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#26.シマを荒らした代償

マゾ狩り女子会の活動内容に『臭いを有効に活用する事』

と言う指針が加わり、活動が安定して来た頃、

ついに闇社会の制裁とでも言うような事態が起きてしまった。


この街で匂いフェチを相手に商って来た風俗店の関係者が

直接6人のマンションの部屋に怒鳴り込んで来たのだ。


リナは買い物に出ており、玲奈はエリカの匂いを嗅がせて貰い

興奮していた。

そんな耽美で甘美な時間を引き裂くように、恐ろしい事が起きた。


「あのさぁ、とりあえず部屋ん中に入れろよ?

 開けないなら、無理矢理鍵コジ開けてやろうか?

 それともヤバい奴らたくさん呼んで、お前らマワしてやろうか?」


玲奈は泣きそうになった。いや、既に涙が溢れていた。

エリカは直接の住人では無いとは言え、ここに来られれば被害は必須だ。

エリカも非常にこの状況に恐れを抱き、既に失禁していた。

玲奈はとにかく焦った。


「どうしようどうしようどうしようどうしよう。

 綾さんに言ってもこんなのどうにもならない。

 警察を呼んでも民事不介入でしょ?

 もうダメ、詰んでるじゃん。私、どうなっちゃうの?

 嫌だ、殺されたくないよ、ねぇお願い、誰か助けて。

 綾さん、いや・・・リナ、助けて!!」


その時、玄関でリナが訪問者と顔を合わせたのが分かった。


「ん、アンタ誰?インターホンで誰と喋って・・・」


その瞬間、リナの顔面に強力なグーパンチが繰り出された。


瞬間、リナがフラッと倒れ込む。

手に持っていた買い物袋がドサッと地面に落ちた。

そしてその様子をインターホン越しに玲奈は聞いていた。


「・・・リナ!!今すぐに助けに行かなきゃ!!」


玲奈は部屋にエリカを残したまま、すぐに階段を駆け下りた。

自分が行った所でどうする事も出来ない。

それでも、リナのピンチに駆け付けずにはいられなかった。


「リナ!!」


玲奈が声を掛けると、女がコチラを向いた。


「お”、やっと出て来たか、引きこもり野郎がよ。

 コイツはお仲間か、さてどうしてやろうかな、

 お前ら拉致って、仲間から身代金を要求しようか?」


「・・・めろ、・・・・止めろよ、クソババア・・・」


倒れ込んだリナが、女を睨んでいた。


「ハァ?アタシのグーパン程度で倒れたお前が睨んだって

 怖くも何ともねーんだよ、このクソガキが!!」


「誰が?・・・・誰が、・・・・クソガキだぁ?オラ。」


リナの、あの時の目だ。

ネオン達を殺そうと決意した時の、周囲が全く見えていない覚悟の目。

そしてリナは今回は周囲の人間を利用するのではなく、直接手を下した。


近くにあった大きな岩を掴み上げて、それをそのまま女の頭にぶつけた。


『ゴンッ!!』と鈍い音がして、女は倒れ込んだ。

すぐに頭から血が流れ始めた。

リナは女がまだ起き上がると思い、更に岩を女の頭めがけて打ち付けた。


『ゴッ!!ガツッ!!』それが数回繰り返され、女は動きを止めた。


玲奈はただ恐ろしさで動けなかった。

そこへ、杏達4人が帰って来た。


「え、リナ・・・コレ・・・アンタ、ヤバいじゃん。

 執行猶予中だよ?え、コレ、実刑5年喰らうじゃん。

 ってか、コレでまた罪を重ねて・・・え?」


4人は酷く困惑したが、杏がすぐに頭を切り替えた。


「皆・・・・コレ、埋めよう。早く。

 今の音はこの時間帯なら聞かれてない可能性もある。

 ってか・・・埋めたら・・・部屋を出よう。

 それで、綾ちゃんも居ない、誰も知らない場所へ行こう。」


それは年長者としての責任感から、自分が率先して提案するしか

リナを表社会で生きさせる為に残された道は無いとの判断だった。


そうして杏はすぐに呼び出せるマゾを呼び付けた。


「そう、すぐに来れるのね。良いわ、何でもしてあげる。

 アタシと同じ罪を、被ってくれるかしら?秘密?

 えぇ、そうよ。コレは特別な秘密だわ。さぁ、おいで。

 アンタは他のどのマゾ奴隷よりも特別な存在になれるわよ。」


杏が連絡を入れてから僅か5分で、マゾは車に乗りやって来た。

そして6人は何も言わず、そこに女を詰め込んだ。

マゾはギョッとしたが、杏がすぐにそれを懐柔した。


「大丈夫よ、アンタは何も知らなかっただけ。

 それに、アタシの全てをあげる。ねぇ、イイでしょう?」


そう言い、マゾの乳首付近にツツーっと爪を這わせる。

すぐに酩酊状態になったマゾの顔には、既に理性が消えていた。


「山、海・・・ううん、どちらもありきたりね・・・。

 そうだ、アタシの祖母が住んでいた集落があるの。

 既に廃村よ。そこへ行こうかしら。向かって。」


杏がそう言った時、玲奈が思い出した。


「あ、エリカを室内に残したままだわ!!」


「それはヤバいわね・・・いや?もしかしたら使えるかも?

 すぐに彼女に連絡して。

 『最初からアタシたちはあそこに住んでいなかった』

 『あの子が一人で住むために契約した』事にしましょう。」


かなり苦しい言い訳ではあったが、事が突然過ぎてもう

こうするより他に方法が無かった。


そして車を走らせる事3時間半、杏の祖母の集落へと辿り着いた。


「真っ暗・・・ライトが無いと何も見えないわ。」


「だけどこれくらいの闇の中の方が、隠すには最適かも。」


杏が言った。


「さぁ、早く始めましょう。ここなら誰にも見られないけど、

 ずっと『ソレ』と居るのは気持ち悪いでしょう。

 そしてコレはここに居るマゾオスを含めた7人だけの秘密よ。

 まぁ後でエリカに伝えても良いかも知れないけどね。」


こうして6人とマゾオス1匹は暗く深い闇の中で、

そうした周囲の景色よりも更に漆黒の行為を執り行った。

それが完了した後に心に残ったのはもはや虚無だけだった。


玲奈が言った。


「アイツ、匂いフェチ向けの店舗型風俗だって言ってた。

 裏にヤバい奴らがたくさんいる、っても言ってたt。」


杏がそれを聞き、事態の解決に向けた思考を始める。


「少なくとも、直接怒鳴り込んで来る以上、向こうは警察には言えない。

 それじゃあ、その組織のヤツらを一人ずつ消せば、完全犯罪。

 もちろんそれは遠い話になるだろうけど、またいつかマゾ狩りを━」


しかし、リナが反論を加えた。


「杏、慰めならいらないよ。

 皆、巻き込んでごめんね。アタシ、玲奈の事になるとついカッとなって。

 でも、皆もうこうなったら一蓮托生だよね。

 あぁ、どうしてこうもアタシ達って不器用な生き方しか出来ないんだろ。

 組織の壊滅なんて普通に無理っしょ。

 もうここでさ、誰にも知られてないこの場所で・・・

 生きる・・・生きる?生きられるの?農業も水も電気も何も無い、

 電波は無いけど、食べ物も無いこんな場所、確かに見つからないけど、

 でも生きる事は出来ない。だけどアタシ達が街に出れば、

 いやきっと遠くの町でだって、追手が来るかも知れない。

 それを、それにビクビクしながら暮らすの?

 ねぇ、杏。それならいっそ、ねぇ、皆。皆でさ、不器用な、皆でさ。」


リナがそう言った時、玲奈がそれを制止した。


「リナ。やめなさいよ。少なくとも私は、こんな所で死ぬ気は無いから。

 生きるの。また皆で楽しい暮らしに夢を見るの。

 それを、たかだかこんな外野からの邪魔が入っただけで、終わらせない。

 リナ、私と一緒にずっと生きてくれるんでしょ?

 あの誓いは嘘だったの?私は本気だったよ。

 ねぇ、リナ。これからもずっと二人で一緒に生きよう?」


玲奈の言葉にリナの黒く染まっていた瞳に光が入った。


「玲奈・・・。

 うん、そうだよね。少なくともコイツの死体はもう見つからない。

 それに、『裏にいる怖いヤツら』がこの女を殺ったのが

 アタシ達だっていう証拠を見つける事は出来ないはず。

 だったら、普通に暮らせば・・・いや、それは甘いかもだけど、

 毅然としていたら良いんだ。だってアタシ達は、間違ってない。

 勝手な事を言ってコチラに命の危機を感じさせたコイツが悪いんだ。」


リナの思考が少しずつ、自分達に都合の良いように組み替えられて行く。

しかし、それで良かった。リナ達がこんなに苦しい思いをする必要は無い。


杏もそれを手伝った。


「そっか、確かにアタシ達が逃げ回る必要って考えたら無いんだよね。

 もし追手が来た時。そん時はまたこうやって皆でソイツを殺って、

 それでまたここに埋めに来たら良い。

 さすがに複数で来られたら勝てないけど、それでもアタシ達なら何とか、

 上手い事やれる、そんな気もする・・・ねぇ、そうだよね。」


その時、マゾオスが声を発した。


「あの、自分、自衛隊経験者でして。

 空手や柔道も黒帯で、腕には自信があります。

 今はフリーで道場経営してますが、何かあればすぐに呼んで頂ければ

 そこら辺のチンピラくらい、フツーにのめせますよ。」


心強い言葉だった。

しかし、りおんが異論を展開した。


「あのさ、これはあくまで可能性の話なんだけど・・・。

 その風俗店と裏に付いてる組織のヤバい話を週刊誌にリークしたり、

 もしくは直接警察にでも良いんだけど、とにかくもう公権力の力で

 無理矢理に解体しちゃえば恐れる必要も無くない?」


コレは意外な風穴を開けるかも知れない考え方だった。

玲奈が言った。


「さすがりおんね。

 なるほど、確かにこんな卑劣な手段を使って来るヤツらだもん。

 叩けば埃が出るよね。よし!何か俄然、やる気が出て来た!!

 皆、せっかくゲットした新生活を楽しめるように、

 この余計な外野を私達の力で消しちゃおう!!」


この場の全員が希望の光に心が洗われそうだった。

その時、凛のスマホが鳴った。


「あら、何だろ・・・エリカちゃん?

 ヤバい、何か嫌な予感がする・・・。

 ハイ、・・・・・え?

 変な男達が、マンションのオートロックの所にいる?」


それを聞き、この場の全員に衝撃が走った。


「すぐに車を走らせます!!

 皆さん、乗り込んで下さい!!」


杏の専属のマゾオスは、マゾオスなのに物凄く頼りになる男だった。


ネオンが言った。


「だけどコレってチャンスかもよ?

 だって相手のヤバい奴ら大集合じゃん?

 何かしら悪さはしてるんだろうし、警察に言えば良いんだよ。

 ただし、やり方には注意が必要ってか、実害が出てから・・・

 そう、オートロック・・・え、ってかオートロックってさ、

 他の住人が入るのに付いて来られたらヤバくない?

 逆に外部から助けが入り辛くなるって言うか。」


凛がエリカの身を案じる。


「ってか、エリカちゃんの事が心配過ぎるよ!!

 もしオートロックも簡単に誰かの後ろに入られちゃって、

 その上でドアも無理矢理こじ開けられちゃったら・・・

 マゾさん、お願い!!急いで!!」


「山道だからポリ公いねーしめちゃめちゃ飛ばしてますけど、

 どれだけ急いでも3時間はかかりますよ!!」


杏の顔から余裕が消えて言った。


「コレは・・・普通にヤバくねぇか?

 エリカに背負わせるにはあまりにリスキーって言うか、

 アイツが可哀そう過ぎるだろ、クソッ!!」


その時、リナが一か八かの賭けに出た。

リナがスマホを掛けたその相手とは・・・。


「あ、綾ちゃん?やっほ。寝てた?

 ありゃー、じゃあごめんね、ちょいややこしい話。

 あのさ、新生活の愛の巣にヤバい男達が集まっててさ。

 悪いんだけど友達が一人でそこに代理で入っててさ。

 何とかしてあげてくれないかな。今もしかしたらもう、

 オートっロック突破して中に入ってるかもなの。」


果たして、起きたばかりの綾にエリカを救う妙案が捻りだせるのだろうか?

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