第419話 面白い話にご注意を
円形の茶色い石作り床に上にグレン達が立っている。直径二十メートルの円筒型の空間にグレン達は立っている。五メートルほど高さにある天井の中央にはバスケットボールほどの大きさの青い丸い宝石が輝いている。
グレン達が居るのは天井監視所に設置された魔導エレベーターだ。天井監視所に魔導エレベーターはなく各階層を調査し安全を確保した後に教会が設置している。
天井監視所の塔は最上階まで千以上の階層があると思われ、現在は三百階まで攻略が終わっている。クレアが言った通り魔導エレベーターは五十階ごとにしか安定して動かない。三百階まで魔導エレベーターで移動するには五十階ごとに乗り継ぐ必要がある。乗り継ぎの階層は中継階と呼ばれている。
魔導エレベーターの内をララが腕を組みながら左右に動いている。ギガンゴスで乗った魔導エレベーターと違い、壁に囲まれ景色が見えないので彼女は暇でつまらないようだ。
「うー! つまんない! グレン! なんか面白い話をしてよ」
「えぇ!? なんだよ。大人しくしてろ」
「なによ! グレンは使えないわね」
そっぽを向くララにグレンは不服そうに舌打ちをする。
「チッ…… 使えないだと……」
「すみません。ララちゃんは言葉が悪くて……」
ララの代わりにキティルがグレンに頭を下げている。ララは不服そうに二人を見つめている。グレンはキティルを見てニヤリと笑った。
「あっ! そうだ…… 魔法学校の話をしてくれよ」
「えっ!? なによそれ…… なんにも面白くないわよ…… 魔法学校なんか……」
魔法学校の話をしてくれと言われたララは驚き、不満げに口を尖らせてぶつくさと文句を言っている。グレンは彼女を見てまたニヤリと笑い視線をキティルに向けた。
「そうか? 誰かさんのやらかしとか面白そうだけど?」
「ちょっちょっと!? グレンさん!?」
グレンの言葉に慌てるキティルだった。ララは驚いてすぐに目を輝かせていく。
「えっ!? あぁ! あるわよ! たっくさん!!! えっとね…… まずは学校の噴水を……」
「まっ待って! ララちゃん! それはダメ!」
しゃべりだしたララの口を塞ごうと手を伸ばすキティルだった。ララは素早く反応し右手を上げた。
「無駄よ!」
ララが右手をあげると同時に彼女の口へと伸びて来たキティルの手が止まった。
「うっ動かない!? あっ足も!」
キティルの両手と体は大勢にしがみ掴まれたようになったビクとも動かなくなった。必死に動こうとするキティルに勝ち誇った笑みを浮かべる。
「どう? 私の千手念動力の威力は?」
「ずっずるいよ! 特殊能力を使うなんて!」
「ふふん。あんたも使えばいいのよ!」
悔しがるキティルを鼻で笑いララはグレンの元へと向かう。
「それでね。グレン! 聞いて」
「おう!」
手招きしてくるララにグレンは顔を横にして耳を向ける。ラピも彼の横でララの話を聞き耳を立てている。
「水魔法を間違えて噴水に水を融解スライムにしちゃって…… 噴水から飛び出したスライムがみんなの服が溶けちゃったのよ!」
「えっ!? それはなかなか…… えぐいな」
「阿鼻叫喚だべ……」
グレンとラピはララの話を聞いて驚いていた。二人が反応するのが楽しくなったのかララが話を続ける。
「そん時にキティルの服も溶けちゃって! その時は真っ白な下着だったんだけど…… 毛玉だらけで……」
「ちょっとララちゃん! もうやめて!!」
「そうそう…… それからあだ名が毛玉ちゃんに…… そういや…… あんたノウレッジに来たら色気づいたわね……」
「ララちゃん!!!」
恥ずかしそうに頬を赤くして必死に叫んで、ララを止めようとするキティルの目は涙がうかんでいる。クロースはキティルの様子を見てララに口を開く。
「ほら…… もう五十階につきますからおやめなさいな」
「そうですよ」
「なんだつまんない……」
つまらないと言って口を尖らせたララは右手をあげ下す仕草をする。キティルを押さえていた力がなくなり動けるようになった。
「うぅ…… キッ!」
しょんぼりとうつむいたキティルが顔をあげグレンを睨みつけた。彼女はゆっくりと彼に近づき眉間のシワを強く深くしていく。
「なっなんだよ…… そんなに睨むなよ!」
「はっ!? 当たり前ですよ! グレンさんがララちゃんを炊きつけたんじゃないですか!」
「俺はララに魔法学校の話を聞いただけだぜ? キティルのことを勝手に話したのはララだよ」
ニヤニヤと笑いながら近づくキティルにとぼけるグレンだった。
「なっなんだよ!?」
「こうなったらグレンさんに責任を取ってもらいますよ!」
「はぁ!? なんだよそれ…… おっおい!?」
クレアの視線が鋭くなった。キティルはグレンの右手を両手で握って自分の胸の前に持って行った。
「こっこの仕事が終わったら私と…… でっでっ…… デー……」
顔を真っ赤にして緊張しているのか声を震わせ何かを言おうとする。クレアの目はさらに鋭くなり、視線に気づいたグレンは顔をしかめていた。しかし、魔導エレベーターは無情にも停止しブザーが鳴って扉が開く。
「あっ…… 着いたな…… じゃ! 行こうか」
グレンはキティルの手を振りほどき右手を上げると振り返り去っていく。
「えっ!? あっ!? まっ待ってください! 私とデートを…… きゃっ! クックレアさん!? 邪魔ですよ!」
去っていくグレンを掴まえよう手を伸ばした、キティルの前にクレアすっと体を入れ阻止してきた。キティルの手はクレアの背中によって阻まれた。視線をキティルに向けクレアは勝ち誇った顔をしわざとらしく謝る。
「ごめんなさーい。あっ! グレンくーん。待ってー」
「えっ!? もう…… あぶねえだろ」
「えへへ」
「なっ! 待ってええええええ!」
クレアは甘い声を出してグレンを追いかけて彼の腕にしがみつき。嫌そうな顔をしながらグレンは彼女と腕を組んで歩き出した。キティルは驚愕の表情を浮かべ二人を慌てて追いかけていくのだった。
三人を見ていたラピが見つめて笑顔で口を開く。
「修羅場だべな。面白いべ」
「そうね…… グレンのどこが良いのかしら…… わからないわ…… でも確かに面白い」
「えぇ。本当に面白いですわね」
「「!!!」」
勢いよく振り向くララとラピだった。二人の背後にクロースが立っていてグレン達を見て楽しそうにほほ笑んでいた。
「ふふふ。さあ行きましょうか。私達も!」
クロースが二人を連れて魔導エレベーターから出て行った。魔導エレベーターからララが勢いよく飛び出した。
「とうちゃーく…… あっつい! あついわよ!!」
「ふええええ…… 外だべ……」
魔導エレベーターの外はセントリバリティ山脈の極寒ではなく、長い草が生えた温暖な平原が続いていた。草原に人の手が加えられており一部の草が刈られ道となっており、魔導エレベーターの周囲も草が刈られ地面が出ていた。
「さっさとコートを脱いだほうがいいぞ」
「うっうん……」
先に出ていたグレンたちは魔導エレベーターの前でコートを脱いでいた。ララとラピもクロースも同じようにコートを脱いた。クロースが何かに気づいて魔導エレベーターの扉の横に移動する。
「ここは…… カイノプス共和国のガイアス平原の夏の気候のようですわね」
魔導エレベーターの横に看板が立っており、この階層がどこの気候を再現しているか記載されている。
「ふーん…… そうなんだ……」
「あら!? カイノプス共和国はあなたの故郷ではありませんか? 懐かしくないのですか?」
グレンが興味なさげに返事をするのに首をかしげるクロースだった。グレンは顔をしかめて答える。
「俺はあんたらと違ってノウレッジに来る前はただの薬屋の息子だぞ。いくら同じ国にいてもさすがに遠い平原の気候なんか知るかよ」
「まぁそれはそうですわね。わたくしたちは世界を旅しましたけどグレンさんは違いますもんね」
クロースとクレアを手で指して答えるグレンだった。グレンは勇者として世界中を旅したクロースやクレアと違い、大陸に来る前はただの薬屋の息子で旅などしたことはない。彼の故郷とガイアス平原は離れており、いくら気候が再現されても言ったこと無い場所に懐かしさは感じることはないのだ。
「さて…… じゃあ行きましょうか…… 中継用の魔導エレベーターはあっちみたいです」
コートを畳んで腕に持ちクレアは草が刈られて出来た道を指して声をかける。そこには矢印と魔導エレベーターはこちらと記載されていた。グレン達は魔導エレベーターを目指した歩き出す。




