6話 セリナ・コントルーナ
今、『ケルジュ』と言う町に着いた。
私達は『勇なる剣』と呼ばれる魔王討伐用に国王が直々に作ったパーティーだ。
人数は五人。
魔法使いである私、セリナ・コントルーナ。
騎士団にいたブラウス・クレイブ。
エルフの集落では貴族的地位にいるエレイン・グリンレイズ。
王都の教会で神父をしていたフール・ベンジャー。
そして女神に選ばれた今代の勇者であるカイル・トートルア。
以前勇者が確認されたのは200年前らしいから本当に珍しい存在。 彼は国家間での命題でもある魔王を倒すのに尽力してくれるし、何よりも曲がったことが嫌いな性格には好感が持てる。······ただ、真っ直ぐ過ぎるきらいがあるから、そこだけは不安ね。
「今度の町はどんなかしら。楽しみね」
ボンヤリと考え込んでいるとエレインが楽しそうに話しかけてくる。
「ええ、そうね」
「そうだな、どんな酒があるのか、とかか?」
苦笑を浮かべながら返事をすると後ろから言葉を放ってくるブラウス。
「ブラウスには聞いてませ~ん!」
「相変わらず生意気だな。······ペッタン」
「殺すわよ!?」
「やってみやがれ!」
ブラウスは見事エレインのコンプレックスを擽り、戦闘に持ち込んだ。余計な一言さえなかったらモテるのに······。
「ほ、ほら。二人とも、喧嘩は止めておけ」
「「うるさい!!」」
困ったようにカイルは喧嘩の仲裁をしようとしていた。困るようなら止めておけばいいのに。
「彼等は相変わらずですね」
「それは、貴方もでしょうに」
最後の一人であるフールが話しかけてくる。彼は私と同じで面倒事には関わりたくないのだろう。喧嘩が起これば毎回直ぐ様退避していた。
「はぁ、貴方達。もう町に着くのだから止めておきなさい」
本当に喧嘩は止めてほしい。
□□□
「『勇なる剣』だ!」
「勇者だ!」
「ああ、凛々しいわ。セリナ様!」
ケルジュの町の住民は私達をとても歓迎してくれていた。でもこれはまだ王国民だからに過ぎない。他国に入ればこうはいかないでしょうね。気を引き締めておかないと。
「くはは、全員がこっちを見てやがるぜ」
「まぁ、当然よ。だって私がいるもの」
きっと二人も目立って悪い気はしていないんでしょう。その顔は明らかに楽しそうだ。
それと正反対なのがカイルとフール。彼等の顔はバレない程度に引き吊っている。こんな目立つ行為は得意ではないらしい。
私は特に何も感じていなかった。
魔法師団、副団長としての立場に立っていたからかいつの間にか緊張しなくなっていたからだ。
ふと、視線を感じた。
そこらから視線は受けているのに『それ』の視線はとても私に響いた。そちらを見ると大して珍しくもない黒髪に青い瞳。執事服を着ている男だった。因みに顔はかなり良かった。
でも、視線の意味が理解できない。悪感情を抱いているわけではないし、良い感情も浮かべていない。
――観察
この言葉が適切な気がした。
(···苦手なのよね、この視線。『監視長』に似た視線をしている)
思わず視線を逸らした。
「ん? どうかしたましたか、セリナさん?」
「いえ、なんでもないの」
カイルが心配してくれたが話すつもりはなかった。どうせ実害はないのだ。これ以上気にするのは止めておきましょう。
最後の意味を込めて彼に目を向ける。
(······いない?)
彼は、どこにもいなかった。




