9話 ナナ・スリント
初めましてケルジュの町で冒険者ギルドの受付嬢をしています、ナナ・スリントです。
受付嬢は冒険者の対応から事務に雑用とやることが多く、毎日忙殺されています。いずれギルドマスターから髪をむしります。
丁度お昼が終わった辺りでしょうか。ひとりの男の子が入ってきました。執事服だったのでどこかの貴族のお使いでしょうか。
それにしても動じませんね、彼。
色んな人から睨まれたり圧力掛けられてたりしてるのに。中にはBランク上位の人もいるのですが。
なぜか今も出入り口でボウッとしています。何を見ているのかサッパリです。
少ししてようやく動き出し、私の方へと向かってきます。その為、他の冒険者の皆様ももしもの為に武器を手に掛けていました。
実は少し前に無理矢理私に手を出そうとする貴族のご息子がいまして、暴力事件にまで発展してしまったんです。······一応、その貴族の親には謝罪を貰いましたが何時報復が来るのか判らないからと親しい人達がこの様に守ってくれているんです。
ですが過剰すぎませんか?
とっ、思考が飛んでいました。執事服の彼がもう目の前にいます。面倒事ではないとよいのですが。
不安は杞憂でした。彼はどうやら冒険者になりに来たようです。ならどうして執事服を? とは思いますが先に仕事です。
説明をします。どこを見ているのか判らない顔をしています。
それでも続けます。もう顔が別の方向を向いています。
「······あの、聞いてます?」
「ええ、勿論です。復唱しましょうか?」
本当に聞いていました。あの全く聞いていないだろう態度からは考えられません。
「畏まりました。では冒険者プレートをお作りしますので少々お待ちください」
プレートを作りに奥へと行きます
戻ってくると彼――アオイさんと言います――はブルットさんに絡まれていました。
(また、ブルットさんは迷惑行為を!)
そう思い対処に当たろうと思いましたが、先程からアオイさんの態度が変わりません。つまり、話を聞いているのか分からない顔をしていました。
短期で有名なブルットさんはそれに簡単にキレてしまい殴り掛かろうとしました。
その時、何とアオイさんはちょっと笑っていたのです。それはもう愉快そうに。
しかしそれも『勇なる剣』カイン・トートルア様の登場によって消えてしまいます。残念、かっこよかったのに。
「こんな事になったのは君にも悪い所があったからだ。それを改めるべきだ」
······えっと、あの方は何を言っているのでしょうか? アオイさんは今回何もしていないのですが。
あっ、めちゃくちゃ不快です! って顔を一瞬しました!
まぁ、そう思いますよね。本当に悪い事なんてしてないですから。
しかし面倒事を避けるためか、見事な愛想笑いで対処していました。······あの方の後ろ姿に中指を立てていましたがご愛顧でしょう。
総合して、アオイさんは素でこれなのでしょう。面白いを通り越して見守っていたくなる方ですね。




