2,このキャラ災厄すぎる!?
アレンに転生して、しばらく過ごしてみて気づいた事がある。それは、出てくる飯が絶望的においしくないということだ。いや、俺が食べる料理が突別おいしくないというわけでなく、どうやらこの屋敷――いや、この世界の料理全体のクオリティが低いらしい。味の薄いスープとパサパサの肉、更に石でも食べているのではないかと錯覚するほど固いパン。正直、現代の日本で生きていた俺からすると質素というか、素朴な味付けだった。まぁ、飯の事も凄く大事な事なのだがそれよりも重要なのが。
屋敷で働く人達が俺を見るたびに、なぜかよそよそしい態度を取るということ。そして何より、。
初めてアンナと出会った時もそうだったが、廊下ですれ違うメイドや執事たちも普通に挨拶はしてくれるが、何処か距離を感じる。まるで、獰猛な猛獣の機嫌を損ねないように、慎重に接されているような感覚だ。
(……一体、前の俺は、どんな性格をしていたのだろう)
ふと疑問に思った俺は、目の前で大人しく控えている専属侍女のアンナに聞いてみた。
「記憶を失う前の俺って、どんな性格をしていたんだ?」
俺の言葉を聞いた瞬間、アンナの身体がびくりと跳ね上がった。
「……えっと、それはですね」
何とも答えずらそうな反応を見せる。まぁ記憶を失っている(転生した)とはいえ、雇い主である子供……ましてや貴族相手に「あなたの性格は最悪でした」なんて、本当のことを言えるわけがない。
怯える彼女を安心させるように、俺はできるだけ優しい声を意識して言葉を重ねた。
「すまない、答えづらい質問をして。ただ、どうしても知りたいんだ。前の俺がどんな性格をしていたのかをね。答えられる範囲で構わないから教えて欲しい。勿論、その回答次第でアンナをどうこうするつもりは絶対にないから」
俺が真っ直ぐに彼女を見つめて微笑むと、アンナは驚いたように目を見開いた。
「……わ、分かりました。アレン様がそこまで仰るのなら、正直にお話しいたします」
アンナは一度言葉を区切り、ゴクリと唾を飲み込んでから、意を決したように続けた。
どうやら、前の俺はかなり横柄な態度をしていたようだ。 身分を笠に着て使用人を見下し、お茶が少しでもぬるければ怒鳴り散らし、気に入らない料理は皿ごとひっくり返す。腕白と言うにはあまりにも酷い、救いようのない性格をしていたらしい。
(……まんま悪役貴族みたいな性格だったんだなぁ)
聞いてるだけで胃が痛くなってくるくらいの酷い有様に、自身のことながら、俺は思わず天を仰いで頭を抱えてしまった。そりゃあ、屋敷の全員から獰猛な猛獣みたいに腫れ物扱いされるわけだ。
とりあえず、前のアレンの事について知れたわけだし、アンナにお礼を言わないとな。
「アンナ。言いづらいことを正直に話してくれてありがとう。すごく助かったよ」
「そ、そんな……っ! め、滅相もございません、アレン様!」
俺が心からの感謝を伝えると、アンナはおどおどした態度で両手を小さく振りながら、慌てて頭を下げてきた。普通にお礼を言っただけなのにここまで怯えられるなんて、前までの俺はどれだけ酷い扱いをしてきたんだろう。自身のことながら、なんだか無性に申し訳ない気持ちになってしまった。
まぁこればっかしはどうしようもないな。使用人たちからの俺の好感度は、最底辺どころか、それを突き抜けてマイナス100からのスタート。その上、出てくるご飯も絶望的においしくないと来たものだ……どうしたものか。
アレンは、しばらく考え込んだ後。ふと何かを思い立った俺は、勢いよく椅子から立ち上がった。
「……よし。とりあえず厨房に行こう!」
「……えっ!? あ、アレン様!?」
突然の宣言に、目の前のアンナが鳩が豆鉄砲を食ったような顔で固まるが、俺はそんな事など意に介さず、そのまま厨房へと向かうのだった。




