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#58.マゾ神と反マゾ神

挿絵(By みてみん)

マゾ神と反マゾ神



マゾ神は、元は綾達と同じ普通の人間の女性だった。

いや、今でもそうなのかも知れない。

しかし、綾が街に出て安全な稼ぎ方をしようと考えている時に

マゾ神に出会い、師事した事からマゾ狩りの系譜が始まった。


しかしマゾ神自身については非常に謎が多い。

従者のリリスでさえその全てを知っているワケでは無い。

それでも今回、マゾ狩り女子達の危機に助けに入るのは

彼女なりにそれなりの理由がある。


マゾ神はマゾこそが世界を救うと考えていた。

その為、彼らを狩りながらも愛し慈しみ、全てを与えた。


彼女にとってマゾの居ない世界など死んだも同然だった。

そんな彼女であるから、今回の反マゾ団体の騒動には、たとえ

マゾ狩り女子側の人数が揃っていたとしても首を突っ込んでいただろう。

そして彼女の相手は同じく、反マゾ団体で最も実力のある最強のメンバー。

各団体の二人はそれぞれに、環状13駅の【最果駅】に配置された。


「ここか。...ずいぶんと殺風景な所じゃないか。

 一体どんなヤツなんだろうねぇ、最強の反マゾ団体のメンバーは。」


その時、電車の陰からゴシックな服装に身を包んだ少女が現れた。


『あなたね、マゾ狩り女子達の中でトップの実力者。

 こちらも相応の相手として私が配置されたわ。

 他の12人の戦いなんて私達からしたら単なるお遊びよ。

 マゾは滅ぼすべきか守るべきか、ここで決着を付けましょう。』


その小さな体躯からは似つかわしくないほどのオーラが漏れている。

この少女の相手はマゾ神でなければ務まらないだろう。


「貴様、名は?」


『反マゾ神。命名の理由は貴女と同じよ。あまりに圧倒的過ぎたの。』


「ほぅ、面白い。」


マゾ神は先手必勝とばかりに反マゾ神に襲い掛かろうとした。

しかし間髪入れず反マゾ神はバリアを張った。


「なるほど、敵に不足無しと言う事か…。

 それにしても圧倒的な力だ。私でもコレは破れんぞ。」


『嘘ばっかり。貴女相当強いでしょ。こんなバリア、破れるんじゃない?』


「フン、破れるには破れるが、疲れるからのぉ!!」


そう言うとマゾ神はバリアを破り、瞬間で反マゾ神の後ろに回り込んだ。


「ダァ!!」


マゾ神は肘打ちをしようと攻撃したが、反マゾ神がそれを杖で受けた。


『やっぱり、油断大敵ね。他の12人とはレベルが違う。』


「お前もだな、…当然互いに無傷では終われない戦いと言うわけだ。」


『そうかしら?私は無傷で帰るつもりだけど。』


そう言うと反マゾ神は杖を掲げて何やら祈り始めた。


「…?何をしておるのだ。何やら良からぬ事を…」


すると突然空が暗くなり、そこから数多のマゾ達が落ちて来た。


『うわわわぁ~!!』


落ちて来たマゾ達は骨折して死んでしまう者、かろうじて助かる者、

落ちて早々臨戦態勢な者、様々居たが、皆一様にどこかおかしかった。


「な、何なのだこのマゾ達は!!

 貴様まさか、マゾを使って何か良からぬ事をしておるのか!?」


『フフ、ハイブリッド・マゾだよ。

 マゾ達の遺伝子にあらゆる生き物の遺伝子を混ぜ組み合わせる。

 そうするだけでこの子達、とっても良い子になるのよ。

 さぁ、貴女にとって可愛いマゾ達を倒す事が出来るかしら?』


マゾ神の元に無数のマゾ達が向かって来て襲おうとしている。


「お、おい!何だコレは、マゾ達の意識とは無関係に動いている…!!

 これではうかつに攻撃が出来んでは無いか!

 下手に攻撃して殺してしまっては本末転倒だ…」


『フフ、さすがはトップね。冷静な判断はさすがだわ。

 でも逃げ回るばかりじゃあマゾ達は減らないわよ。

 マゾ達からお仕置き調教させようかしら?』


反マゾ神は余裕の表情のままマゾ達を操った。

しかし、マゾ神はやれやれと言った風に頭を掻いた。


「う~ん、仕方ないのぅ。

 そっちがその気なら、こちらも本気で向かわんとかのぅ。

 【マゾ・招来!!】」


マゾ神が片足立ちをして両手をパンッと合わせると、

どこからともなく何かが近づく音が聞こえて来た。


そして少し時間が経つとそれは圧倒的な数のマゾ達だった。


『な、何よコレは!?』


「ふん、マゾ神と呼ばれるからには飼いマゾくらいおるわい。

 ハイブリッド・マゾとか言うのの、優に10倍以上はおるぞ?」


『クッ、遺伝子操作もされていない野良マゾなんて、

 ハイブリッド・マゾの敵じゃないわよ。

 行きなさい、お前達!!』


こうして、野良マゾとハイブリッド・マゾの合戦が始まった。

ハイブリッド・マゾの中には常人には無い強靭な力や思考力、

様々な特殊能力と言うべきものを持つ者達もいたが、全てでは無かった。

何よりも野良マゾの数は圧倒的であった。

時間と共にハイブリッド・マゾは数を減らし劣勢となった。


『ク、こんな事ならもっとハイブリマゾを作っておくべきだったわ。

 仕方ないから、私が直接手を下してあげる。』


「そんな事をさせると思うのか?

 ウチの子達に手を出したいなら、まずはアタシを倒してからにしな?」


『この…!!

 マゾ・ゾーラ!!』


反マゾ神の手から黒い塊が打ち放たれる。

コレはどうやら対マゾ用に作られた攻撃魔法のようだ。


「フン、そんなマゾ向けの技は通用せんぞ。

 あまりにマゾに特化し過ぎて通常戦闘用の技をおろそかにしたか。」


『そんな事言って、アンタはどうなのよ。

 アンタだってどうせ、対マゾ用の技しか無いでしょ!』


「ふ、対マゾに対しては愛を持って弄るだけの事。

 技等は必要無い。ましてや攻撃魔法などいらぬ。

 そんな事よりも可愛い我が子達を狙う貴様のような輩の為に

 攻撃魔法はあるのだよ。」


『ハッタリよ!

 マゾ飼育をしながら一般魔法の勉強もなんて、どれだけ手広いのよ!』


「天才じゃからのぅ。

 それでは行くぞ、アブソリュート・ゼロ!!」


━!?━


黒い渦の中に紫の筋が走っている大きな煙が反マゾ神を包む。


「それに包まれると全てに対するやる気が失われる。

 戦意喪失してしまえば実質的にこちらの勝ちじゃ。」


━シュウゥゥゥゥ~━


反マゾ神を包む黒い煙はやがて霧のようになり、そして晴れて行く。


『・・・。』


「やる気を失ったか。勝負あったな。」


『・・・けんじゃないわよ。

 ふざけんじゃないわよ、このマゾ狂い!!』


反マゾ神は持てる力の全てを放ち魔力に変えようとした。

しかし彼女が持つ技は全てマゾ向けのものであり、

マゾ神に対抗する術が無いと悟るとうなだれてしまった。


『ク・・・悔しいけど、完敗よ。

 後はもう好きにしなさい。

 壊した建物については私達全員でちゃんと補償するわよ。』


「フン、呆気なかったの。

 もう少し長引くかと思ったのだが。」


『ハイブリッド・マゾの研究がもう少し進んでいればね。

 本当に強いマゾが出来そうだったのよ。

 純粋で受動的なマゾは器にピッタリだったのよ。』


「ハイブリッド・マゾ・・・。それは本当に禁忌の技術だな。

 被害が拡大する前に防げて良かった。

 マゾは素材なんかじゃない。彼らはペットだ。」


『愛があるようで随分と上から目線なのね。

 ペットだなんて、完全に下に見てるじゃないの。』


「ん、知らんのか?ペットは家族だぞ?」


『フン、アンタとこれ以上話す事は無いわよ。』


そう言うと反マゾ神はいそいそと駅のホーム階段を降りた。


「まぁ、マゾ召喚をしなければヤバかったな。

 あの技自体、初めて使った。言わなかったが、

 今回は実はかなりピンチだったと言わざるを得ないな。」


こうして各団体のトップ同士の戦いは思ったよりも早く終了した。

しかし、一抹の不安も残った。


もし、ハイブリッド・マゾの技術が外に漏れていたら。

マゾが純粋な入れ物である事は疑いようの無い事実である。

そこに目を付けて研究した彼女達は危険な存在だった。


そして反マゾ団体はある場所へ集合していた。


「やっぱり、今回はダメだったか。」


「だが、勝てない相手では無いと感じた。」


「再び形を変えてまた、挑戦するか。」


彼ら・彼女らの戦意と野望は決して潰えていなかった。

そしてその事はマゾ神も理解していた。



~【マゾ狩り女子会反省会】~


マゾ狩り女子会のメンバー達は、壊された建物跡地に集合していた。


リナが疲れた身体を投げ出しながら言った。


「あー、結局アタシらの全勝か~!!

 まぁ色々とギリギリな戦いとかもあったと思うけど、

 とにかくおめ。やっぱアタシらは強いよね。」


玲奈がリナの言葉に続ける。


「だけど、いつものように複数でお互いをカバーし合うんじゃなくて

 1対1に持ち込まれたら結構キツい戦いもあったはずよ。

 今後、私達を狙う者が現れた時に犠牲は出したくないわ。

 それぞれに自分の強みを認識して、それを伸ばしたいわね。」


しかし、杏はそれらの意見よりも享楽的だった。


「そんな事よりさ、せっかく皆勝ったんだぜ。

 パーティーしようぜ!ピザ・寿司・クロワッサンで!!」


ネオンがツッコむ。


「え、ピザ・寿司はわかるけど、何でクロワッサン?

 もしかして、好きなの?」


凛が杏の代わりに答える。


「パートナーだからよく知ってるけど、杏ってクロワッサンなら

 30個は食べられるくらいに大好きだよ。」


彩名がそれを聞いてからかう。


「え~、いつもはあんなに強気なクセに、意外~w」


綾が全員を労う。


「まぁでも、これだけのメンバーが全員揃っていたから勝てたのよね。

 誰か一人でも欠けていたら、結果はまた違っていたと思うわ。」


それを受けてマゾ神が続ける。


「それは確かにな。あやつらも決して弱くは無かった。

 人数が揃っていなければ1対2の勝負もあったろう。

 そうすると一気に戦況は厳しくなったはずだ。」


沙織は自信なさげに言う。


「私なんかが一勝出来たのは本当に奇跡だよ~、皆凄いんだね~。」


エリカもそれに同調する。


「私もだよ~、何で勝てたのかわかってない、…かも。」


リリスがパーティーの準備をしながらそれに応える。


「ま、結果が全てでしょ。どんな形であれ勝てば正義よ。

 それに向こうだって全員が全員強いワケじゃないでしょ。」


りおんが粛々と進められている準備にツッコむ。


「って言うか、本当にパーティーするの!?」


イブがそれを微笑みながら言う。


「ま、たまにはこういうのも良いんじゃないかしら?

 さぁ、誰が乾杯をしてくれるのかしら。」


リナがグラスを持ち、高らかに宣言した。


「それじゃあマゾ狩り女子会の皆、カンパーイ!!!!」



※第三章と言う区切りがあるとしたら、ここで一旦完です。

 引き続き、マゾ狩り暮らしの二人を宜しくお願いします。

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