↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七夕屋堺本店  作者: 夜宵
PR
4/5

✧︎ ✧︎ ✧︎

「どうしたら…凛子さんは僕のこと嫌いなんだろうか…」

 凛子の婚約者、流川 夏彦(るかわ なつひこ)は花壇に腰を降ろし、独り言を呟いた。

「——何か悩み事か?聞いたるで」

「良いんですか?くだらない話ですよ」

 夏彦は切羽詰まっていた。悩みを聞いてくれるなら誰でも良かった。急に声をかけてきた無愛想な男に話す程に。

「お菓子あげるわ。ゆっくり話し」

 男は小さな異国の菓子を渡す。夏彦は困惑しながら受け取る。男なりの気遣いだろうか?夏彦は少し間を置いて本題を話す。

「…僕、もうすぐ結婚するんです。婚約者とはお見合いで知り合いました。とっても綺麗な方で僕にはもったいないんです」

 男は夏彦の横に腰をかける。男からは婚約者と同じ香水の匂いが香った。悩みの末おかしくなってしまったんだろうか。夏彦は乾いた笑みを浮かべた。

「……」

「…その、前まではよく花を渡していたんです。そしたら、飛び跳ねるほどすごく喜んでくれて。でも、最近は喜んではくれるのですが、前より反応が悪いと言いますか。それで渡すのを辞めたてしまったんです」

 夏彦の頭には夏彦さん!ありがとうございますわ!と向日葵のような笑顔で微笑む凛子の姿が思い浮かぶ。

「もう嫌われちゃったんですかね…僕、なにかしちゃったんですかね…」

「心当たりでもあるんか?」

 男はそう言いながら、そっと、今にも泣き出しそうな夏彦にハンカチを差し出す。

「ありがとうございますぅぅ…でもぉ、心当たりなんてぇ、ありませんよぉ…だから、わからないんです」

「言わなきゃ分からないだろう。正直に話したことはあるのか?」

 男の言葉は冷たく聞こえるが、夏彦の心にはしっかりと届く言葉であった。夏彦はハッとした。

「……ありません。で、でも、形で示しましたよ。贈り物して、お花をあげて…」

「わからないな」

「…っ、わかりませんか…そうか、じゃあ、僕が悪かったんだ…」

 涙を流し始めた夏彦に男はそっとお菓子を渡す。夏彦はその優しさにさらに涙を流す。その様子を見て、男は困惑し始めた。

「…!?えっと…」

 男が慰めないとと、何かかける言葉を探しているうちに夏彦の思考は整理されていた。夏彦は涙の跡が残る顔に満面の笑みを浮かべて男に声をかける。

「ありがとうございました!僕、凛子さんと話してきます!」

 男は夏彦に追加で2つお菓子を握らせた。彼なりの応援のようだ。夏彦は凛子の屋敷まで走り出した。

「———あっ」

 名前を聞き忘れたと、後ろを振り向いた時には男はもう居なくなってしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。