31,最大のピンチに合います!?
どうも皆さん、俺の名はアレンって言います。今、俺は――転生してからの人生で最大のピンチに陥っています。
一体どうすればこの状況を解決できるのだろうか……!?必死に頭を回転させていると――
「はーい、あと十分だぞー」
教壇に立つ先生から、残り時間の宣告が飛んできた。
そう、俺は今まさに学園で行われている『期末テスト』の真っ最中なのだ。
「……ぜん……ぜん分からん……ッ!!」
俺は頭をフル回転させながら、問題用紙と睨めっこしつつ必死に解答を書いていった――が、数日後。
……チーン。
結果は言うまでもなく撃沈。というより、ほぼ赤点に近い“ギリギリ赤点回避”の点数で、順位は下から数えた方が早かった。
ちなみに、一位は、シリウスで二位はクリスティア、三位はルシアというさすがはメインキャラ勢だと感心してしまう。
まぁ考えてもみれば当然と言えば当然だよな……。だって、シリウスとクリスティアは、才色兼備、文武両道という盛りに盛られたチートステータス、ルシアに至っては、特待生と入っているのだから、勉強が出来て当たり前だよな。
「はぁ~……」
そんなアウェー感に苛まれてしまった俺を見かねてか、ルシアは「大丈夫ですよ!」と可愛らしい励ましてくれる。
(ホントなんなのこのヒロイン。いちいち可愛すぎるんだけど!!)
その可愛すぎる行動に思わず手で顔を隠してしまい、さっきまでの嫌な気持ちなんてどこかへ吹っ飛んでしまった――その時。
教員から、生徒全員へ向けて伝達事項が告げられた。
「あー、まずはテストお疲れ様!
この後もまだ講義があるかもだが、その前に俺から伝達することがある。
あともう少しで長期の休みに入ると思うがケガとかそういうは一切しないように……俺が面倒になるから」
あー、そういえばもうそろそろ長期休み……要するに夏休みに入るんだっけ。正直、これまでに色々な事があったせいですっかり忘れていた……というか最後の一言呼ぶんじゃねぇ?
教員の一言についてツッコミを入れながら俺は、いつもの中庭にてルシアとクリスティアと一緒に昼食をとっていた。
「んー美味しいです! アレンさんの料理は、どれも美味しくて私好きです」
「ええ、本当にそう思うわ」
「そうか? それは嬉しいね」
そんな他愛もない話をしていた俺たちだったが、ふとルシアがこんなことを俺に聞いてきた。
「そういえば……。アレンさんとティアは休校の間、どうするの?」
「休校中?」
まぁ要するに夏休みの間、どう過ごすという意味か。
モブである俺が学園に残った所でどうこうなるわけでもないし、一度領地に戻ろうかと考えていた。
……と言うより、備蓄しておいた調味料がそろそろ底がつきそうだから、補充しておきたい所だし……それに、もしかたら例の調味料が完成しているかもしれないしね……フへへ。
不敵な笑みを浮かべなら急に笑い出す俺に、心配した様子で声をかけてくるルシア。
「あの、大丈夫ですか?
「あ! いや大丈夫大丈夫。それよりも休校中どうするかって話だよな。俺は一度実家に戻ろうかと思ってる」
(というより、少しでもシナリオにかかわりなくないしな……)
「ご実家と言いますと……、アルベール領ですか!?」
「え? まぁそうだけど……」
実家に戻るという単語が聞こえた瞬間ルシアは、目の色がぱっと変わった。まるで光が宿ったように、期待と興味が一気に膨らむ。
そして――中庭に響き渡るほどの勢いで、ルシアが身を乗り出してきた。
「あの、アレンさん! 私もアレンさんと一緒にアルベール領に行ってもいいですか!!」
(ちか……!!)
突然、物凄い勢いで俺に近づいてきた。すぐ目の間にルシアの顔があり、俺は思わず顔を真っ赤にさせながら顔を晒しながら「どうして一緒についてきたいのか」聞いて見た。すると……。
「なぜって、決まってますよ!! 美味しいごはんを食べるためですよ!!」
「……はい!?」
話を聞く限りどうやら、アルベール領には――まだ王都では出回っていない食材や料理がたくさんあり、
ここ数年で「一度は行ってみたい領地」として有名になっているらしい……自分の住んでいる領地ながら知らなかった。
(確かに俺が転生してからの三年間で色々と改革、特に食に関しては力を入れてきたけど……)
無自覚最強主人公のようなセリフを考えてしまう俺だった。そんな俺の心を見透かしているのか分からないが、ルシアは目をウルウルさせながら、あざと可愛いポーズで俺を見つめてくる。
(それは反則だろ!!そんな顔されたら断れるわけないだろ!!)
もう定番と言わしめるような表情で見つめてくるルシアに俺は、ため息を吐きながらついてくることに同意した。
「ホントですか!? ヤッター!!」
ルシアはぱぁっと花が咲いたように笑った。その笑顔が眩しすぎて、俺はもう何も言えなかった。……と言うよりもさっきからルシアの横で黙って聞いているクリスティアの方が恐ろしくてそれどころではなかったのだ。
「そう。シアがついていくと言うなら、私もあなたの領地に行ってもいいかしら?」
(ほーらね)
正直分かっていた。ルシアがついてくると言ったら必ずと言ってクリスティアも一緒についてくる。そして、もし断ろうものなら……。
(「何か文句でもあるかしら?」)
……っと無言の圧が飛んでくる始末。もうこうなったら誰にも二人を止められない。俺は観念したかのように「分かった」と返事をする。
(はぁ~……。今年の夏は、平穏にくらせするだろうか……)




