↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/13

誘魔鏖殺

「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!

ぜひよろしくお願いします!

「今度は右じゃ」

音域の高さに反して落ち着き払った声に、陰丸は慌てて後ろに飛び抜いた。

直後に、岩の拳が先ほどまで陰丸のいた場所を上から叩き潰す。大きな拳だ。普段通っている教室の半分ぐらいはあるだろう。

巨人の右腕が地面にクレーターを作り、重たい動きでふたたび持ち上がる。

陰丸は手に入れたばかりの黒剣を力なく握った。

―――こんなのと、どう戦えって言うんだ。

一振りの剣で、山のような巨体を、どうやったら倒せる。そもそもどうやったら倒れる?

逃げ惑うばかりで何もできない状況、遠からず体力が尽きて詰むであろう現状が、学園での自分の境遇と重なって歯ぎしりする。

日之出学園で実技最下位、それを五年。

自他ともに認める無能中の無能。季節が廻るたびに年下の先輩が増えていくような最低の現状。

廊下を歩けば馬鹿にされた。

石や水が顔に当たる感触は慣れっこだ。

―――それでも。

卒業ぐらいしたいと思っても、いいじゃないか。

「感傷に浸っているところ悪いんじゃけど」

 いつまで経っても振るわれないレイラが抗議するようにぶるりと震えて、それで陰丸は全力で地面を転がる。

 逃走路を追うような轟音にかき消されないように、全力で叫んだ。

「いま集中してるから黙ってくれ」

「そうは言ってもいい加減、暇なんじゃが。いつまで曲芸じみた回避を続けるつもりじゃ」

「潰されろっていうのか」

「そんなこと言っておらん。そもそも、私を携え得る力量がありながら、なぜあの程度の泥人形から逃げる」

「ロングソードなんて振ったことないからだよ!」

 なんだってこんなことを大声で晒さないといけないんだ。

 確かに、同時期に入学した者は、大体がそこそこの武器を持っている。だがそれは、あくまで普通の五回生は、だ。

 新入生がオリエンテーション用に使用する木製の短刀が、陰丸の唯一使える武器なのだ。一応、今も腰に巻いてはいるが、取り出したところでどうにかなる気もしない。

―――そもそも、あれが泥人形だって?

 不吉の象徴にしか見えなくなってきた黒剣が示す化け物は、今も陰丸を赤黒い染みにするために両腕を振り回している。

 打撃は一発一発が隕石のようだ。咆哮は物理的な圧力を持って体中を叩く。

 思わず、乾いた笑みが漏れた。

「……はは」

こんなの、どうしろっていうんだ。

ラリアットのように振るわれる剛腕を前に、陰丸は乾いた笑みを浮かべて、足を止めた。申し訳程度に剣は構えてみるが、とくに安心感は芽生えなかった。

「おい、主様!?」

レイラが初めて慌てたような声を発するが、もう遅い。

―――最後に、まともな武器を使えただけマシか。

スローモーションのように近づいてくる土色の壁を前に、陰丸は強く目をつぶった。


◇


とん、と軽い音が響いた。

いつまで経ってもやってこない衝撃に陰丸はそっと目を開ける。

「……………え」

ゴーレムの右腕が落ちていた。

半ば呆然として、岩の化け物を見上げた。切断面は頬擦りできそうなぐらい滑らかだった。

ド素人が、身を守るために構えただけでこの切れ味。

「……まじか」

「すごいじゃろ。今のうちに……」

「ああ」

思わぬ反撃を受けてゴーレムがひるむ。その数秒の間で、陰丸は背を向けて走り出した。

たまたま攻撃が通ったが、あんなもんに勝てるわけがない。

親父か、夜子か、とにかくどちらかに助けを求めないと。

などと思っていた陰丸の足が、止まる。

降りてきたらせん階段は、いつの間にか氷壁に阻まれていた。

「虚けめ」

ふわふわと浮かんだままのレイラが、呆れきった声を出す。

「手負いの敵に背を向ける道理がどこにある。弱ったら畳みかけるのが定石じゃろうが。ほれ見ろ、敵さん回復しおったぞ」

「嘘だろ」

振り向けば、失った右腕を氷で補完し、さらに歪な風貌となったゴーレムがこちらに近づいてきている。

「それにしても、腹立たしい泥人形じゃの。岩の体に、氷の術に、再生能力か。……いやはや不愉快なキメラじゃ」

のう主様、と世間話でもするように言われる。

「ひょっとして、戦闘経験が少ないのか?」

「さっきも言っただろ。魔物の類と戦ったことはないよ。まさしく初陣だ」

「そうか。……なら仕方ない、チュートリアルじゃ」

軽くため息をついて、漂っていたレイラが黒剣の中に消える。そして黒剣が震えた。

『詠唱は儂がする。主様はただ剣を横薙ぎに振れ。当てようと思うな、ただ振れ』

「はあ!? 当てるなってどういうことだ」

『早くしろ時間がない』

地を揺るがす足音が近づいてきて、臓腑が冷えていく。

目を模した顔面の空洞が妖しく輝き、陰丸は恐怖に押されるまま剣を握り締める。

その一振りは、剣技というよりはスイングに近かった。

同時に、黒剣が震える。

『誘魔鏖殺・フェイズ1』

スイングの軌跡をなぞるように、黒い粒子が発生した。

数百、数千、数万と、瞬く間に数を膨れ上がらせたそれは、剣先に引っ張られるようにして圧縮されて。

『ライトレイン』

直後、一斉に解放された。

黒い粒子は、まさしく霧雨のように、陰丸の前方を隙間なく埋め尽くす。

しかも威力がえげつない。防御のためだろう、咄嗟にゴーレムが出した氷壁をやすやすと貫いて、さらに本体をも抉り、貫き、蹂躙していく。

熱した鉄鍋に油を注いだような音は、しばらく鳴りやむことはなかった。

「一丁上がりじゃの」

黒剣から抜けたレイラが、自信満々に鼻を鳴らす。

「どうじゃ主様。ほんの一端じゃが、儂の力をわかってくれたかの?」

「…………いや、また再生してくるかもしれないし」

構えたままの陰丸だったが、その言葉の軽さは自分でもわかっていた。

技の余波による分厚い砂煙が晴れ、蜂の巣のようになったゴーレムの無惨な姿が露になる。

―――……強、すぎる。

穴だらけになり、自重を支えられなくなったゴーレムが断末魔を残して崩壊していくのをただ眺めていた。

「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!

ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。