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「どうしたら…凛子さんは僕のこと嫌いなんだろうか…」
凛子の婚約者、流川 夏彦は花壇に腰を降ろし、独り言を呟いた。
「——何か悩み事か?聞いたるで」
「良いんですか?くだらない話ですよ」
夏彦は切羽詰まっていた。悩みを聞いてくれるなら誰でも良かった。急に声をかけてきた無愛想な男に話す程に。
「お菓子あげるわ。ゆっくり話し」
男は小さな異国の菓子を渡す。夏彦は困惑しながら受け取る。男なりの気遣いだろうか?夏彦は少し間を置いて本題を話す。
「…僕、もうすぐ結婚するんです。婚約者とはお見合いで知り合いました。とっても綺麗な方で僕にはもったいないんです」
男は夏彦の横に腰をかける。男からは婚約者と同じ香水の匂いが香った。悩みの末おかしくなってしまったんだろうか。夏彦は乾いた笑みを浮かべた。
「……」
「…その、前まではよく花を渡していたんです。そしたら、飛び跳ねるほどすごく喜んでくれて。でも、最近は喜んではくれるのですが、前より反応が悪いと言いますか。それで渡すのを辞めたてしまったんです」
夏彦の頭には夏彦さん!ありがとうございますわ!と向日葵のような笑顔で微笑む凛子の姿が思い浮かぶ。
「もう嫌われちゃったんですかね…僕、なにかしちゃったんですかね…」
「心当たりでもあるんか?」
男はそう言いながら、そっと、今にも泣き出しそうな夏彦にハンカチを差し出す。
「ありがとうございますぅぅ…でもぉ、心当たりなんてぇ、ありませんよぉ…だから、わからないんです」
「言わなきゃ分からないだろう。正直に話したことはあるのか?」
男の言葉は冷たく聞こえるが、夏彦の心にはしっかりと届く言葉であった。夏彦はハッとした。
「……ありません。で、でも、形で示しましたよ。贈り物して、お花をあげて…」
「わからないな」
「…っ、わかりませんか…そうか、じゃあ、僕が悪かったんだ…」
涙を流し始めた夏彦に男はそっとお菓子を渡す。夏彦はその優しさにさらに涙を流す。その様子を見て、男は困惑し始めた。
「…!?えっと…」
男が慰めないとと、何かかける言葉を探しているうちに夏彦の思考は整理されていた。夏彦は涙の跡が残る顔に満面の笑みを浮かべて男に声をかける。
「ありがとうございました!僕、凛子さんと話してきます!」
男は夏彦に追加で2つお菓子を握らせた。彼なりの応援のようだ。夏彦は凛子の屋敷まで走り出した。
「———あっ」
名前を聞き忘れたと、後ろを振り向いた時には男はもう居なくなってしまっていた。




