8話
住民の人に道を聴きながら冒険者ギルドに辿り着いた。
「おぉ、でかい」
この世界に来て見た中で屋敷と同じかそれ以上の大きさだ。こういうのは余所者お断りみたいな雰囲気あるから入りにくい。まぁ、入るんだけど。
入ると右には酒場、中央は受付の様な場所。さらに左には階段があり上はどうなっているのかはわからない。と、ボウッとしている場合じゃなかった。足を進めて受付? へ。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。今日は如何しましたか?」
「冒険者になりたいんですけど······ここであってますか?」
一部がとても大きい綺麗なお姉さんが歓迎してくれた。感無量でございます! 今日一日は幸せな気持ちでいられそうだ。
「はい、ここで間違いありません。ではこちらの用紙に記入して頂きたいのですが······文字の代筆は必要でしょうか?」
「ああ、それは大丈夫です」
『言語理解Lv.1』は会話から文字の読み書きまでカバーしてくれたのだ。それに気づいた時は〖隠密〗と同様に崇拝してしまった。
「わかりました。では記入をお願いします」
ペン貰い、用紙を見る。
名前······黒木碧でいいか。名字は貴族だけ~とかなってても部族の称号とか言っとけばいいだろう。
次に、うむうむ、特技ときたか。この質問は嫌いだ。面接とかで特技はなんですか? とか、自己PRをお願いしますとか聞いてどうするんだよって言いたくなるよね。
まぁ、ここでは冒険者としてどんなことが出来るかって問われているんだろう。だって名前には必須って書かれてるけど特技には書かれてないし。完全素人には優しい使用だ。そんな訳で空欄で。
必須項目以外も出来る限り埋めて提出した。
「······問題ありませんね。これで受理させていただきます。では今から冒険者ギルドのルールについて説明させて頂きます」
「はい。お願いします」
······う~ん、見た感じD?
いや、もしかすると·····?
「当ギルドは外からの依頼を冒険者に委託する窓口と思って頂いて構いません。依頼の内容は様々。町の雑用から魔物討伐、行商人の護衛や植物や鉱物の納品などがありますね」
まさか本当に、届いている? あの魅惑とも言われたFに······。
「ですが発足当初に無理な依頼を受ける人が殺到した為、制限と規格が付きました。それが冒険者ランクと呼ばれるものです」
確か内の姉さんがCだったから幅としては······。
「ランクは下からF、E、D、C、B、A、Sとなっています。一般的にD~Bランクが中堅と言われています」
でも彼女のを触った時は······。
「制限は簡潔に受けれる依頼は本人のランクの上下ひとつまで。そして五回以上の依頼失敗で1つランクが下がります。これは警告の様なものですがFランクのままで制限を越えてしまえばギルドから除名されてしまいますのでご注意を······まぁ、滅多にないことなので余り気にすることはありませんよ」
「はい」
なら、待て! 嘘だろう。いや、あり得ない! そんなF以上なんて······。
「······あの、聞いてます?」
「ええ、勿論です。復唱しましょうか?」
「······いえ、いいです」
なんて疑わしそうな目。
絶対聞いてなかったって思ってる目だ。
「いや、本当に聞いてましたよ? ギルドの依頼内容、それと発足当初のトラブルでランクと制限が出来たんですよね?」
「······ええ、間違いありません。疑ってしまい申し訳ありません」
「いえいえ、昔からこう言ったことは何度も言われているので」
苦笑して問題ないと伝える。
実際、何度も言われているのだ。話を真剣に聞いていた時も聞いていないだろと怒られたり。雑談の時でさえ言われてしまい、友達が減ったのは懐かしい。······そしてそんな事を言われる時は、基本全く別の事を考えている時だったりする。
「では続きを······ここからは実務面ですね。依頼の請方はあちらにある掲示板に張り付けてある物からお選びください。掲示板はランクで別れていますのでお間違いのないようお願いします」
ふむふむ
「それとは別に当ギルドは魔物素材の買い取りも行っておりますので、想定外の魔物素材を手にいれた時などにお売りください」
へぇ、これは便利。
「他に何かご質問などはありますか?」
う~ん、あっ、そうだ!
「本とかって置いてありますか? 出来れば図鑑があればいいんですけど」
「ええ、ございます。しかし借り出しは禁止されていますのでその場で読んで頂かなければいけませんが···」
「構いません。それはどこに?」
「二階の突き当たりを右、その一番奥にあります」
なら、今日は依頼はなしで引き籠ろうかな。薬草採取とかしてみたいし。
「わかりました」
「他に何か」
「いえ、ありません」
「畏まりました。では冒険者プレートをお作りしますので少々お待ちください」
「はい」
プレートってなんかそれっぽいなぁ。海外に行ってるみたいな気持ちだ。命懸けだけど·····。
「おい坊主」
「はい?」
後ろには大きいおっさんがいた。
ボールを投げればゲット出来るのだろうか。要らないけどね。
「お前、素人らしいな」
「はい、そうですよ? か弱い男ですので優しくしてくださいね?」
こっちは昔、飼育小屋の兎に負けたことすらあるんだぞ! 嘗めんなよ?
「はっ! ならお前は今から俺の舎弟だな」
「え、いやですけど?」
いやだよおっさんが兄貴なんて。それならさっきの受付のお姉さんの舎弟になりたい。そして優しく甘やかしてほしい。
「ふんっ、力の差ってのを判ってねぇみてぇだな。お前みたいな奴はCランクである俺様には勝てねぇんだよ!」
「いや、俺は貴方と勝った負けたがしたい訳ではないので······別の人達とすればいいのでは?」
単純に迷惑だ。
悪目立ちすると今後この町で活動しにくくなるから止めてほしい。
俺は貧乏なんだ。今、町を出ていける程の金がないからホント止めてほしい。
しかし、駄目だった。
ピキリと男が青筋を浮かべた。そして今にも殴り掛かろうとしているではないか。
(はっ! そう来るなら話は早い。俺の喧嘩で培った技術を受けるがいい!)
しかし、男の拳は何かに遮られ止められてしまう。
「······これは、どういうことかな?」
「あ、あんたは······『勇なる剣』カイン・トートルア」
わぁ、解説ありがとう。こんな役回りって本当にあるんだね。初めて知ったよ。
「貴方は初心者相手にこんな事をして何をやっている!」
「うっ······うるせぇ!! ちっ、折角俺様の舎弟にしてやろうと考えてやったのに······おい! お前ら行くぞ!!」
彼は彼の舎弟らしきを連れて去っていった。こちらに怒りの視線を向けながら····。しかもね? 向いているのが俺だけなの。この男は? 不公平じゃない?
「君、大丈夫だったかい?」
「はい、ありがとうございます」
「しかし君も悪い」
······はぁ?
何言ってんの? コイツ。
「こんな事になったのは君にも悪い所があったからだ。それを改めるべきだ」
······ほぉん?
悪い、所、ねぇ?
大変、大変遺憾だが、反論は止めておこう。今、変に目立つわけにはいかないのだ。
「······えぇ、貴方の言う通り。次は気をつけましょう」
「ああ、わかってくれたならいいんだ」
わかるか馬鹿。
お前、今具体的な事何一つ言ってないだろうに。一体、何を判れと言うのか。
「じゃあ、僕は行くよ」
「ええ、お疲れ様です!」
シッ! シッ! 消えろ消えろ! 塩撒いてやる!
あの勘違い野郎が立ち去った後、やっとお姉さんは帰ってきた。
「お疲れ様です」
「······はい、ありがとうございます」
流石お姉さん。
労いの言葉も爽やかだ。
「ここであんなことをするのはあの冒険者だけなのでお気になさらないでくださいね」
「ええ、勿論です」
ホントにね。
あんなのが大量に居たら町が潰れるわ!
「ありがとうございます。それでですが、こちらが冒険者プレートです。これは初回は無料でお配りしておりますが次回からの制作は銀貨一枚掛かりますのでこ了承下さい」
「はい」
あれ? お金掛かるってこれのこと? 俺、そんなに失くしそうに見えてた?
いや、もしかすると爺さんの思い違いかもしれないな。気にしないでおこう。
「プレートの機能ですが本人確認の他に町へ入る為の通行料が無料となったり、ご自身のステータスを確認することも出来ますよ」
「へぇ、通行料はこの町だけですか?」
「いいえ、ギルドがある全ての町に適応されます」
「それは嬉しいですね」
金が浮くし、これ以上隠れて外に出なくて良さそうだ。
「説明は以上です」
「ありがとうございました」
お姉さんにお礼を言って二階に上がる。
そう、楽しい読書の時間さ!
ありがとう世界。
本を生み出してくれて。
夜になるまで読み更けた。




