41,へいお待ち!!
海を思う存分楽しんだ俺たちは、アンナの帰りを待ちながら調理の準備を初めていた……そんな時、買い出しに出ていたアンナが帰ってきた。
「ただいま戻りました」
「おぉ、お帰り。それで、例の物は見つけられたのか?」
「はい、アレン様。こちらですよね?」
アンナは早速、市場で購入してきた『タコ』を俺に渡してくれた。
「「……!?」」
初めてタコを見たルシアとクリスティアは、何とも言い難したい表情を見せた。
「あ、あの……アレンさん。何ですか、その生き物は? もしかして、それを食べるつもりなんですか?」
何とか正気を取り戻したルシアは、初めてタコに、顔面蒼白になりながら恐る恐る俺に質問してきた。……まぁ、初めてタコを見たのなら無理もない反応か。
見た目からして、他の魚とは類を見ない奇妙な姿をしているからな。前世の地球においても一部の国では、その奇妙な形をしているタコを、悪魔の魚”デビル・フィッシュ”なんていう言い、嫌悪されがちな魚だからな。
俺は心の中で一人、タコの雑学を披露しながらルシアの質問を返答する。
「これは、『タコ』って言って。確かに見た目こそあれな魚だが、食べれば上手いから期待しておいてくれ」
「そ、そうなんですか……」
凄く心配そうな表情をするルシアをよそ目に、俺は調理を開始する。
まずはタコの口や内臓を取り除き、塩水でヌメリを落とす。
ヌメリが取れたらしっかり水気を拭き、大きな鍋で塩ゆでにする。
その間にキャベツを刻む。
「アンナ!」
「はい、アレン様」
俺はキャベツを放り投げ――
(※良い子は真似しないでください)
アンナは懐からナイフを抜き、飛んできたキャベツを閃光の速さでみじん切りにし、ボウルで受け止めた。
「「おぉぉぉぉ!!」」
パチパチパチパチ!
まるで曲芸かと思うような光景にルシアとクリスティアは拍手喝采。アンナは得意げに胸を張る。
そんな曲芸を披露している間に俺は生地の準備を行う。
その間に俺は生地作り。卵、水、小麦粉を混ぜ、キャベツを投入……シンプルだが、これが一番美味い。
人によっては、紅ショウガや天かすなど様々な食材を加え混ぜるのだが……他の食材は用意できなかったので今回はこれだけ。
こうして生地の準備を進めていると、塩ゆでしておいたタコが良い感じに茹で上がってきた。
「なんだが、さっきよりも色が鮮やかね……」
茹で上がったタコを見たクリスティアは、先ほどの少しくすんだ色の赤から鮮やかな赤色に変わった事に驚く。なぜ色がこんなにはっきりとした赤色になるか?と聞かれたのだが、こちらに関しては俺も専門外のためはっきりとは答えられなかった。
(熱を加えた場合に、皮膚の何が溶けてとかそんな感じだったと思うけど……)
しっかりと説明できないと判断したため、とりあえず熱を加えればこうなるよ!とだけ伝えた。
しっかりと塩ゆでしたタコを、一口サイズにまで適当にカット。足と頭の部分とで分けておく……実際は分ける必要はないが、足と頭では全然食感が違うため、食べ比べの為に分けておく。
生地と中身のタコの準備が出来たら、後は焼くだけ。
「アレン様、鉄板の用意は完璧です」
「ん? おぉ、ありがとうな」
俺はアンナが用意してくれた鉄板の前に材料を持って立つ。
ルシアとクリスティアはまた焼きそばでも作るのかな?と思っていたが、俺の目の前に設置されている鉄板が前とは違う事に気がづく。
「あの、アレンさん。なんですか、その鉄板は?」
俺の前に用意された鉄板は、前回焼きそばで使用した真っ平ら鉄板ではなく、均一に丸の凹みが並んだ、ちょっと特殊な鉄板だった。
正直、なんと言ったらいいのか分からなかった俺は、とりあえず「見ていれば分かるよ」と一言返し、鉄板の上に生地を流し込んだ。
ジュワァァァァ!!
鉄板が熱され、生地が香ばしい匂いを放つ。
「いい匂い~」
生地が固まり始めたところで、タコを一つずつ投入。両手にピックを構え、固まった生地を切り、零れた部分を成形しながらひっくり返す。
すると――
「おぉぉぉ!!」
綺麗な球体が姿を見せた。
今まで見たことのない調理法に興味深々なルシアとクリスティア。そんな二人を見ていた俺は、物は試しということで二人にも体験させてみることに。
最初は全然うまくひっくり返すことが出来ず苦戦していたが飲み込みが早いルシアは、意図も簡単に生地をひっくり返していく。
「上手いなシア」
「アレンさんの教え方が上手いだけですよ!!」
ルシアが徐々に成長していく傍らで、クリスティアは――
「む、難しいわね……」
全く返せていない。
流石に目も当てられない状況に俺は教えようと近づくと、クリスティアが突然とんでもない提案をした。
「ねぇアレン君。この前みたいに……後ろから手を取って教えてくれない?」
「なぁッ!?」
いきなりとんでもない提案をしてくるクリスティアに俺は、頬を赤らめ頭から湯気が噴き出した。
「流石にそれは!?」としどろもどろな態度になってしまった所に。ルシアが助け舟を出してくれた。
「ティア。私が教えてあげる」
「……あら、ありがとうシア」
俺がしどろもどろしている間に、仲が良いヒロインが悪役令嬢に教えるという何とも奇妙な光景が繰り広げられた……普通、絶対に見る事が出来ない光景だな。
仲慎ましい光景を心の写真に転写している間に、ひっくり返していた生地が綺麗な球体に成形され、良い感じの焼き色まで火が通りだした。
俺は、急ぎピックで球体の生地を取り出し、ソースに付けておいた刷毛で生地に塗りつけ、マヨネーズと青のりのような粉を上からまぶしたら完成!!
「へい、『たこ焼き』一丁お待ち!!」




