40,出会いは唐突に……
夏祭りを堪能したアレン、ルシア、クリスティア……そしてアレンの専属メイドのアンナは今、新鮮な魚が食べられと海水浴を楽しむことが出来る港町へと足を運んでいた。
この町へ来た理由は、海水浴を楽しむためと言うのともう一つ。ここ港町でしか手に入らないとある食材を手に入れるためにこの町へと来たのだけど……。
ぼけぇぇ~
俺は今、浜辺ににて……水着に着替えルシアとクリスティアの着替えが終わるのを待っていた。なぜ、このような状況になっているかと言うと……。
元々俺はとある料理をを作るために必要不可欠な、例の赤い食材を買いに市場に向かおうとしたのだが、なぜかルシアとクリスティアに止められてしまい。渋々俺は、二人と一緒に海水浴を楽しもうこの浜辺に体育座りで待っているというわけだ。
ちなみに例の食材の調達は、メイドのアンナに代行してもらっている。
……というか初めてあれを触ると思うのだけど、大丈夫なのだろうか。
そんな俺の心配をよそに、水着に着替え終わったルシアが俺の元をへと近づいてきた。
「あ、あの……アレンさん」
俺は、声のする方へと振り返るとそこには、初めて着る水着に恥ずかしそうに立っているルシアの姿があった。
「あ、あの……ど、どうですか……?」
アレンは一瞬固まる。目の前のルシアは、普段の服とは違う、健康的で爽やかな水着姿。免疫ゼロのアレンは、頭が一瞬真っ白になる。
「……す、すごく似合ってる。その……明るくて、元気で……ルシアらしいと思う」
ルシアは顔を真っ赤にして、胸の前で手をぎゅっと握りしめる。
「~~っ! あ、ありがとうぅ……ございます!」
なにやら甘酸っぱい空気が二人の周りに漂っていると、そこへクリスティアが登場。
「……あら、どうやら私が最後のようね」
俺とルシアはクリスティアの方に視線を向けるて思わず驚愕してしまった。
黒を基調とした大人っぽい水着に、落ち着いた雰囲気のクリスティアの姿に逆に目を引く。ルシアも、クリスティアの水着姿を見て一言、「綺麗!」と褒めたたえる。
「うふふ、ありがとうシア。それでアレン君。私の水着は、どうかしら?」
目のやり場に困ったアレンは、顔をそっぽ向きながら、誠実に褒めようとする。
「……その……大人っぽくて……す、すごく似合ってる……と思ういます」
「ふふ。ありがとう、アレン君」
照れながら頑張って自身の水着を褒めた俺の姿を見たクリスティアは、満足げに微笑む。その様子を二人の横で黙って見ていたルシアは、自分の水着を褒めれた時の反応が違う事に怒ったのか、両頬を小さく膨らませ不機嫌そうな表情を見せた。
そんな、アレンたちが呑気に海水浴を楽しんでいる間アンナは、俺の使いでとある食材を手に入れるために市場に足を運んでいた。
潮風に混じって魚の匂いが漂い、威勢のいい掛け声が飛び交う。海辺特有の湿った空気が、メイド服の裾をふわりと揺らした。
「えーっと、アレン様から頼まれていた食材はっと……」
アンナはメモを取り出し、真剣な顔で読み上げる。
“全身が赤く、ウネウネとした足が八本生えた”、〇〇という書かれた生き物
まるでなぞなぞのようなメモを真面目な顔で握りしめながら、アンナは市場の端から端まで歩き回るが、それらしいものは見つからない。魚、貝、海藻、干物……どれも違う。
「なんでしょうか、このウネウネとした生き物とは。まさか……この触手で、私にあんなことやこんなことを……!? きゃぁぁぁぁ!!」
途方に暮れたアンナは、メモを握りしめながら小さく震え、一人で勝手に変な妄想を膨らませている変態メイド。そんな変態メイドの背後から声がかかった。
「ねぇ。あなた、大丈夫?」
背後から声がかかり、アンナが振り返ると、一人の少女が立っていた。黒味がかった茶髪に黒目。薄い青のワンピースが潮風に揺れ、どこか異国の雰囲気を漂わせている。
「あ、ごめんなさい! 怪しい者じゃないの。ただ……魚の匂いがする市場に、あなたみたいに綺麗なメイドさんがいたから、つい声をかけちゃって」
声をかけてきた少女は、いきなり声をかけてきたことにアンナが警戒していると勘違いしたのか、いきなり謝罪から入り、声をかけてきた理由までも説明してきた。理由を聞いたアンナは、その少女の謝罪を受け入れ礼儀正しくお礼を伝える。
「そうだったのですね、それはありがとうございます」
「い、いえそんなお礼だなんて。それよりも何か困った様子に見えたのだけど……。何か探しているんですか?」
「ええ、そうなんです。実は……」
気を許したのかアンナは、アレンから頼まれていた食材の書かれたメモを謎の少女に見せた。すると、そのメモに書かれていた食材を見た少女は一瞬だけ目を細め――
すぐに答えた。
「ああ、これね。これなら私知っているわ」
「本当ですか!?」
「ええ」
その少女は、アンナを連れ例の食材を扱っている店へ迷うことなく案内する。そしてある店の前で立ち止まり、「これじゃないか?」とアンナが探している食材に指を差した。
それは間違いなくアンナが探していた、”全身が赤く……ウネウネとした、触手のような足が八本生えた生き物”……。
『タコ』だった。
「こ、これが……。アレン様の言っていた『たこ?』なる生き物……ですか!?」
初めてタコを見たアンナは、最初は凄く嫌悪した表情を見せたが、アレンの影響で食の探求者になっていたアンナは、迷いもなくタコを購入した。
「ありがとうございます。あなたのおかげで無事、『たこ』を買う事が出来ました」
「いえいえそんな、困っている人がいたら助けるのが当たり前ですから! それよりも、その『タコ』。一体何の料理にするの?」
無事にタコを購入することが出来たアンナだったら、親切に道案内してくれた少女が純粋に一体何の料理にするのか聞いてきた。実際、何の料理を作るのか知らないアンナは、正直に分からないと回答。
「でも、アレン様が言うには……『祭りの定番メニューその二』とおっしゃってました」
祭りの定番メニューと聞いた少女は、少し考え込んだ後何かが閃いた表情を見せ、小さな声で「……きっとあれね」と呟く。
何を言っているのか聞き取れなかったアンナだったが、案内をしてくれたお礼にあなたも一緒にどうかと誘った……のだが。
「ごめんなさい、私この後用事があるのでいけません!」
っと丁重に断られてしまい、少女はまるで風かのようにそそくさと消えてしまったため。
何もお礼も出来なかったアンナは、凄く申し訳なさそうな暗い表情になってしまった。
アンナから逃げるように去った少女は、先ほどアンナが言っていた料理についてブツブツと何やら独り言をつぶやく。
「……祭りの定番メニューに『タコ』。きっと、”あの”料理を作るのね。さっきのメイドさんが言っていた「アレン」っていう人……もしかして私と同じ……」
何やら意味深な独り言をつぶやいていたその時……。
「ようやく見つけた」
背後から低い声が響いき、フードを深く被った男性らしき人物が少女の襟根っこ、まるで子猫を掴むかのように少女を捕まえた。
「あ!?」
襟根っこを捕まえられた少女は、その声人物に心当たりがあり、苦虫を噛みしめたような愛想笑いを見せる。
「え、えへへへ……」
「何が、えへへへだ! 何来たこともない町を一人で出歩いているんだお前は!」
「ご、ごめんなさい。つい磯の良い匂いに誘われて……つい」
「ついじゃねぇよ、全く……」
まるで日常茶飯事かと言わんばかりに男性は深いため息をこぼした。その後、男性は、「とりあえず行くぞ」と一言言葉を発し襟根っこを捕まえたまま少女と一緒に何処かに消えてしまった。
そんな大変なことが起きていることなど知るよりもない俺は、ルシアとクリスティアの三人で仲良く浜辺で遊び、アンナの帰りを待っていた。




