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3,ゴミから錬成しちゃいます!?

 バタン!

 お屋敷の奥にある厨房の重い扉を、俺は躊躇うことなく押し開けた。ガチャリと扉が開いた瞬間、中にいた料理人たちが一斉に俺の姿を見て、驚きと恐怖を隠せない表情を浮かべた。……まぁ、この反応からするに、前の俺はそれはそれは酷い態度をしていたのだなと肌でヒシヒシと感じた。

 そんなことを考えていると一人の男性が俺に近づいてきた。どうやらここの料理長をしている人物のようだ。料理長は、今にも心臓が飛び出しそうなくらい凄く焦った様子で、俺に話しかけてくる。


「こ、これはこれはアレン様……っ。きょ、今日はどういった御用でこちらに」


 料理長の手は、冷や汗が流れ、今にもその場にへたり込んでしまいそうなほどガタガタと震えていた。まぁここれも前の俺の行いが……以下省略。


「あー、すまない料理長、急に押しかけてしまって。ちょっと料理をしている様子を見学したくてね。邪魔はしないから、ここで見て行っても構わないかな?」


 およそ子供とは思えないほど理性的で大人な対応。中身は三十路を過ぎた元サラリーマンなのだから当然なのだが、料理長たちは完全にフリーズしてしまった。

 ……数秒の、いや、永遠のようにも思える長い沈黙の後。ようやく我に返った料理長が、引きつった笑みを浮かべながら限界まで震える声を絞り出した。


「……は。あ、はひ、どうぞどうど! 見て行って下さいませ、アレン様!」

「ありがとう」


 俺はにこりと微笑むと、調理台の並ぶ厨房の中へと歩み進めた。後ろからはアンナも恐る恐るついてきており、俺の背後に隠れるようにして、二人で料理の風景を眺める。

 料理人たちが戦々恐々としながら調理を再開する中、俺はをじっくりと観察し始めた。

 うーん、料理人たちの包丁捌きや手際自体は、流石は貴族の屋敷で雇われているだけあって鮮やかだ。でも、調理法自体は凝ったものはないな。特にこの世界には、料理の基本である『出汁ダシ』という概念自体が存在しないらしい。だからどうしても素朴な味付けになりがちなんだな。

 どうしたものかと悩んでいると、俺の視界にふとある(・・)ものが飛びこんできた。――それを見た瞬間、俺の口元が自然とニヤリと歪んだ。思い立ったら即行動。俺は料理長のもとへとタタタッと駆け付けた。


「あの、料理長。あそこに置いてある、野菜の皮や、鳥の骨とかはどうするんですか?」

「あれですか? あれはただのゴミですので、後で使用人がまとめて裏庭に捨てる予定ですが……」


 それを聞いた俺は、ますます口元が緩んだ。


「あの、もしよかったら。あの野菜の皮とかを貰えたりできますか?それと厨房を少し貸して欲しいのですが?」


 それ言葉を聞いた料理長達は、驚愕してしまった。もしかして、また変な悪巧みでするのではないか――と。だが、相手は高貴な貴族。平民の彼らに『ノー』と言える権限などあるはずもなく、料理長は引きつった顔で渋々頷いた。


「……わ、分かりました。あちらの調理台をお使い下さい」


額から冷や汗をダラダラと流しながら、料理長は決死の覚悟で承諾したのだった。

 その後、俺は料理長に丁寧にお礼を伝えると、貸してもらえることになった調理台へ、本来なら捨てるはずだった野菜の皮や鳥の骨などを並べた。


「あ、あの、アレン様。これで一体何をされるおつもりですか?」


心配そうに見つめるアンナに俺はニヤリと微笑みかけ。


「何って、決まっているじゃないか。料理だよ料理!」

「りょ、料理……ですか」


 調理台に並べられている食材を見て、アンナは絶句してしまった。まぁ無理もない、この世界の人たちからすればここに置いてあるものは全てゴミでしかなく、それ以上でもそれ以下でもないのだから。 

――だが、だからこそ意味があるのだ。

 現状、好感度が『ゴミ以下』の俺が、同じく『ゴミ』と蔑まれている端材たちを使って、料理をすることで。このマイナスまでに下がりきった好感度を爆上げしてやる!!

 前世の過酷な社畜時代、唯一の癒やしとして趣味の領域を超えるまで突き詰めた、俺の『料理』の知識。その全てを、今ここにぶつけてやる。

 俺は、心に闘志を燃やしながら調理を開始するのだった。

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