた。グレンとクレアはうなずくと下がっていく。
クロースはガウローリの二メートルほど前に来ると、右手に持っていたハルバードを両手で持って構えた。ガウローリは視線を下に向けクロースを見て顔をしかめ不機嫌な顔をする。
「一人だと? 舐められたものだな」
ガウローリのつぶやきにほほ笑んだクロースが首をかしげた。
「あら? あなたは魔王軍に居たんですよね? 一度負けた相手にいうには恥ずかしい言葉ですわよ」
「ふん! あの時とは違うんだ!!!!!!」
大きく鼻で息をしたガウローリは棍棒を振りかぶり、クロースを叩き潰そうと振り下す。巨大な棍棒がクロースへと向かってきて彼女は大きな影に覆われた。
「そういうとろですわよ!」
クロースは左手を光らせると向かって来る棍棒へと向けた。彼女の左手から激しい光が左右へと蜘蛛の巣状に飛び散って行く。稲妻のシールドがクロースの頭上に展開された。
「フッ……」
余裕の笑みを浮かべるクロースだった。棍棒はクロースのシールドに叩きつけられ大きな音が洞窟に響く。同時に稲妻が瞬き棍棒を伝っ
「あら!?」
ガウローリへと向かっていた稲妻が棍棒の持ち手に触れると消えてしまった。不思議そうに首をかしげるクロースにガウローリは鼻で笑う。
「フフフ!!! この棍棒が持ち手に巻いている布はな。魔界のパープルディアドラゴンの皮膚から作られている。稲妻も炎もこの布に防がれるのだ!」
勝ち誇った顔で叫ぶガウローリだった。ガウローリは目を見開いてるクロースが彼の言葉に愕然としていると思っているようだ。
「思い出しましたわ! あなた…… 前にも私の雷をこれで防ぎましたわよ…… ね!!!!!」
「なっ!?」
左手を払うように動かしたクロース、ガウローリの棍棒が横に弾かれた。ガウローリは右手を横に払われた姿勢になった。彼女は左手を動かしたのと同時に右手に持ったハルバードを前に突き出した。
クロースのハルバードは青白く光り出し、青い稲妻で出来た槍が勢いよくガウローリに伸びていった。槍はガウローリは右肩を貫くと稲妻がまた強烈に瞬く。グレン達はまぶしく目を背け、クロースは平然として瞬く稲妻に頬を白く照らされている。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
悲鳴をあげるガウローリの体は光っている。光はすぐに消え同時に稲妻の槍も消えていた。ガウローリは膝をついた姿勢で顔を地面に向けていた。彼の体からは蒸気のような白い煙がいくつも立ち昇り、足元には落とした棍棒が転がっていた。
「迅雷槍ですわ。稲妻を通さないなら通せるところに通すだけですわ……」
膝をついて苦痛に顔を歪めるガウローリに向かってつぶやくクロースだった。
「あなた以前もこれで負けましたわよね? いや…… それともあなたじゃなかったですか…… まぁいいですわ。ここで終わりですもの」
クロースは思い出そうとするのを諦め歩き出して前に出た。ガウローリはクロースが近づくとすっと顔をあげ悔しそうに彼女を睨んだ。
「クッ! クソオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
天を仰ぎ声をあげるガウローリは立ち上がる。クロースは足を止め彼を見上げている。
「こっこうなったら……」
左手を広げたガウローリの手に瓶が現れた瓶には、赤黒く銀色の粒が浮いているドロッとした液体が入っている。
「あれはイプラージ!!! いやでも…… 少し色が……」
ダグオンがガウローリが左に持った瓶を見てつぶやいている。グレンはガウローリの瓶を見てハッとして叫ぶ。
「クロース!」
「わかってますわ!」
走り出したクロースは飛び上がった彼女はガウローリが瓶の液体を使用する前に勝負を決めるつもりのようだ。
「あーーーん! パク!」
「なっ!?」
口を開けたガウローリは瓶を開けずにそのまま丸のみにした。驚くクロースにガウローリはニヤリと笑った。彼の体が強烈な光を放った。
「クッ!!」
ガウローリの体が白く強烈に光って紫色の煙が吹き出した。光と噴き出した煙で視界を遮れクロースは悔しがり下がって地上へと下りた。
光りと紫色の煙はガウローリを包み込みすぐに消えていく。おさまった煙の中からゆっくりとガウローリの姿が現れる。
「チッ!!」
「やっぱりあれはブラッドラベルですか…… 厄介ですね」
ガウローリの頭部以外が銀色へと変化していた。彼は自分の体を見つめ驚愕の表情を浮かべていた。
「おぉ! 全身が銀細工のように…… なるほどこれが噂の白銀兵ですか…… うーん…… ちょっと聞いていた話を違いますねぇ」
嬉しそうに話しをしているダグオンだった。横に立つララとラピはガウローリを見て嬉しそうにする彼を不思議な顔で見つめていた。
「おぉ! すばらしい!」
両手を胸の前で握る開くを繰り返しながらガウローリは満足そうにうなずいた。腰を落とした彼は右手をのばし棍棒を拾い上げる。
「ふーん。銀の体ですか…… 厄介ですわね」
ハルバードを再び構えたクロースは駆け出した。ガウローリは棍棒を大きく振り上げクロースに向かって叩きつける。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「クッ!!!」
棍棒が迫って来たクロースは横に飛んでかわした。空を切った棍棒が地面に叩きつけられ激しく砂埃が舞い上がる。
「一撃が先ほどよりも速く強い…… やはり厄介ですわね。でも…… まだ私にはかないませんですわよ」
着地したクロースは地面を蹴った。ガウローリの元へと一気に戻っていく。両手をあげたクロースは棍棒を叩きつけた太く大きな銀色の腕へハルバードを振り下した。
「うげ!!!」
クロースのハルバードはガウローリの右腕を切り落とした。地面に叩きつけた棍棒を握ったままガウローリの肘と手首のちょうど真ん中の部分が左右に揺れている。
上を向いた彼女の口が光っていく。飛び上がった彼女は靴が作り出す風の足場を蹴り、彼女はガウローリの背後に回り込みながら頭の近くまで上っていった。ガウローリの太く丸太のような首がクロースの目の前へとやってきた。
「はっ!!」
風の足場を蹴って取り上がったクロースは両手に力を込めると、ガウローリの首をジッと見つめた。
「終わりですわ!!!」
叫びながらクロースはガウローリの首をハルバードで斬りつけた。硬く重たい手ごたえが、クロースの両手に加わりハルバードはガウローリの首を斬りさいていく。
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
苦痛に顔を歪め声を上げるガウローリ、彼の首は斬り落とされ地面へと落下していった。クロースは前方へと飛んでガウローリから離れた場所に着地する。
「ふぅ……」
小さく息を吐いたクロースは左手でスカートの裾を叩き埃をはらい。背後に視線を向け首のないガウローリが動きが止まっているのを見て小さくうなずいて前を向いた。
「クロース! まだだ!!!」
「えっ!?」
グレンがクロースの背後を指して叫んだ。クロースは慌てて振り返るのだった。




