#46.マゾを愛する者
「どうだぁ!?
マゾオスを愛する女なんて居るワケが無いよなぁ!?
だってお前らメスと言う生き物は結局、
頼り甲斐のある強いオスを求めるもんなぁ。
そういう世間の風潮に逆らったフリをして一旦マゾを娶っても
結局目の前に強いオスの臭い棒を出されたらフェロモンにやられる。
お前らメスなんて、そんなモンなんだよぉ!!」
マゾ霊王は自身の歪んだジェンダリズムを語った。
しかしリナはそれを否定はしなかった。
~リナ回想シーン~
「私はマゾな男性でも構わないわ。
この子の教育上問題が無ければ、貴方の性癖は受け入れるから。」
それはリナの母親と父親の一幕だった。
しかし母親はヨガ教室で圧倒的強者の男に出会ってしまう。
「奥さん、そんなマゾ男より、オレの方が良いでしょう?」
母親はメスの本能に逆らえなかった。
幼いリナはそれを見てしまっていた。
隣には更に幼い沙織が、ベビーカーから笑って見ていた。
~回想終了~
「アタシはあの日、知ってしまったんだ。
結局はマゾでも良いとか言いながらもアタシ達女は、
マゾを本気で選ぶ事は無いんだ。
ごめん、ごめんね、マゾ霊王…アンタ達はやっぱり、選ばれないのよ…」
リナの目には涙が浮かび、ついには顔を俯け、頬を涙が伝った。
「ごめん...マゾを受け入れる社会なんて唱えながらも
結局はそんなの無かった。
いつまで経ってもあなた達は報われないね、かわいそう…。」
その瞬間、リナの目の色が漆黒に変色した。
リナは時折こうして闇堕ちしてしまう。
それはあの過去がそうさせるのだろうか。
ネオンやりおんを殺人未遂まで追い込み執行猶予中である事も、
彼女の衝動性を伺い知る事が出来る。
「だから、だから全てのマゾ達を…アタシが・・・」
そこでリナは押し黙ってしまった。
周囲の全員がゴクリと息を呑んだ。
【・・・殺してあげる!!】
突然リナが周囲のマゾ達に野生児のように飛び掛かった。
するといとも簡単にマゾの首を捻り殺してしまった。
杏が凛に叫ぶ。
「凛!玲奈を安全な所へ!!
アイツ完全にイっちまってやがる!!
アタシが何とか出来るワケじゃないけど、
このまま放っておく事も出来ないよ!!」
しかしそれをマゾ霊王が阻止する。
「お前達の相手はオレだろう?
目の前の現実から逃げるな。」
「クッ、こんな時にお前みたいなとんでもないヤツの相手なんか…
クソッ、あまりにコチラ側の戦力が足りない!!」
その時、何者かが杏のすぐ隣に飛び降りて来た。
この街一番の高さの展望塔からマゾ神とリリスがやって来たのだ。
「このマゾ霊王とか言う厄介なヤツはアタシが何とかしておいてやる。
杏、お前はリナを何とかしろ。とは言ってもアレは…完全に野生、
いや何かが”憑りついている”ように思えるな。」
杏はマゾ神に礼を言い、リナの元へと向かった。
既にリナは物凄い勢いでマゾ達を殺してしまっていた。
「リナ!!
お前そんな事して、もしまた意識が戻ったら、今度こそ実刑だぞ!!
いや、今回は…確実に【死刑】だ。
そんな事したらもう、玲奈と会えなくなるんだぞ!?」
しかしリナは聞く耳を持たず、マゾを殺し続けていた。
「クソッ、アタシが言ってもダメなのかよ!!
一体どうすれば…ハッ、玲奈の言葉なら聞くか?」
しかし玲奈は今、凛が安静な場所へと移したばかりで
先程のマゾ霊王との戦いの中で意識が薄らいでいる。
(クッ、今の玲奈にリナの自我を取り戻させる程の力があるのか?
だけどこのままリナを放っておいたら…!!)
そこへ、玲奈では無い一人の人物がリナの近くに行き声を掛けた。
「お姉ちゃん!!」
それは、リナの妹、沙織であった。
リナは沙織を一瞬キッと睨んだが、すぐにその表情に迷いが現れた。
「お姉ちゃん…確かにマゾはどうしようも無く救えないよ。
殺してあげるのが一番優しいのかも知れない…。
だけど、それでも…私はマゾを殺す事が一番良いとは思わないよ。
マゾを愛する人が居ないのなら、お姉ちゃんがマゾを愛すれば良い!!」
・・・・・!!
その言葉を聞いた瞬間、リナの目の色が元に戻った。
「さ・・・おり・・・・。アタシ、何て事を・・・。」
リナは呆然として、ただそこに立ち尽くしていた。
「お姉ちゃん…死んじゃったマゾの人達は皆で黙ってるから。
だから、ねぇ。マゾを殺してあげる優しさじゃなくて、
愛してあげる優しさをあげようよ、ねぇ?」
リナは一分間ほど表情を変えずに悄然としていた。
そしてやがて大粒の涙が零れ、沙織に抱き着いた。
「沙織!!アタシ、アタシ!!
マゾを救ってあげたいんだ!!
どうしようもなく、あの時パパを救えなかった!!
ママと同じ”女”って言う生き物である事が、
どうしようもなく気持ち悪かった!!
どうしてただマゾであるだけで気持ち悪がられるのか、
学校の人権の授業だって不思議だった。
だってどこにもマゾの権利なんて書いてなくて。
だけど昼休みにはマゾ男子達はイジめられてた。
マゾにだって、生きる権利、幸せになる権利、
愛される権利があるはずだよ!!!!
アタシはただ、それを取り戻してあげたいんだよ!!!!」
リナはただひたすらに泣き続けた。
沙織はただそれをギュッと抱きしめ続けていた。
街には雨が降り始めた。
雨は全てを洗い流しながら、マゾ達の精〇液を洗い流した。
そして涙も血も、全てを流しているようだった。
一方で、マゾ霊王の前にはマゾ神が立ちはだかっていた。
「アタシは手を下すつもりは無かったんだけどねぇ。
今回はちょっと事情が変わったんだ。
アンタ、少しやり過ぎたみたいだよ。
マゾのクセに攻撃的過ぎるんだ。
もっと大人しくしてれば良いんだよ、アンタはマゾなんだから。」
マゾ神は大きな体躯のマゾ霊王の後ろに回り込み、
その尻から霊具を差し込んだ。
そしてそれは霊力により奥へと伸びて行き、前立腺を刺激した。
『のっほぉぉぉぉぉ~!!!???』
とんでもなく情けない嬌声をあげて、マゾ霊王が喜んだ。
「フンッ、結局はマゾだねぇ。メスイキしたら抵抗も出来ないのかい?」
マゾ霊王はただ、ひたすらに快感に身を任せていた。
不定期な動きで霊具が前立腺の【一番イイ所】を突く。
その度にマゾ霊王は至上の喜びを感じて顔が緩み切ってしまう。
やがては快感により気絶してしまった。
「ふぅ、まぁこんなモンかね。
本当ならあの子達にやらせてあげたかったんだけど、
まぁ今回は貸しって事で良いかな。」
こうして、マゾ霊王の対応はマゾ神が見事に遂げてしまった。
そうしてやがてマゾ処理班に回されていたマゾ狩り女子達も戻り、
事態は犠牲を払いはしたが、国が動くほどまでには至らず、
不幸中の幸いといった規模の事件で終える事が出来た。
リナがマゾ神やマゾ狩り女子達の前で独白した。
「マゾ達は…ただ愛されたいだけなんだと思う。
でもアタシ達の仲間の女の中には、マゾの事を金としか見てない奴が
…ううん、アタシだってそうだった。
だけど気付いたよ、彼らはただ普通に幸せに生きていたいだけなんだ。」
その場に居る誰もが身につまされる思いだった。
それぞれに、マゾを金づるとしか思っていない部分は多少はあった為だ。
「アタシ達はもう一度、マゾの幸せについてを考えてみても良いのかも。
彼らは『愛されたい』と思ってるんだと思う。
刹那的な快楽だけじゃなくて…マゾである事を全て受け入れるような
マゾにとっての楽園を作りたい。だけどそれは、マゾ牧場じゃない。」
マゾ神がリナに問いかける。
「へぇ、アタシの作ったマゾ牧場では間違いだって言うのかい?
だったらアンタの思う理想のマゾの楽園とはどんな場所だい?
これは別に試す為に聞いてるんじゃないよ。
単に個人的な好奇心で聞いてみたいんだ。
一体この地球上のどこに、マゾが安らげて暮らせる場所ガあるんだい?」
「それは・・・VRの世界です。」
「ぶ、ぶぶぶ、VRぅ~!?」
一同、一斉に驚愕の声をあげる。
しかし、ネオンがそれに頷く。
「ふふふ、やっとリナもわかったんだね。
メタバースの可能性は無限大。
私がやっているようにアバターを使う事も出来るし、
仮想現実空間の中でならマゾ達も理想の暮らしが出来る。
じゃあ、パッケージ名は…『おいでよマゾの森』とか?」
「いや、それだとパクりっぽくなっちゃうでしょ。」
綾がツッコんだ。
そしてマゾ達が愛を感じられる空間としてVR空間を挙げたリナだったが、
玲奈はそれに違和感を感じていた。
「ねぇ皆、落ち着いて考えてみて。
本当にVR空間がマゾ達の愛を感じられる場所になると思う?」
ネオンが答える。
「えー、だって今でもアタシの配信で癒されてる人達は多いよ?」
「それはネオンがキャラを作って楽しい配信をしているだけでしょ。
マゾ達が愛を感じるためにはVR空間は足りないと思うのよ。」
杏がそれに突っかかる。
「じゃあ何だよ、玲奈はリナがせっかく提案したマゾ達が愛を感じる
そんな居場所さえも奪ってしまうって言うのか?」
「皆、気付いて!
リナはそんな事言わない・・・多分今のリナは、
違う【何者か】なのよ・・・。」
全員が一斉にリナの方を向く。
すると、リナの目が漆黒に染まる。
杏がすぐにそれに気付き言葉を発する。
「うわ...マジだ。さすがは相方(愛方)よくわかってんな。」
「リナは時々、目の色が変わって別の何かになる時があるの。
そして今回もリナの提案のおかしさに気付いた。
ねぇ、アナタは一体何者なの?
どうしてリナの身体を使ってマゾ達におかしな事をするの?」
「・・・ククク、まさかバレてしまうとはな。
だがしかし、やはりマゾ狩り女子達の中に居て良かった。
私はヘイト。マゾを愛して裏切られて来た女達の憎しみから生まれた。
マゾは嘘つきだ。すぐに快感に流される。
そして主体性を持たない。その為、パートナーを守る事が出来ず、
結果として見殺しにされてしまう事もあった。
私はそんなマゾによって不幸になった者達の意識の集合体。
全てのマゾ達に裁きを。先ほどのマゾ霊王など比べ物にもならぬ。
マゾに天罰を与える存在なるぞ。頭が高い。
まずはお前達とマゾ達を戦わせてみるか。
さて、マゾを殺す事は出来るか?
コイツらは、本気でお前達を殺しに来るぞ。」
マゾ達に裏切られ、苦しめられて来た者達の怨念が集合体となった存在。
そんなヘイトと言う怨念がリナの身体に憑りついていた。
そして玲奈達に向けられたマゾ達の敵意。
玲奈達はマゾ達と戦い、彼らの命を奪く事無く制する事が出来るのか。




