#42.マゾの街とそれぞれの暮らし①
マゾ狩り女子会フルメンバー
マゾ達が転生を繰り返しながら神に近付く程に街は綺麗になった。
しかしその一方であまりに神に近付き過ぎて悟る者が現れた。
通称・悟りマゾと名付けられたそのマゾは、既存の人間のルールに縛られず
神通力を用いて目の前の人間達を不要だとして消し始めた。
リナ達はこれを受けて再々度、マゾ神の元へ向けて急いだ。
~マゾ神宅~
「へぇ、なるほどねぇ。もうそんな悟ったマゾが現れたんだねぇ。」
マゾ神はどこか嬉しそうな反応を見せた。
「だ、だけど!いくら何でも人間を消すのはやり過ぎじゃない!?
このままじゃあ、街から人が居なくなっちゃうよ!」
「うーん・・・それで、それの何が困るんだ?」
「え?いや、だって街から人が消えちゃうんだよ?
お店で働いてる人とか、配達してくれる人とか、
アタシ達は知らないだけで世の中の役に立ってる人達が
何の理由も無く消されちゃってるんだよ?」
「だけど、悟りを開いたマゾがそれを選んだんだろう。
それならば、間違ってはいないんじゃないか?
もっとマゾの事を信じてみても良いんじゃないか?」
さすがはマゾ神と言う所か、マゾ神は悟りマゾを全肯定した。
マゾ神からは望んだ解決方法が得られないとわかり、
リナ達は再び街へと戻った。
「ハァ、やっぱりどこまで行ってもマゾの味方なんだな、あの人。
それにしてもどうしよう、このまま街の人達が消されて行ったら、
本当に何も無くなっちゃう。」
リナが街に戻った時、既に相当数の人々が消されており、
街の異様な雰囲気に警察等も出動していた。
しかし彼らでさえ悟りマゾにより消されてしまい、
そこにはただ持ち主を失ったパトカーだけが赤色灯を点けていた。
「ヤバ、もう手遅れじゃん・・・。
この街、マゾ狩りどころじゃなくなってるよ。」
しかし、悟りマゾは次に街にマゾを集め始めた。
「この近隣の地域にいるマゾ達よ。
この街に集まり、我らが収める平和の街を創るのだ。」
するとどこからともなくワラワラとマゾ達が集まって来た。
やがて彼らは自然とそれぞれの役割に気付き、店舗に入ったり
運転したり指揮系統下に置かれたりと仕事に就いた。
「え、…マゾの街が出来つつあるの、コレ?」
そして、マゾ達の間で仕事終わりの言葉が交わされていた。
「あー、疲れたぁ~。
こんな日はサクッと、アレやっちゃいますか!マゾ狩り!!」
「課長、またまた~、やっちゃうって言うか、
やられちゃう、の言い間違いでしょ、このおっちょこちょいさん!」
「アハハ、それもそうだな(笑)」
マゾ達の街では当然のようにストレス発散のカジュアルな手法として、
まるでカラオケのような娯楽の一環としてマゾ狩りがあった。
「え、コレ何?アタシが狩ってあげなきゃなのかな?」
リナは先ほどのマゾ達に声を掛けた。
「はぁ~い、お兄さん達、お仕事お疲れ様。
良かったら、イジめられたくない?」
「ハイ!イジめて下さい、よろしくお願いします!!」
マゾ達は街中で突然、自ら脱ぎ始めた。
(うわ、こっちが恥ずかしくなるわ…。
それにしてもこうして見るとマゾって本当チョロいな~)
準備万端のマゾは、リナの簡単な責めでも十分にすぐに果てた。
その姿は情けなくもあったが、神々しくすらあった。
(本当、こうも楽だと助かるな~。
アレ?もしかして悟りマゾ、別にやった事悪くなくない?)
この時、リナは気付いてしまった。
少なくとも彼女にとって悟りマゾがやった事は何の問題も無かったのだ。
マゾ狩り女子達はこの夜、ひっきりなしに働いて稼ぎまくっていた。
~翌日~
「あ~、昨日はマゾイジめまくったな~。
何か、こんな日々も悪くないかも?
結局、ファーストフード店で働いても客はドンドン来るし、
それと同じ感覚でドンドンマゾを捌いて行けば稼げる。
やっぱマゾって良いわぁ~。」
それからしばらくして、リナ達の住む街が『マゾ特区』に指定された。
マゾ狩りされたければここに行き、そしてマゾ同士のコミュニケーションも
この街に来れば十二分以上に行う事が出来た。
(今やインバウンドで海外からもマゾ達が集まる世界的マゾ特区。
結局悟りマゾが描いた世界は本当に理想郷だったな。)
リナ達のマゾ狩りはこの地域ではゴミ収集と同じくらいに
必要なライフラインだった。
彼女達のサービスを求めて全国、全世界からマゾ達がやって来るのだ。
やがてマゾの街は小さな街と言うサイズには収まりきらず、
国政には『マゾ党』が出馬し、学校教育の現場では『マゾ学』が履修され、
マゾ学に特化した『マゾ養成所』が造られ、小学生のなりたい職業には、
93位に『マゾ』がランクインした。
玲奈がリナに語り掛ける。
「何かさー、マゾブームだよね。
だけどブームってよりももうこれは、社会的な流れだと思うんだよね。
マゾの優しさや人を傷付けない所が再評価されてる。
今や女性にウケる男の重要な要素は『マゾかどうか』なんだってさ。」
「住人達が皆マゾだと特に何のトラブルも起きないから、
警察とかも暇そうだよね。
だけど本来これが、理想的な社会の在り方なのかも。
互いに譲り合い、一部のイジめてくれる者達に服従する。
だけどアタシ達も別にマゾから搾り尽くそうとも思ってない。」
リナと玲奈が午後のひとときをくつろいでいると、
バタバタと誰かがリビングへ帰って来たようだ。
「あーマゾ狩り大変だったぁ~、ラテックスって蒸れるし暑いのよね、
脱いじゃおうかしら。」
それは次世代マゾ狩りの赤い髪の荒井イブだった。
リナが注意を刺した。
「ちょっとー、ここアンタの家じゃないんだけどー?
そんなピチピチのアホみたいな恰好して勝手に汗かいて、
臭くなった身体で近くをウロウロされたらたまんないんだけど?
あ、このたまんないは興奮するって意味じゃなくて、
シンプルに迷惑って意味だよ?」
「もう~、そんな事言ってアタシの汗だくの身体の匂い、
結構クセになってるんでしょ?ホラホラ、嗅いでも良いのよ。
ラテックスって本当に通気性最悪だから、滅茶苦茶臭くなるのよ。」
「うげっ、おばさん臭がする...えげつないよー助けて玲奈ー。」
「ちょっと、おばさんってアタシアンタ達10も離れてないわよ!?」
「いや、10離れたらさすがにおばさんだろー。
ってか、何が悲しくてアンタの汗臭い匂い嗅がされなきゃいけないのよ」
「あーもう、マゾ達はメチャクチャ喜ぶんだけどな、
アンタって本当に可愛くないわね!」
「ピチピチラテックス黒ワンピースの変態おばさんから別に
可愛いって思って貰わなくても良いわよー。」
何だかんだとケンカをしながらも、こうやってじゃれるような関係だ。
今では過去のしがらみも気にする事無く仲良くしているのだ。
そしてリナはまだ執行猶予中でもあった。
しかしその原因となったネオンやりおんとの関係も、
全く過去のしがらみを気にする事無く良好な関係だった。
玲奈がリナに言う。
「ってかさ、リナって本当に、執行猶予中なのに普通に暮らしてるし、
あぁやって敵だった人間とも最終的には仲良くなってる。
本当凄いよね。リナって、人たらしの天才なのかも。」
「うぇ?何だよそれー、アタシはただ普通にしてるだけだよ。
大体、そんなケンカとかする意味無いじゃんー。
ま、アタシがマゾ好きなのはそうやって無駄な争いしない所かも。
マジでかったるいのよねー、だって体力の無駄じゃん。
そんな事してる暇あったら、SNS投稿見ていたいし。」
「アンタらしいわね。
けどさ、今こうやってマゾに対する社会的な見方が変わったけど、
私達が最初に会った頃には信じられないよね。
まさかマゾの政党まで出来ちゃうなんてさ(笑)」
「いや、まだアイツ当選してないからw
ってかアイツ正体を明かしてないけど、絶対Youtuberの負けオスだよね。
まさか政党作るとか、本当人間って不思議だよねー。」
思えば二人が出会ってからこれまで、本当に様々な事があった。
そうした中で出会った人達とはその場で縁が切れてしまう事なく、
一人一人の人生がリナ達に出会う事で何かしらの変遷を遂げていた。
玲奈は気付いた。
リナはマゾかどうか、では無く、真剣に生きる一人の人間かどうか、
でぶつかっているのだ。
それに気付き、玲奈はリナに抱き着き甘えた。
「ちょ、何だよ玲奈、いきなり。」
「ん?良いのよ。私、リナの事好きなんだから。」
~マゾ神宅~
一方で、マゾ神はこうなる事がわかっていたかのように微笑んでいた。
側にはサキュバスのリリスが立っている。
「アンタ、あまり高く飛べなくなっちゃったね。
そんなに羽をボロボロにして、それでも守りたかったのかい?」
「もう、わかってるクセに。
アイツは、いやアイツらは、本当に凄いよ。
単なるJKじゃない。出会う者を全て仲間にする能力者だよ。」
「フフ、アンタにはそう見えるんだねぇ。」
~綾宅~
一方、綾は一人暮らしの自宅で思いに耽っていた。
(最初はあのコ達も、他のマゾ狩りの子達と同じだと思ってた。
だけどリナと玲奈は違った。あの二人は全てを変えて行った。
アタシは少し伝説的な存在になっていたりするけれど、
あのコ達の方がよほど伝説だわ。
だけど、わかる人、知ってる人しかわからない凄さ。
歴史に名は残さないかも知れないけれど、まぁそもそも
マゾ関連で名前を残してもねぇ。
なんて、この『マゾなんて』って言葉自体が、既に
死語になりつつあるのかもねぇ。)
そこへ、マゾ狩りを終えたエリカが帰って来た。
「綾ちゃん、ただいま~。ねぇ、抱き着いて良い?」
「あんたねぇ~、何か成り行きでウチに住み着いてるけど、
そもそもココは一人暮らし専用なのよ?
あと、アンタ何したって臭いんだから、抱き着くとか
アタシ以外の人に提案しちゃダメよ?
まぁアタシは、何故か不思議とアンタの臭さに魅了されて
クセになっちゃってるから仕方ないんだけどさ。」
そう照れながら言うと、綾はエリカの逃避の匂いを嗅いだ。
臭い、確かに非常に彼女の体臭は臭いのだが、やはりたまらない。
(はぁ~ん、もう、くっさぁ~♡
この子、何故どうしてこんなに可愛いのにこんな臭いの?
本当、不憫過ぎるし可愛過ぎるし臭過ぎるわ、最高よエリカ。)
こうして綾宅では歪んだ二人暮らしが行われていた。
この後は続けて、杏と凛、ネオンとりおんの暮らしの一旦を紹介する。




