30,ジャガイモのフルコース……作っちゃいます(中編)
ポテトサラダの時に分けておいたジャガイモを取り出し、塩などで味を調整する。
「うん、バッチリ」
味を整えたら、ジャガイモを小判型に成形する。しっかりと成形できたら衣の準備。小麦粉、卵、そして――『パン粉』。
この世界にはまだパン粉が存在しないため、俺が常時しているパンをおろし金ですりおろし、『生パン粉』を作る。
……なぜパンを常時持ち歩いているのかは以下省略。
「パンをすりおろしちゃうんですか?」
「ああ、そうだよ。これで衣にして揚げるんだよ」
「こ、ころ……も?」
「まぁ、見ていれば分かるよ!」
せっかくのパンをすりおろすことに不安そうなルシアに「大丈夫」と声をかけながら、パンをすりおろす。
衣の準備が整ったところで、成形したタネを小麦粉→卵→パン粉の順にくぐらせ、先ほどポテトチップスで使った油へ投入する。
ジュワァァァァ!!
油に入れた瞬間、厨房内に食欲を刺激する音が響き渡る。そのあまりにも魅力的な音に、リゼットたちは思わずゴクリッと唾を飲み込んだ。
しばらくして、しっかりキツネ色に揚がったコロッケを取り上げる。
キャベツを千切りにして皿に盛りつけ、余分な油を落としたコロッケを乗せれば――完成!!
ーーそして現在……俺は、出来立てのコロッケを店主の前へと運んだ。
「な、なんだ、この得体のしれない食いものは……」
言葉を失っていた店主は、ようやく口を開き、目の前に提供された『コロッケ』について説明を求めてきた。そのため俺は、「潰したジャガイモを衣をつけて揚げた料理」と高級料理店で働くスタッフかのように丁寧に説明した。
「ジャガイモ……だと!?」
ジャガイモという単語を聞いた瞬間、店主の目の色が変わった。どうやら店主にとってもジャガイモは“嫌悪する食材”らしい。その証拠に、俺へ罵詈雑言をぶつけてきた。
俺はそれを聞き流しながら、一言助言する。
「そんなに言うなら、一口食べてみて下さいよ。話はそれからですよ」
さらにおまけとして「もし不味ければ俺を煮るなり焼くなり好きにしてくれて構わない」と言い放つ。
ルシアたちは慌てた表情で俺を見つめたが、俺は「大丈夫」と目で合図して止めた。
「ふん、良いだろう。もしこの料理が“不味ければ”……惨めったらしくわしの前で土下座させて、喧嘩を売ったことを後悔させてやるわ!」
テンプレのような悪役セリフを吐きながら、店主はナイフとフォークを手に取った。
サクッ!!
ナイフを入れた瞬間、心地よい音が響く。
店主は切ったコロッケをフォークで持ち上げ、断面を確認してからゆっくり口へ運んだ。
サクッ!!
「……!?」
口に含んだ瞬間、店主の動きが口以外完全に止まり、咀嚼する音だけだ聞こえた。
ゴクン……
しばらく咀嚼していた店主がコロッケを飲み込み、手をゆっくりとテーブルに置く。そして拳をギュッと握りしめ、ブルブルとマナーモードの携帯電話のように震え始めた。
そんな様子を見て、俺はつかさず尋ねる。
「それで、店長さん。うちの『コロッケ』のお味はいかがだったかな?」
俺のドSじみた質問に、店主は顔を真っ赤にしながら歯を食いしばり、「…… まっ……まっ……」としか言えない。
恐らく「不味い!!」と言いたいのだろうが、身体は正直なようで、その言葉がどうしても出てこない。
何とか言葉を絞り出そうとした店主は、勢いよくテーブルを叩き、その場に立ち上がった。
「み、認めん……。わしは得体のしれないこんな料理など一切認めんぞ!!」
突然わけの分からない逆ギレをかましてきた。
(いや、得体の知れない料理って……どういう逆ギレの仕方だよ)
ため息をつきながら店主を止めようとしたその時――
「……これは一体何の騒ぎかな?」
突然、入口の方から声が聞こえてきた。振り返るとそこには、フードを深く被った男性らしき人物が立っていた。
内心腸が煮えくり返っていた店主は、変に絡んで来たフードの男性に「関係ない奴はすっこんでろ!」と詰め寄ったが。
「関係奴とは侵害だな。彼らは私の友人で、護るべき民でもある。故にこういったゴタゴタを無下に出来ないんだよ」
そう言って男はゆっくりフードを外した。その素顔を見た瞬間、全員が絶句した。
「し、シリウス第一王子殿下!?」
そう、この国の第一王子であるシリウスだったからだ。




