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25,揚げ物ってどうしてこう食欲をそそるのだろう?

 いや本当に、何がどうなって、こんなような状況になったんだ……。


 俺はいつも通りに中庭でルシアと昼食を食べようとして廊下に出ただけなのに、なぜかシリウス殿下が現れてルシアを昼食に誘い、ルシアはそれを拒否し、しかも理由が「アレンさんと食べるので」なんて余計なことを言うから事態はさらに悪化。

 最終的に、殿下の提案で“全員で中庭で昼食”という地獄のような展開に。

さらに、なぜかシリウス殿下の第一婚約者候補であるクリスティアまで当然のように混ざってきて……カオスが加速している。


(あー、凄く家に帰りてぇ)


 重要キャラ勢に囲まれたモブの俺は、“今すぐ帰りたい”という気持ちに押しつぶされそうになる。そんな俺の様子に気づいたのか、ルシアが心配そうに声をかけてきた。


「あのアレンさん。大丈夫ですか?」

「え、あ。う、うん、大丈夫、大丈夫」


 落ち着け俺。確かにシリウス殿下が乱入してきたのはイレギュラーだったが……逆に考えれば、これは──。


 ルシアとシリウス殿下との好感度を上げるチャンス……ッ!!


 乙女ゲームにおいて、イベントだけで好感度を上げることは極めて難しい。ならどうするか。それは、こういう“何気ない日常”で好感度を稼ぐのが醍醐味だ。

 これまで俺のせいでイベントを潰してしまった分、ここで少しでも攻略対象と仲良くなってもらうしかない。

 俺は一人、メラメラと闘志を燃やす。だが──その前に一つだけ懸念点がある。


 それが、クリスティアの存在だ。


 シリウス殿下の第一婚約者候補であり、この世界における悪役令嬢のクリスティアが仲睦まじそうな二人を見てどう思うのか……。

 まぁ、嫌な気持ちになってルシアに対して冷たく当たるのは、シナリオ上普通のことなのだが。……実際、どうなのだろう、腸が煮えくり返りそうな気持になるのだろうか。


……。


(うん、考えていても分からないし、まずは飯にしよう!!)

──思考を放棄した。


 俺は、あらかじめ用意しておいた()()()の弁当をマジックポーチから取り出した。なぜ、三人分なのかと言うと、クリスティアも一緒に共に食べに来ると予測していたためだ。

 ルシアとクリスティアに弁当を一つずつ手渡していった──そこで一つ問題が発生した。

 

 弁当が一つ、足りない……ッ!!


 それもそのはず。

 元々、三人だけで食べると予想していたため、弁当は三人分しか用意していない。そこにシリウス殿下というイレギュラーが入ってきたため、弁当が一つ足りないのは必然。

 念の為、昼食に食べる物を用意しているのか聞いて見ると……案の定用意していない。それどころか……。


「ルシアやティアが絶賛する君の料理を、私も食べてみたくてね」


 などとイケメンオーラ全開で言う始末。


……ぶん殴りてぇ。


 女性が見たら一殺で悩殺するであろうイケメンフェイスも、男である俺からすればイラっとくるだけなのだ。……王子とかじゃなかったら絶対ぶん殴ってたいた所だ。

 だが、相手は王子でこの世界における攻略対象の一人。

 怒りがふつふつと湧き上がってきたが、どうすればいいのか冷静に考えることにした。


……!


 考え込んだ末、俺は一つの解決策を閃いた。


 ないのなら……作ればいいッ!!


 そう思い立った俺は、三人を連れて学園の調理室へ向かった。突然の行動に戸惑う三人の中で、ルシアが恐る恐る口を開く。


「あ、あのアレンさん。これから何をするのですか?」


 俺は腕をまくりながら、当然のように答えた。


「何って、これから昼食を作るんだよ!」

(前にドーナツを揚げた時、あの肉料理を食べたいと思ったんだよね)


 そう言って、食材棚をあさり始める。すると、ちょうど目の前に今回使う食材が置いてあった。


(お、早速あるじゃないか……『鶏肉』!!)


 勢いよく鶏肉を取り出し、調理台に置く。突然の行動に驚いたルシアが、目を丸くして尋ねてくる。


「あ、あの……これから何を作るんですか?」


 俺は胸を張って答えた。


「超絶美味しい肉料理だ。楽しみにしてろ!」


 そう宣言し、俺は迷いなく調理に取りかかった。


 

 まず、取り出した鶏肉を肉の繊維を断つように、一口よりも少し大きめのサイズでぶつ切りにしていく。

 切り終えた鶏肉をボウルに入れ、塩を振り、酒を回しかけ、すりおろしたニンニクを加える。さらに――今日は臭み消しにみじん切りのネギも投入。

 ネギを入れた瞬間、ふわりと香りが立ち、ルシアが思わず目を輝かせた。


「わぁ……いい匂い……!」


 本当は醤油があれば、しばらく漬け込んで下味をしっかり染み込ませたい。

だが、まだ手に入っていないため今回は我慢だ。


 下味をつけた鶏肉に小麦粉を加え、肉全体にまんべんなく絡むように手で混ぜ合わせる。


(片栗粉があればもっとカリッと仕上がるんだけどな……まあ、今はこれで十分だ)


 小麦粉がしっかり馴染んだら、百八十度まで熱した油の中へ、そっと投入する。



ジュワァァァッ!!


油に触れた瞬間、勢いよく泡が立ち、香ばしい匂いが一気に広がった。


「あー、なんだかいい匂い!」

「ええ……これは確かに食欲をそそる香りね」

「この音……なんだか心地いいな」


三人が同時に声を漏らす。


(分かる……揚げ物の匂いって、凄く食欲をそそる匂いだよな……)


 一般的には二分ほど揚げると言われているが、肉の大きさによって火の通りは変わる。

 だから俺は、肉が浮き上がってきたタイミングで一度引き上げ、竹串で刺して中まで火が通っているか確認する。


(よし……中までしっかり火が通ってるな)


 問題なければ、油を切って皿に盛りつける。

 湯気が立ち上り、衣は薄く色づき、にんにくとネギの香りがふわりと広がる。


こうして――


『唐揚げ』、完成!!

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唐揚げこそ最高最強の鶏料理
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