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#24.下着泥棒を追いかけて

マゾ狩り女子会6人の記念すべき共同生活一夜目が空けた翌日。

干していた洗濯物が全員でランチに行っている隙に盗まれてしまった。

6人は新生活の感動を味わう間も無く、犯人を捜す事になった。


しかし果たして広い街の中で下着泥棒の犯人を捕まえる事は出来るのか。


「ランチに行っていた時間から考えると、本当にここ30分の犯行ね。

 だとするとまだそんなに遠くには行っていないと思う。

 2人ずつ3組に分かれるよりは手数を増やしたいし、

 6人が一人ずつで捜索をして犯人を見つけ次第すぐに全員に連絡。

 捜索は基本的に小走りで。見つけたら逃走の恐れが高いし、

 まずは写メを取る事。OK?」


こうして6人はそれぞれに散り散りになり犯人を捜す事となった。


それでも捜索はかなり困難を極める事が予想された。


杏は主にマンション界隈を調べた。


「ここら辺りなら効率的にたくさんの人達を調べる事が出来る。

 ただしどちらにしても家の中に入られたら・・・・。

 まぁそれは、戸建てでも同じかな。」


玲奈は神社や診療所等の少し特殊な建物の周辺を調べた。


「犯人の属性がわからない以上、可能性は広く調べないと。」


レナは駅周辺や学校周りを調べた。


「人通りが多い所・・・コレが一番可能性は高いはず。」


りおんは大通りの道路沿いや地下道を調べた。


「道、コレが人の動線の基本のはず。

 ココを抑えておけば逃げ道はかなり減るんじゃないかな。」


ネオンは戸建ての建っているエリアを調べた。


「可能性としてはコレが結構高そうな気がするのよね。

 少しでも犯人の気配があれば特定も可能だし。」


そして最後に凛は古くからある集合住宅を調べた。

年寄りが最後の余生を過ごしていたりして、

雨漏りも酷く住人もかなり少ないであろうエリアだ。


「まぁ、ここは可能性は低いよね。

 そもそも人もあまり住んでいないし、

 5階のベランダから盗めるようなテクニック、

 悪いけどここの住人達にはあまり無いと思うし。

 まぁこういう損な役回りも誰かがやらなきゃね。」


そうして凛が歩いていると、明らかに怪しい洗濯籠を持った人物、

ある一人の女性が歩いているのを見つけた。


「わ、可愛いゴスロリ服の女の子だ♪

 一人暮らしでコインランドリー通いかな?

 あんなにたくさんの洗濯物、やっぱゴス服って嵩張る・・・

 アレ?あれって杏のブラじゃない?」


その女性の持っているランドリーバッグからはみ出していたのは

見覚えのあるブラジャーだった。


「いやいやいやいや、そんであの青いパンティは、

 アレ明らかに玲奈が洗濯機に入れるのを見てたわよ。

 ヤバい、犯人見つけちゃったんだけど!?」


凛はすぐに証拠写真を撮影した後、全員に情報を共有した。

あまり追っている事がバレないように慎重に後を付ける。

女性は悪びれる様子も無く自然に歩いている。


他の5人がそれぞれのタイミングで集まって来たが、

全員が凛の元には集まらなかった。


遠目に犯人を確認し、犯人と一定の距離を保ちながら後ろ歩きをしたりして

徐々に自然に犯人の包囲網を作り始めた。

やがて犯人がどの方向へ逃げても捕まえられる体制が整った。

そこで凛が犯人の後ろから速足で追いかけ始めた。


「!?」


犯人は足音の雰囲気から、バレた事を察知したようだった。

すぐに速足になり逃げ始める。

しかし正面からは杏がやって来る。


「ヤバ・・・脇道に逃げなきゃ!!」


しかしそこからも、りおんが出て来た。


「嘘・・・3人!?

 仕方ない、逆側に逃げるしか・・・」


しかし逆側からはリナが姿を現した。


「そ、そんな!!4人・・・一体何人いるの!?」


更に細かな民家の裏道から逃げようとした時、

そこからはネオンが顔を覗かせた。


「行かせないよ、アンタにもう逃げ道は無いんだからね。」


「嘘・・・!!5人も居たって言うの!?

 仕方ない、斜めに突っ切って逃げるしか・・・」


しかし最後の望みの道からは玲奈が現れた。


「チェックメイトね、素直に捕まりなさい。

 別に取って食ったりはしないわ。

 ただ、私達だって困ってるんだからちゃんと返して。

 そして、理由を教えて頂戴。」


相手がゴスロリ服を着た可愛い女の子であった事から、

玲奈を肇として6人全員が少し、いやかなりホッとしていた。


遂に観念した女性は、大人しくなり話し始めた。



挿絵(By みてみん)

下着泥棒を追いかけるマゾ狩り女子会メンバー



「私、自己臭症があって・・・。

 自分の匂いが臭くて臭くてたまらなくて・・・。

 それで、新品を買ってもどうせまた自分の匂いが付いちゃうし、

 それならばいっそ、誰かの匂いが染みついて取れない、

 くっさい下着とかを使わせて貰えれば、きっと私の匂いがしないし

 平気で履けるんじゃないかな、って思って・・・。」


それを聞いて、6人は驚きと共に怒った。

リナが6人を代表して文句を言った。


「え、それって何?アタシらが臭い、って言いたいワケ?」


「え、まぁ、ハァ。女子だから、やっぱり自然と臭くなりますよね?」


彼女は悪びれずにそう言った。

杏が怒り狂い始める。


「あ”-、コイツマジで無理!!

 え、何なの?アタシらが臭いって平気で言えるのって、

 コイツ何らかの共感性とかが欠如してるんじゃないの!?」


りおんが「きっとそうなんだろうね」と冷静に言った。


そこでネオンがある提案をした。


「とりあえず、全員アンタの事今、めっちゃ怒ってるけどさ、

 アンタの匂い嗅がせなさいよ。それを配信するから、

 それでチャラにしてあげる。どうかしら?あと、皆も、どう?」


5人は下着泥棒に対するケジメとしての公開配信による晒上げは

妥当な罰だとして納得して許可した。そして女性は━。


「わかりました・・・。

 だけど私、本当に臭いんです・・・。

 もし嗅いでご気分が悪くなられても・・・文句言わないで下さいね?」


━自己臭症。それは、実際には全然臭くないのに精神的な問題等により

自身が非常に臭いと思い込んでしまう症状である。

しかし、目の前の女性は

話している距離で臭って来る程の悪臭は無く、

走った事による微かな汗臭がある程度であり、問題無さそうに思えた。


「よし、じゃあ決まり!!

 それじゃあ、アタシがアンタのスカートの中に入って実況するからさ、

 あ、りおん!配信カメラ回しといて?」


「あぁ、わかったよ。あくまで彼女のプライバシーや精神面に配慮して

 あまり過激な表現やリアクションには気を付けてね。」


「オッケー」と言いながら、ネオンは彼女のスカートの中へと顔を入れた。

そして、瞬間その中から声が聞こえて来た。


「ちょ、ぼぉぉぉぉえ”ぇぇぇぇぇっぇーーーー!!!!!

 何コレ、ちょ、あり得ないんだけど、ザリガニが腐ったみたいな、

 え、ちょ、コレ何!?助けて、りおん、皆!!ぼえ”え”え”ぇーー!!」


ネオンの尋常では無い反応に、杏とリナがすぐにネオンを引っ張り出す。

それでもしばらくネオンはえずいていた。


「あの、ごめんなさい・・・。やっぱり、臭かったですか・・・。」


「臭いなんてモンじゃないよ、アンタ・・・コレは・・・

 バイオハザードだよ・・・ぼえ”え”え”ぇ~~~」


すると、ネオンの反応を見ていた女性が鳴き始めてしまった。


「あの、本当に、本当にごめんなさい・・・。

 ちゃんと病院とかも行った事があって、それに清潔にしているのに

 何故か臭くて・・・原因不明だから本当にどうしようも無くて。

 私、やっぱり生きてる事が迷惑ですか?」


さすがにそう言われて、ハイと言える者はいなかった。

玲奈が彼女に声を掛けた。


「そっか・・・打つ手無しでそれは本当にキツいよね。

 何か、私達もちょっとだけごめん。

 貴女の傷への理解が足りなかったかも知れない。

 ええと、私達の下着を着れば貴女は自己臭症から

 立ち直れそうかしら?」


女性は手に持っていた下着を嗅いでみた。

それはリナのものだったが、それを一嗅ぎして、女性は言った。


「洗濯した状態でコレなら、いけると思います。

 是非、未洗濯のものを定期的に頂けましたら・・・

 皆さんの臭さで自分の臭さが打ち消されると思います。」


彼女自身にはおそらく何の悪気も無いようであった。

しかし、その言葉がいちいち6人の気持ちを逆撫でる。


杏が純粋に質問をした。


「なぁ、そんなにアタシらの下着って臭い?」


「え、あ、ごめんなさい!!

 皆さんの事、臭いだなんて・・・失礼過ぎますよねっ!!

 だけど、何て言うんだろう。ご苦労されて来たのかなって。

 きっと夜通し街に出ていて、街の湿度を吸い切って。

 そんな、苦労の跡が見える感じの臭さですわ。」


6人は少しだけ、救われたような気がした。

彼女は自己臭症と言うよりはただ匂いに敏感過ぎるのかも知れない。

そして夜の街での苦労についてを察してくれる彼女の事を、

何とか救いたいと言う気持ちが6人に芽生えた。


リナが言った。


「ねぇ、皆。彼女に定期的に未洗濯の下着をあげない?

 それで救われるんならさ、安いモンだよ。

 だけど彼女には、もし重度の匂いフェチのマゾが居た場合は、

 最終兵器になって貰う。それでどうかな?」


「良いんじゃねぇか。まさにwin-winだな。」


杏が答えた。こうして自己臭症の女性は6人の仲間になった。


「そういや、アンタの名前を聞いて無かったな。

 何て言うんだ?」


美土路技みとろぎエリカですわ。

 あそこの長屋で家賃を抑えて暮らしてますの。」


何とエリカの住まいはオンボロ長屋の中部屋だった。

外観からも非常に質素、いや貧乏暮らしが見て取れる。


「あんなとこ住んでるから、臭くなるんじゃあ?悪いけどさ。」


「いえ、隣の方は非常に清潔好きですから、それは関係ありませんわ。

 だけど、私にはこれくらいの暮らしの方が似合いと思ってまして。」


そこで玲奈が一言を伝えた。


「まずさ、その自己否定って言うか、卑下を改めないとね。

 顔だって凄く美人で可愛いんだし、匂いだって、実は意外と

 匂いフェチって多いからさ、凄く武器になるよ。

 私達はもう6人でいっぱいだから一緒には暮らせないけど、

 時々顔を合わせて下着の受け渡しだけじゃなくて色々と

 友達にならない?」


エリカは目に涙を浮かべて感動して言葉に詰まり始めてしまった。


「あ”う、えぐ・・・ひっく。・・・ありがとう、こんな私を。

 今まで、ずっと誰からもそんな風に言って貰えなくて、

 ただ、臭い女は嫌だとか・・・だから、皆の言葉が嬉しくて、

 う”ぅ~・・・嬉しいよぉ~~~!!!」


彼女が泣いた事で汗だくになり、匂いが周囲に漂った。

しかし今度は不快感は薄く、彼女がこれまでに積み上げて来た辛さや

彼女達への強い感謝の念が読み取れる事から、むしろ心地良く感じた。


6人は新生活のスタート翌日に奇妙な友達が出来た。

そして彼女にとっても6人との出会いは人生を変える転換点となった。


そうして6人はこの夜、マゾ狩りを久々に再開する事としたのであった。

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