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6,ヒロイン、口説いちゃいます!?

「うわぁぁぁぁぁ!!」


 驚きのあまり、思いっきり叫びながら、ベンチをガタッと大きな音を立てながら立ち上がってしまった俺。


(どどど、どうしてルシアがここに!! 確かこの時間は、食堂に向かってご飯を食べているはずじゃ?)


 完璧なはずの主人公の謎の遅刻に続き、本来なら食堂にいるはずの彼女がなぜか人気のない中庭に現れるという、二度目のイレギュラーに困惑してしまった。だが、そんな俺の盛大な大パニックっぷりを目の当たりにしたルシアは、小さく身を縮めながら、


「ご、ごめんなさい、急に驚かせてしまって……っ」


と、逆にこちらに対して申し訳なさそうに謝罪してきたのだ。まさかの謝罪されたことにより、冷静さを取り戻りた俺は。


「い、いや。俺の方こそ悪かった。急に大きな声をあげちゃって」


俺は、フランクに軽い謝罪を返す。大口を開けて奇声をあげた不審者は俺の方だし、女性を怖がらせたままにする趣味はない。


「そ、そんな……! 貴族様でおられるあなたが、平民である私に謝罪など!」


 あわあわと両手を振り、恐縮しきった様子を見せるルシア。……まぁ、一応は貴族である俺が、平民であるルシアに謝罪するなど、この世界では本来あるはずがないことだからな。彼女がこれほど動揺するのも無理はない。

 だが、名前すら出てこないモブ貴族の俺からすれば、身分制度なんてものはハナから知ったこっちゃないのだ。

 そんなことを考えていると、突然……。


――ぐ~。


 静かな中庭に、なんとも元気よくお腹の鳴る音が響き渡った。お腹の……音?俺……じゃないな。だとすると。俺は自分の腹をさすり、そこからロボットのようなぎこちない動きで、恐る恐るルシアへと視線を向けた。

 そこにいたのは、自身の鳴らした音の驚き、顔を赤面させているヒロインの姿だった。


「も、申し訳ありません……ッ!!」


 ルシアは物凄い恥ずかしそうな表情を浮かべ、小さな両手で必死にお腹を押さえる。その姿を見た俺は――。

「あー、もしよかったら。一緒に食べないか?」


気づけば一緒に食べないかと誘っていた。正直、メインキャラ……それもヒロインである彼女とは極力関わりたくはなかったが。困っている子……それもお腹を空かせている子を野放しに出来るほど、俺の根性は腐っちゃいない。

 俺は苦笑交じりに、バスケットに入っている一つのカツサンドをルシアの方へと差し出した。案の定、最初は必死に断りを入れてきたルシアだったが……。


――ぐ~。


 再びお腹の鳴る音が響き渡った。自身の胃袋からの無慈悲な裏切りに、完全に言葉を失ってしまったルシア。 いまや耳の先まで真っ赤に染め上げた彼女は、恥ずかしさのあまり顔をうつむかせながら、「……っ、い、いただきます」と、ついに降伏を宣言し、小さな手でそっとカツサンドを手に取った。


 カツサンドを手に取ったルシアは、その未知の料理の『感触』に、ハッと目を見開いた。


「ふわー……! このパン、凄くフワフワしていますね……っ!」


 まだ口に入れてもいないというのに、指先から伝わる柔らかさに、ルシアは物凄い恥ずかしそうな表情から一転、少女らしく純粋に感動した声をあげた。

 それもそのはず。なんせこのパンもソース同様、俺が三年間必死に研究を重ねて作り上げた努力と汗の結晶なのだからな。フワフワして当然だ。……自身の心の中でこれでもかと鼻を高くしているアレンだが、表向きはあくまで平然を装っている。


 ルシアがフワフワとしたパンに感動をしているのをよそ目に俺は、手に持っているカツサンドを思いっきり被りついた。その光景を横目に見ていたルシアも俺に習ったかのように被りつく。……その瞬間二人は、全く同時に目を限界まで大きく見開いた。


「「うッ……まぁぁぁぁい!!」」


 静寂に包まれていた中庭に、男と女の魂からの大絶叫が綺麗にハモりながら響き渡った。

 口いっぱいに広がる、極上の肉の旨味。そのの旨さをさらに引き立てる特製のソース。更にその特製ソースが染み込んだフワフワなパン――。

 口の中で完璧な三位一体となって押し寄せる美味の暴力に、ルシアはカツサンドを持ったまま、信じられないものを見たかのように激しく目を輝かせた。

「な、なんですか。この食べ物は……っ!? 今まで食べてきたどの料理よりも遥かに美味しいです!!」

 あまりにもおいしい料理に出会ったルシアは、物凄い勢いでカツサンドを食べ進め。――気づけばもう、最後の一口まで綺麗に平らげていた。


(はっやッ!!)


 あまりにも早い完食に思わずツッコミを入れてしまった。そんな俺の内心の驚きなど知る由もないルシアは、バスケットに入っている最後のカツサンドを……それはもう、恨めしそうに、じーーっと上目遣いで見つめてくるのだ。そんな恨めしそうな表情を見っちゃったら……俺。


「……もう一つ、食べるか?」


気づけば、最後のカツサンドを、彼女へと差し出していた。


 結果、俺の昼飯になるはずたっだ三つのカツサンドの内二つが彼女の胃袋へと消えていった……あははは、まぁ彼女が喜んでくれたのなら結果オーライ……っか。心の中でそう思うようにするアレンだった。

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