37,夏祭りの定番メニュー!
数日後……夏に一度、村で開かれる……前世で言う所の『夏祭り』が開催されていた。
ルシアとクリスティアは、浴衣のような服装を身にまとい祭りに参加していた。
「わぁー!! 色々な屋台がありますよティア!! どれから食べようかしら」
「もう、シア。そんな、慌てなくても屋台は何処にも逃げないわよ」
初めて村の祭りに参加したルシアは、初めて見る屋台やそこに出される初めて見る料理に興奮が収まらなかった。祭り自体は初めてではなかったクリスティアも、ここまで大規模に祭りを開く村に若干なりとも興奮気味ではあるが、自分以上に興奮しているルシアを抑え込みながら祭りを楽しんでいた。
「それにしても、この”ユカタ”?っていう服。初めて着てみたけど……思っていたよりも動きやすくてデザインも良いから、私好きかも」
「ええ、そうね。名前くらいは聞いた事があるのだけど、思っていたよりも悪くないわね。用意してくれたあのメイド(アンナ)には感謝しないとね」
「そうですね!」
初めて着た浴衣について話しを盛り上げている時、アンナの名前が飛び出したので、そのアンナは今どこにいるかという話になった。するとクリスティアは、今アンナはアレンの出している出店の手伝いをしているとルシアに伝える。
「そうでしたね。ところでそのアレンさんの出している出店ってどこなんでしょうか?」
「確か、行けばすぐに分かるといっていたのだけど……」
二人が俺の出している出店は何処だろうと辺りを探し回っていると、ひと際、人が集まっている場所があった。一体何の騒ぎなのだろうと思った二人は、恐る恐る人だかりの方へ足を運んだ。するとそこには……。
「いっらしゃいませ!!」
ポロシャツのような服に、タオルのようなものを額に結びつけた、アレンの姿があった。その姿はまるで、ラーメン屋の店主を彷彿とさせるかのよう。
「お? シアにティアじゃないか! いらっしゃい!!」
「い、いらっしゃいって、なんですかその姿?」
「ん、何って……見ての通りだが? 屋台と言ったらこういう恰好だろ!」
「そ、そうなんですか?」
前世の世界ではよく屋台の店主とかが着ていた服装なのだが、この乙女ゲームの世界においては見慣れない格好に少しばかり困惑してしまう二人。
「うーん、まぁアレンさんがそういうのならそうなんでしょうが。所でアレンさん、それがあの時言っていた”例の出し物”なんですか?」
「ん、あーそうだよ!」
……ミレイユから”例の調味料”を受け取った日まで遡る。
「なんですかアレンさん、この”黒い液体”は?」
「ん、これか? これは、料理を美味しくさせる『万能調味料』……『ウスターソース』だよ」
「そう……す?」
そう、俺が領地に戻ってきた理由は、この『ウスターソース』が完成したという報告があったら戻ってきたのだ。
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『ウスターソース』とは、玉ねぎやリンゴ、トマト、生姜などの野菜と果物を細かく刻み、鍋でじっくり炒めて甘味を引き出したあと、水を加えて煮込み、そこへミレイユ特製の香辛料を加えてさらに煮詰めた濃厚なソースだ。
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そのまま使って良し、料理の味付けに使って良しのまさに万能調味料……まぁ本当は、料理の『さ・し・す・せ・そ』の醤油と味噌の方が欲しいのだが、醤油と味噌に必要な『大豆』は、この国には無く。
隣の『帝国』になら似たような食材はあるとのことだが……流石にただ一介の下級貴族相手にそう言った取引が行えるわけもなく、半ば諦めかけている。
……っと話がだいぶ脱線してしまったな。
とりあえず、念願だった『ウスターソース』が手に入ったことだし、これを使った料理でも作ろうかなと考えていると……。
「ところでアレン。もうすぐ『祭り』の時期だが……。今年も何か新しい料理でも出すのか?」
ミレイユが突然口を開いた。
(あ、そういえばもうそんな時期だっけ。うーん……。祭り……ソース……麺?)
「……!? そうだ、あれを作ろう!」
俺の頭の中でとある料理が駆け巡った。祭りの定番屋台であり、皆が一度は食べたことのあるソースを使った麺料理。
そして現在……。
俺は、屋台に設置された大きな鉄板の前で料理を開始する。
まずは、ぶつ切りにしたキャベツと、ある程度にカットしたベーコンを鉄板の上でヘラを上手く使いながら炒める。
キャベツがある程度しんなりとしてきたら、別で作っておいた”黄色い麺”投入しキャベツたちを一緒に混ぜる!!
「アレンさん。どうしてその麺は黄色いんですか?」
「ん、あーこれは、『中華麺』って言って。小麦粉に『かん水』っていう特殊な水で混ぜ合わせた麺だよ。まぁ今回はそんな水がないから、ミレイユが作ってくれた食用の重曹で作ったものだけど」
……全く、ミレイユ様様だな!っとこんな悠長にしゃべっている場合じゃないな。
麺とキャベツたちが良い具合に混ぜ合わせられたところに――
本日の主役であるウスターソースを、上から回すように麺へとかけた。その瞬間。
ジュワァァァァッ!!
鉄板の上でソースが焼ける音とともに、破壊的なまでの香ばしい香りが一気に広がった。その瞬間、その場にいた全員が一瞬で“その匂いの虜”になった。
「ああ、いい匂い!」
「ええ、そうねぇ」
二人も完全に鉄板で焼かれた香ばしいソースの香りの虜になり、俺はそんな二人をよそに麺とソースが上手く絡まるように混ぜ合わせる。
元々黄色かった麺が、ソースと絡み合う事により、段々と茶色い麺へと変わっていった。
出来上がった麺を皿にのせ、別で焼いておいた目玉焼きを上にのせたら……『焼きそば』の完成!!




