#9.同業の子達
睨み合うリナ・玲奈と杏・凛
「いやぁ~、しかしマゾ狩りって簡単だし、たまに変なのはいるけど
ちゃんと対策してるし、何だか意外とアタシらって生きていけるよね。」
「本当、不思議なくらいやっていけてるよね。
手持ちのお金も殆ど減って無いし。
まぁ何より、リナと上手くやれてるって言うのもあるわよ。」
「アハハ!
ホラ、アタシって頭はそんな玲奈ほど賢くないかもだけどさ、
性格は最強だから!!
ま、何より綾ちゃんとの出会いが良かったよね。
アレが無かったら結局身体売ってたかも知れないワケだしさ。」
「そうよね、マゾ狩りなんて綾さんに言われなきゃ思い付かなかったわ。」
「しかも全ての男はマゾだって話、アタシ感動しちゃったよ!
要するに誰でもお小遣い要因になるって事でしょ?
そんなの・・・街全体がアタシらの味方みたいなモンじゃん。
何かもう、超ヨユーって感じだよね?」
「うん、今は本当に上手く回ってると思う。
だけど・・・一つでも何か上手く回らなくなったら・・・、
いや、考えないようにしよう。今はちゃんとやれてるんだし。」
「大丈夫大丈夫、最強のリナちゃんが付いてるんだから、
上手く行くさー!!」
こうして二人は特に大きな問題の無い現状に甘んじながら
その裏にある脆さについてを少し感じながらもそこから目を逸らしていた。
しかし、崩壊の足音は確実に近づいていた。
~駅前裏口~
リナと玲奈が主なマゾ狩り場として使用しているターミナル駅の
その裏口側で同じような活動をしていた二人組がいた。
「やった~、またマチアプでマゾ拾った~、ちょろいよね~。」
ピンクの衣装に身を包んだ、地雷系とも量産系とも取れる少女、姫川凛。
甘くロリータすら感じさせる外見だが内側はドス黒い計算が渦巻いている。
「やったじゃん、凛。今日はアタシが行こうか?
アンタ二連続でマゾの相手してるし、疲れてるっしょ?」
パンクファッションに身を包んだ見るからに強気な少女、鬼嶋杏。
その強気さとは裏腹に仲間に対する愛情は殊更に強い。
「てかさー、この前狩ったマゾから聞いたんだけどさー」
「ん、何?」
「何か駅の向こう側でマゾ狩りしてる子達いるっぽいんだよねー」
「え、何ソレ、アタシらと超被ってんじゃん」
「そーなんだよー。ちょっとさー、ヤキ入れに行かない?」
「そうだね。あんま気持ちの良いモンじゃないし、
アタシらの島を荒らされてる気分だわ。
後から入って来た新参者は身体でも売ってろって感じだわ。」
こうして姫川凛と鬼嶋杏はリナ達を探し始めた。
~駅前表口~
「あ、アレじゃないー?
二人とも制服だー、JKブランドで釣ってるのかな?」
「ちょっとアタシが行ってメンチ切って来てやるよ。」
杏はリナ達の元へと近づいて声を掛けた。
「ちょっとアンタらさー」
それにリナが応じる。
杏の声色が強気な非難の感情を込めていた為、警戒して返事をする。
「ん、何?」
「マゾ狩りやってんのー?
最近マゾ釣れない日があると思ったら、
こんな素人が荒らしてたとはね。」
「ハ?いや別にアンタらだけの狩場じゃないでしょ、ココは。」
「いやいや、ウチらずっとここでやって来たんだよー。
それを初めてまだ数か月のヤツらに荒らされたら困るんだワ~」
「何?
だったら他の駅行けってか?
ヤだよ、ここホテルとかもいっぱいあって便利だし。」
「いやいやいやいや、お互いに距離近すぎんのはデメリットじゃん?
それぞれに棲み分けする事で傷付け合わずに済むワケ。
ドゥーユーアンダースタン?」
杏のバカにしたような態度にリナがキレる。
「あ”ぁ!?
だったらマゾ取られないように今まで以上に頑張れば良いじゃん!
いくら言われてもアタシ達、ここを離れる気は無いから!」
そこへ姫川凛が割って入った。
「う~ん、コレはあまり使いたくない手だったけどさ、
狩ったマゾ達に貴女達の悪い情報をバラ撒いちゃうね?」
その強行的なやり方に玲奈がカチンと来て反応する。
「ハァ!?
貴女達、モラルってものが無いの!?
そんなやり方、何でもアリだったらこちらもやり返すわよ?
そんな事したらお互いに損なんじゃないかしら!?」
杏が更にヒートアップする。
「何だよ、アンタはキッチリ制服着て良いとこのお嬢さんか?
そーゆー売り方、弱い男が好きな弱い女子を演じてるとことか、
キモ過ぎん?」
もはや収拾が付かなくなる程にケンカはヒートアップした。
お互いに暴力は最終手段として舌戦を心掛けてはいるが、
いつ手が出てしまってもおかしくない状況だ。
「大体さー、制服とかズル過ぎんだろ、清楚?コスプレ?
そんなモンで釣ってる間は二流以下の三流四流五流、
その程度の意識のヤツらにアタシらの狩場荒らされたくないんだよね。」
いよいよリナが手を出そうとした時、4人の間に割って入る人物がいた。
それは、黒川綾だった。
「あら、リナと玲奈、久しぶり。
そっちは・・・凛と杏かしら?
貴女達も久しぶりね。」
リナと玲奈は驚いた。
綾は二人と知り合いなのか!?
「あ、綾さん、チーっす。
今日も妖艶な美魔女っスね。いや、美魔女って程年食ってねーか。
綾さん、コイツらと知り合いなんスか?」
「知り合いも何も、彼女達にマゾ狩りを勧めたのはアタシよ。
アンタ達に教えたみたいにね。」
何と綾は、リナ達の前に凛と杏にもマゾ狩りを教えていたと言うのだ。
玲奈が驚いて聞いた。
「え、綾さんこの二人にもマゾ狩りを教えてたんですか?
だけど確かにマゾ狩りなんて自ら中々思いつかないですよね。」
「他にも教えた子達は居たんだけどね、皆、マゾが気持ち悪いって、
辞めて行っちゃうのよね。それとかバイトを始めてみたり、
仕事を始めたり彼氏と暮らし始めたりして、それぞれの事情で
マゾ狩りを辞めて行くのよ。」
怒りがまだ少し治まっていない様子のリナが言う。
「なるほど、じゃあ長い事マゾ狩りを続けてるコイツらは、
そういう他の事に身を振る事も無くマゾ狩りしか出来ない
出来損ないって事か。」
凛と杏がリナを睨みつける。
「こぉ~ら、そんな風に言わないの、リナ。
この子達は親の虐待とかイジめ裏切りで傷付いていてね、
とても見ていられなかったのよ。
せめて、二人で強く生きて行くキッカケをあげたかったの。」
玲奈がボソリと言う。
「そっか、可哀そうな、・・・子達なんだ。」
しかし凛が怒ってそれを否定する。
「あ、可哀そうとか、そんな事思わないでよね!!
私達、自分達の事をそんな風に思った事なんて無いんだから。
むしろ杏と出会えて本当に良かったと思ってるし、
綾ちゃんに付いても会えて良かったし、マゾ達は従順だし。」
その言葉に玲奈が反応する。
「そっか・・・私も、リナと会えて良かったと思ってる。
そこん所は、私達一緒だよね。」
凛が少し照れた風に、しかし表面上は怒りながら応える。
「だ~か~ら~、貴女達なんかと一緒にされたくないんだってば~」
ようやくこの場の空気が争いからじゃれあいのように変わった。
綾が続ける。
「リナ達が運が良いのは、まだこの街の本物の怖さに会ってない事ね。
強面で黒服の男性達に目を付けられて売られそうになったり、
別にその筋の人達で無くても可愛い女の子達なんて餌食だからね、
貴女達は本当に幸運なのよ。凛と杏はそういう修羅場も潜ってるわ。」
凛が少し表情を暗くして言った。
「そうだね、私達、色んな経験して来たよ。
と言ってもまだ数えるほどの年数だけどね。
この手の傷、リスカじゃないんだよ、
逃げようとして腕掴まれてナイフで切られたの。」
瞬間、リナと玲奈の顔が真剣なものに変わった。
杏が言う。
「ま、こんなだからさ、アタシ達は支え合って生きて来たワケさ。
本当ならせかっくの狩場を荒らされたくないけどさ、
何ならアタシ達と同盟組む?制服組としてキャラは被らないし、
まぁ上手くやって行ければそれが一番だと思うし。」
リナが少し不服そうに頬を膨らませながら答える。
「・・・・・・・・・組む。
アタシ達だって、正直二人じゃ不安もあるにはあるし。
良いよね、玲奈?」
「もちろんよ。夜の街に私達みたいな若い女はあまりに無防備だもの。
ベッタリ一緒にいるワケじゃなくて定期的に連絡取ったりしながら
お互いにwin-winな関係になる事なら、大歓迎よ。」
綾がこれをまとめ上げる。
「さ、そうと決まればアンタ達、焼肉パーティーでもして来たら?
あ、今日は特別アタシがお金出してあげるわ。
通い始めた会社でボーナスが出てね、大人の余裕ってヤツよ。」
その時、玲奈がボソリと言った。
「綾さんも来て欲しいな。綾さんの事、あまり知らないし知りたい。
なによりお金だけ貰ってバイバイより、一緒に楽しもうよ。」
「アラ、そんなつもりじゃ無かったんだけど・・・ま、良いか。
よし、皆、アタシに付いて来なさい!
ただしお酒はダメだから、ってアレ?凛と杏はもう行けるんだっけ?」
「ストゼロ飲んでまーすv」
リナが驚く。
「え、あ、アタシらよりも年上だったんだ!?」
杏が応える。
「ま、ココらの年齢って正直あんま変わんなくね?
だから、アンタらの年齢の頃は悶々としてたよ。
もうさすがに飲んでも良くね?ってさ。」
「マジか・・・先輩、チ~ッス!!
よくわかってくれてますね(笑)」
そんな冗談を言い合いながら、店に着く前に4人は既に少しずつ
仲良くなりつつあった。
そして綾のお勧めの焼き肉屋に到着した。
ここで玲奈達は綾の過去についてを聞く事が出来るのか、
それとも場の雰囲気に流されて聞けずに終わってしまうのか。
店内は賑やかな様子で、夜の街の持つ多様性を示していた。




