#4.靴下は絶対常備すべき!
靴下が臭い二人
一人でマゾ狩りに臨んで見事に撃沈したリナ。
玲奈は一通りの叱責をしたものの、リナにも悪気があったワケでは無い。
「あーもう、とりあえずお説教はこれくらいにしとくわよ。
まぁ私だって、最初は上手く行かないだろうしね。」
二人は結局は黒木綾のサポートが必要である事を痛感し、
彼女の到着時間を待った。
駅から降りて来る綾を真っ先に見つけるリナ。
「綾ちゃぁ~ん、一人でマゾ狩りしようとして失敗しちゃったぁ~!」
しかし綾はリナを責めはしなかった。
「へぇ、リナ頑張ったじゃん。
こういうのはとりあえずやってみる事が大事よ。
失敗しても学ぶ事も多い。もちろんそれで命を落したら意味無いけど、
こうして生きてるんだからそれだけでも儲けものよ。」
そうして続けて綾は二人に尋ねた。
「ところでアンタ達、靴下履いてるわよね?
それ、何のために履いてるのかしら。
わざわざ洗濯して使い古そうとしてるの?」
「え、だって直履きしたら靴が臭くなるじゃん。
さすがにホテルでエグい匂い玲奈に嗅がせたくないしさ。」
「それが武器になるって言ってんのよ。
マゾ達って結構、女子の匂いに圧倒されるの好きなのよ。」
玲奈が答える。
「あーそう言えば聞いた事あるかも。
友達の彼氏が足の匂い嗅がせてくれってお願いして来てキモいって。」
「アンタ達どうせ日中ブラブラしてるんでしょ?
夏になれば自然に臭くなるし、洗濯物も減るんだから、
靴下は履いたらマゾ狩りの時にあげたら感謝されるわよ。
リピーターになっちゃうかもね。」
しかし玲奈はまだ少し抵抗があった。
「だけど、いくらマゾとは言え私の事を臭いイメージで覚えられたら
何かシャクって言うか・・・。
『足が臭い女』って思われるの、キツくないですか?」
「んー、玲奈ちゃん。アンタ、マゾ達からの印象を気にして何になるの?
別にアイツらと付き合うワケでも無いでしょ。
それに彼らはお金をくれる貴重な、いわば資源よ。
臭いからこそ匂いに寄って来る、まるで光に集まる蝶のようにね。」
玲奈はまだ「う~ん」と理解が難しい顔をしていたが、綾が提案した。
「じゃあ今夜は玲奈ちゃんが、マゾに靴下をあげる事!
ただし靴下だから3千円くらいにしておいて、3人に渡せば終了よ。」
「え”~、でもまぁ・・・靴下渡して終わりなら・・・良いかも?」
「それとオプションも付ければ更に売り上げが上がるわよ。
一緒に写真撮るので+3000円とかね。」
「そんなの、記念にしてどうするんですか?
靴下買った記念ってあまり意味無くないですか?」
「う~ん、わかってないわねぇ。
マゾは靴下を持ち帰って匂いを嗅いで楽しむのよ。
その時に顔写真があれば便利、捗るでしょ。」
「何で一緒に撮るんですか?」
「一人だと、その写真使ってマチアプ登録したり、
悪用されるかも知れないでしょ。
一緒に撮る事で切り抜かないと使えなくなるし、
まぁAIとかで単体写真作られたら意味無いけど、
一応念の為、悪用しづらい写真にしておくのよ。」
「なるほど・・・。わかりました!
それじゃあ早速靴下買って来ます!!」
こうして玲奈は綾のアドバイス通り、靴下を準備してマゾ狩りに臨んだ。
「あそこにいるマゾ、匂いフェチかもね。行ってみる?」
「何でわかるんですか?あのマゾが匂いフェチだって。」
「だってホラ、前の女性の足の下の方を見てるでしょ。
普通なら足全体を見るものだけど、足の下の方とか、
臭いんだろうな~って妄想してるのよ。
まぁ、ものは試しに行ってご覧なさい。」
綾に唆されて、玲奈はマゾに声を掛けた。
「あの、お兄さんさっきから女性の足の下ばかり見てますよね。」
マゾ男は脅されると思い警戒して、それを否定した。
「え!?いやいやいや、たまたまだよ。鳩とか見てたんだよ!」
「あ、大丈夫ですよ。別にゆすろうとかそんなんじゃないですから。
私が半日履いたこの靴下、3000・・いや、3500で買いません?」
「え!?良いの?キミみたいな可愛いJKの直脱ぎ靴下を!?」
「えぇ、しかもコレ薄手の生地だから、もう既にかなり臭いんですよ。」
「うっひょー、買う買う買う!!早く、早く!!」
男は喜びを隠す事が出来ず、周囲からドン引きされる程に叫んだ。
玲奈が二人の元に一旦戻って来る。
「売れた・・・あまりにも簡単だったわ。
あんな臭いだけの靴下、欲しい人いるんだ・・・。」
「さ、売れたのは良いけど、早速次の靴下を履きなさい。
そして臭くする為に、それ履いて歩いたり走ったりしなさい。
一番簡単なのは一度濡らして、そのまま履く事ね。」
「え”、そんなの気持ち悪いじゃないですか。」
「だけどそれが手っ取り早く臭く出来るわよ。
玲奈、アンタはちょっと良い子ちゃん過ぎるから難しいかもだけど
これだって女子の生き残り方の一つよ、プライドを捨てなさい。」
玲奈はゴクリと喉を鳴らした後、近くのトイレに行き足を濡らした。
そのまま靴下を履くとジメッと気持ち悪い感触になる。
靴を履くと不快感がこみ上げた。
「綾ちゃん、コレ・・・かなり気持ち悪いんだけど・・・。」
「嫌なら、早く売れるように頑張りなさい。
そうね・・・ホラ、あそこの汚いおじさん。
アレとかなら若い女の子から声を掛けられ慣れてない。
すぐに売れるんじゃないかしら?」
玲奈は綾の提案したマゾの元へと向かった。
「あの~、お兄さん、良かったら私の靴下買いませんか?」
「え”?わ、わ~、可愛い子だ・・・だけどどうせ、
新品の靴下を履いてあまり臭くないのを売り回ってるんでしょ?
そんな新品同様の、買いたくないよ。」
「だったら試しに嗅いでみます?
かなり・・・蒸れてますよ?」
玲奈はぐしょぐしょになった靴を脱ぎ、靴下を脱ぎマゾに渡した。
マゾはそれを手に受け取り、思い切り吸い込んだ。
「スゥーーーー・・・・く、くっさぁーーー!!!!!!!!!」
男の大声に玲奈は驚き周囲を見渡した。
周りの人々はドン引きし、マゾと一緒にいる玲奈にも冷たい目が向いた。
「ちょ、ちょっと、早く買うかどうか決めて下さいよ。
それと、いきなり大声あげないで下さい!」
「買う、もちろん買うよ、コレ。最高だ、臭いね、キミの靴下。」
玲奈はこうして簡単に一日の3分の2の生活費を稼いだ。
綾が更に『技』を伝える。
「あら、やるじゃない。あとね、コレは裏技、アタシのオリジナルよ。」
そう言って伝えられた技を玲奈は次の販売で試してみる事にした。
ターゲットは脂ぎったサラリーマンだった。
前回の反省を元に玲奈は少し人混みから外れた所へと誘った。
「うーん、キミの靴下、蒸れ蒸れで良いんだけど、
他に何かオプションは無いの?」
「ふふ、お兄さんそう言うと思ったわ。
靴下に唾を付けてあげるけど、+2000でどうかしら?」
「え!!唾!?
最高だ、是非やってくれ!!」
こうして玲奈は靴下に唾を垂らすだけで2000円余計にゲットした。
綾が玲奈に告げた。
「玲奈、素晴らしいわ。リナも、こうやれば案外簡単に稼げるから、
まぁ体調が優れない時とか中々マゾが捕まらない時にはやってみて。
リスクも少ないし、マゾの満足度も意外と高いからね、コレ。」
こうして二人は綾と別れて、今晩のホテルにありつけるのだった。
「ねぇ、玲奈。マゾ狩りって案外簡単じゃない?
アタシら、コレで数年は生きていけそうじゃね?
ってか、もしかしたら上手くやればもっと長い事稼げるかも。」
「そうね、あくまで今の所は、ね。
同じ事をやる子達が増えたら私達の場を荒らされるし、
そうなったらもっと人の少ない場所に行かないといけない。
各地を転々としながらホテル暮らし・・・。
何にせよ、マゾ狩りにはまだまだ色んなテクニックや手法がある。
綾さんから学べる事はたくさん学びましょ。
それと、マゾに対する感謝の気持ちも忘れずにね。」
「え、マゾに感謝って・・・だってアタシ達、
普通の子達ならやってくれない事をやってるんだよ?
感謝ってか、むしろボランティア、みたいな?」
「リナ、ダメよ。コレを当たり前になってしまったら終わるわ。
あくまで私達は自分達の生きる力を高めるために試行錯誤してる。
そしてマゾの人達もその協力者だと考えるのよ。
あくまで相手は生身の人間。特にネットとかじゃなく、
直接会う私達みたいなやり方の場合、相手に対するリスペクトが無いと
舐められてると感じたら彼らが何をしてくるかはわからないわよ。」
「う”えぇ~、へ~い、わかりやした~。
玲奈何だか、説教っぽくて綾ちゃんみたい~。」
玲奈はリナにそう言われながらも、
コレは決して間違っていないと思っていた。
確かにこのようなマゾ狩りという非合法なやり方に
美学はいらないかも知れない。
しかし、美学を忘れてしまえばそれは単なる無作法な集りに思えた。
このようなアンダーグラウンドで最低な生き方をしているからこそ、
最後までプライドは持っておかなければいけない、玲奈はそう考えた。
更にこの日は隣駅に更に安いホテルがある事を見つけて、
そこで一夜を過ごす事にした。
靴下は洗濯に入れずに明日売る事にした。
それならば制服も洗わずに匂いを付けて、
嗅がせる事でお金を取っても良いかも知れない。
そんな考えが玲奈の頭に浮かんだが、それは止めた。
マゾ達の欲望に最適化された自分達の生き方は最低に思えたからだ。
ただ金銭を得るだけに最適化するのなら制服を洗わなければ良い。
だが、最後まで一線は超えないようにする事で人であろうとした。
こうしてリナよりも遅れを取っているように思われた玲奈は
リナよりも早く一人で金銭を稼ぐ事に成功したのだった。
しかしこの夜、二人は玲奈の足の匂いで寝苦しい夜を過ごしたのだった。




