42,和を求めていたら……
「わぁ……丸い……可愛い……」
「この香り……なんだか食欲をそそられるわね」
ルシアとクリスティアだ目の前に出された『たこ焼き』なる球体の料理に興味深々……勿論メイドのアンナもたこ焼きに目がロックオン中。
ぐぅ~。
たこ焼きから香り出る魔性の香りにたまらずルシアの腹の音が鳴り響く。
あまりにも唐突な出来事に顔を真っ赤に染め上げ恥ずかしそうな表情を見せるルシア……まぁこればっかりは仕方ないよね。
「さぁ、どうぞ召し上がれ!!」
二人は、恐る恐るたこ焼きを食べようとしたが目の前に置かれていたのは、”一本の竹串”のような物しかなかった。
「あの、アレンさん。これはどうやって食べるんですか?」
目のまえに用意されているものでどうやって食べていいのか分からなかったルシアはアレンに助けを求める。
俺は、「こうやって食べるんだよ!」と言い、竹串を手に持ちそのままたこ焼きに”ブスリ!!”と突き刺した。そしてそのまま口に頬張る。
「熱っ……! でも旨い!」
口に入れた瞬間、外のカリカリだった生地が崩れ、中に閉じ込められていたトロリと熱々の生地が舌を焼くような感覚に襲われる。
「だ、大丈夫ですかアレンさん!?」
凄く熱そうに食べる俺を見たルシアは、凄く心配した声で俺に声をかけてくれた。
ハッフ……ハッフ……
俺は、その余りの熱さに手で口を押さえながら、少しだらりなく口を空けながら息でたこ焼きを冷ます。
ゴクン……ッ!
ようやく飲み込めるくらいの熱さまで冷めたためそのまま飲み込んだ。
「あー、熱かった……」
「だ、大丈夫ですかアレンさん?」
俺が物凄く熱がりそうに、たこ焼きを食べていたため……心配した声で俺に話しかけてくるルシア。
俺は咄嗟に「大丈夫大丈夫!」と涙目に泣きながら、二人にもたこ焼きを食べるように促す。
「出来立てだから、やけどには注意しながら食べてね……」
と注意喚起を促す。
俺の食べる様子を見ていた二人も最初は躊躇しながら、フーフーと少したこ焼きを冷ましながら口に頬張る。
ハッフ……ハッフ……
たこ焼きを頬張った二人も俺同様……同じような反応を示すが少し冷ましたおかげで難なく食べる事が出来た。
「美味しいですね、このたこ焼きという料理!!」
初めてたこ焼きを食べたルシアは、目をキラキラとまるで子供用な無邪気な笑顔を見せる。
「ええ……。外側がカリッと香ばしく、中はトロッと柔らかい不思議な食感。さらに、『タコ』というあんな変な生き物の、このコリコリとした食感が堪らず美味しいですね!!」
これでもかと言わんばかりの百点満点の食レポを述べるクリスティア。
二人が美味しそうに食べる様子を見ていた俺は、なんだか微笑ましい気持ちになった……が。
俺の隣でずっと、獲物を捕らえるような目で見つめるアンナの姿があった。
「あ、アレン……様。私には下さらないのですか? その『たこ焼き?』なる食べ物を……」
「あ! すまん、すっかり忘れていたわ……」
完全にアンナの存在を忘れていた俺は、慌ててたこ焼きを盛りつけアンナに提供した。
パクッ!!
たこ焼きを手渡されたアンナは、何の躊躇することなくたこ焼きを口に頬張った。
「んー、熱いですが……非常に美味しいですぅぅ!!」
口から白い湯気をモクモクと立ち上がらせながらも美味しそうに食べるアンナ。
その後も、モクモクとたこ焼きパーティーを楽しんだ俺たちは、ビーチにて後片付けを行っていた。
「美味しかったですアレンさん!」
「ええ、初めてあんな丸いものを食べたけど、美味しかったわ。流石はアレン君ね」
「はい、流石は私のアレン様です!」
たこ焼きパーティーを堪能した三人は、各々の感想を俺に伝えてくる……斯く言う俺もたこ焼きパーティーを楽しんのだが。
正直物足りなさを感じた。俺は、心の中で思ったその物足りないものを考えていた。
「それは良かったよ。でも、ここに『鰹節』があればもっと最高だったんだけどなぁ……あッ!」
考えていたことをつい口に出してしまった。
「あの、アレンさん。その『かつおふし?』っというのは一体なんですか?」
「え、えーっとだなぁ……」
案の定、鰹節について聞いてきた。
元々俺がこの港町にやってきたのは、たこ焼きパーティーを楽しむため!……っと言うのもあったのだが。
本当の狙いは……『鰹節』、またはその元の『鰹』が手に入らないかなと思いこの港町にやってきたのだ。
なぜ今頃になって鰹節が欲しくなったかと言うと……答えは簡単。
”日本食が食べたい!!”
ただその一点に限った話だった。だが、……残念な事に、この港町にも鰹節どころか鰹も取り扱っていなかったが。
(隣国の帝国になら、それに似たものはあると聞いた事があるが……帝国との接触はまだ先パートの話だし)
半ば諦めに似た感情が芽生えたせいで余計に『鰹節』という単語を零してしまったのだろう。
だが、その時……。
「あるわよ……『鰹節』」
「……え!?」
話を聞いていたクリスティアが突然口を開く。
「あるのか鰹節!?」
「ええ……」
まさかのクリスティアから鰹節があると聞くとは思わなかった俺は、驚いてしまった。
あるのなら今すぐにでも欲しいとお願いしたら、今は手元にはないと言われてしまった。
じゃあどこにならあるのか?と聞くと、クリスティアは落ち着いた態度で話す。
「近いうちに、王宮で他国を招いた大きなパーティーが開かれる予定があって……
あなたにはそのパーティーに参加してもらおうと思ってね
もし参加してくれると言うのなら、あなたのいう『かつおぶし?』とかいう食材を上げるわ」
「……パーティー……かぁ」
(正直……あんな煌びやかなパーティーは、根っからの陰キャな俺からすれば苦手な場所なんだよなぁ……)
俺は今まさに究極の選択にせばまれていた。
苦手なパーティーに参加して念願の鰹節をゲットするか、パーティーには参加せず鰹節を諦めるかと言う究極の選択に。
必死に心の中で自問自答を繰り返してしていると、俺の心の中を見透かしていたかのようにクリスティアが口を開く。
「安心してアレン君。パーティーに参加と言っても、あなたにはパーティー自体に参加と言うより……
あなたの料理スキルを見込んで、料理スタッフとして参加してもらいたいの」
「……はい!?」




