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7 次の難問??

 「あ、マコトさん! またあのボールペンってやつ譲ってもらってもいいかな??」


 「もちろんですよ! 今度持ってきますね!!」


 「おぉ、それはありがたい! 代金は…」


 「この前と一緒で、料理をご馳走してくれたらいいですよ!!」


 「そうか! なら腕によりをかけて作らせてもらうぜ。」


 ハハハハッ!! 真がマリン村にある料理屋の店主に答えると、店主は力こぶを見せ豪快に笑って見せる。

 その姿に真も笑い返し、右手を振りその場を後にしていった。


 俺がこの世界に来て早2週間が経過した。どうやらこの世界は元の世界と時間の経過が殆ど同じらしく、その点ではあまり苦労をしていない。

 そしてこの2週間、ミュート事件と呼ばせてもらうが、あの鳥野郎の騒動から俺なりにこの世界、そしてあのホームセンターの事を調べてみた。


 まずはこの世界。ここはどうやら完全にアリストファンタジアの世界という訳ではなく、よく似た世界だということが分かった。

 元々ゲームに登場するキャラもいれば、全く関係ない人物が出て来たりとおかしいとは思っていたが、決定的だったのが魔法の存在だ。

 アリストファンタジアではほぼすべての者が魔法を使えていたが、この世界では魔法を使える者は多くない。

 これはまだ勇者がアリストファンタジアの魔法という概念が伝えてから200年しか経過していないためと推測している。


 そして次に俺のスキル《ホームセンター》の事だ。

 見れば見るほどふざけたスキルなんだが、これは思いのほか便利なものだということが判明した。

 あのホームセンターは俺の意思で場所を動かす、さらには消すことも出来る様だった。

 ただ、何もせずホームセンターから一定以上離れ、尚且つ1時間その状態が続くと俺の近くにある広間に移動してくることも判明した。

 これで何故最初にホームセンターがミスト家の敷地内に突然現れたのか理解できた。 


 そしてあのホームセンター内にある物は、どうやら一日たてば元通りに戻っている。つまり中の物を運び出してもまた同じ数になっているということだ。

 だが、万能という訳ではない。まぁよく考えればスキル、つまり俺の魔力でホームセンターは具現化しているわけだから当然と言えば当然なのだが、一度に多くの物を運び出し過ぎると俺の魔力が足りなくなりホームセンターが元通りになるまでの間、長い時では数日間も眠り続けることになる。

 ただ、店の中が再生しても外に持ち出したものが消えることは無かった。つまり理論上はほぼ無限に数を増やすことが出来るということだ。


 これはミュートの小屋作りに再び木材などを先日以上に提供した際に起こったことだが、基準としてはボールペンなどの小さなものは再生にあまり魔力を消費しない。

 しかし、木材や機械類など大きく複雑な物を大量に持ち出すと眠りに落ちてしまうのだ。

 その上電気を使う機械類だけは先に述べたことが当てはまらず、屋外に置いていても一日たてば消えてしまうということが判明した。


 そしてもう一つ、判明したのが…。


 「マコト様ー!! おはようございます!!! 今日も朝が早いんですね!!」


 「あ、おはようございます、ユイさん!! そうなんです、何か朝になると野菜に水やりをしないと落ち付かなくて…。」


 ザァァァァァ…。俺は街からミスト家屋敷内にあるホームセンターに戻ってくると、入り口前に置かれている野菜の苗に水を与えていた。

 すると屋敷の中からいつものようにユイが現れ野菜の世話を手伝い始める。

 

 「それにしてもマコト様の持っている野菜はどれも見たこと無い物ばかりですね! どんな味がするんだろう…。」


 「そうですねー…。このトマトという野菜はとても甘くておいしい品種ですよ。果物なんかより甘みが強いくらいですから。」


 「えぇ!! 野菜の実が果物よりも?! 普通果物でも酸味が強く食べれないものが多いのに…。うーん、いくら何でも信じられないなぁ…。。」


 「いえいえ、本当ですよ!? 今屋敷の方で育ててるトマトの実が付けば食べてみてくださいよ! そしたら俺の言ってることが本当だって分かるから!!」


 「フフフフッ、そうですね。では楽しみにしています!」


 ユイはそう答えると、慣れた手つきでもう一つのシャワーホースを蛇口にセットしまだ水がまかれていない野菜たちに水を与えていった。


 はぁ~、慣れたもんだな。最初は水が出ただけで驚いていたのに。

 この水や電気も恐らく俺の魔力が変換されている物なんだろうな…。あまり使いすぎないようにしないと。


 真は笑みを浮かべながら水を与えているユイの姿をしばらく見つめた後、目の前の苗の前にしゃがみ込んだ。

 だが目の前にある苗が置かれている場所には所々苗が無くなっている個所があった。

 これこそが、真が気づいたもう一つの事である。


 野菜はこのホームセンター内にある限り、今の状態から成長することは無い。

 これはかなり初めに気づいていたことだが、ユイさんの願いでミスト家の敷地内にいくつかの苗を植えて気づいたことがもう一つある。

 それは野菜、いや植物の苗や種だけは持ちだしても数が再生しないということ。

 つまり、これに関して言えばここにある物が無くなれば二度と生み出すことが出来ないのだ。


 「…植物は生きているものだからなのかなぁ。」


 「マコト様!! お水全てあげ終わりました! あれ? どうかされました??」


 「あ、いえ! 何でもないですよ!! いつもありがとうございますユイさん!」


 「は、はい! これ位しかお役に立てないですから……、あれ、あれは…。」 


 俺が側まで戻ってきたユイの言葉に立ち上がり答えると、ユイは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 しかし、しばらくして屋敷の方角に視線を向け悲しげな表情を浮かべ小さく呟いた。

 そのことが気になり、俺もユイが見つめている方角に視線を向けると、そこにはディルハルトに何度も頭を下げる数人の男性たちがいたのだった。


 「あれは、農民の方達ですか?? 何やら深刻そうな顔でしたけど…。」


 「……はい。彼らは農民の代表の方達ですね。」


 ユイは真の言葉に更に悲しげな表情を浮かべた。

 真が何が起きているのか尋ねようとしたところ、代表の3人が去った後困ったように後頭部に手を当てていたディルハルトが真の存在に気が付き、真達の元へと進んできたのだった。


 ディルハルトはホームセンターまで進んでくると、真剣な面持ちで真に口を開く。


 「マコト殿。すこしいいだろうか??」


 「えっ、あ、はい。どうされましたかディルハルトさん?」


 「お父様! これ以上マコト様にご迷惑をかけては…」


 「う、うむ。分かっているのだが、他に頼れる者もおらぬのだ。」


 「そ、そうかも知れませんが……」


 な、なんだ?? 2人とも難しい顔をしているけど、俺を困らせる?? さっぱり分からない。


 「2人とも落ち着きましょ? それよりも話がさっぱり掴めないのですが、何かあったのですか??」


 俺の言葉にディルハルトもユイもしばらく口を開かなかった。

 だが意を決したようにディルハルトは目線を俺に向け、次の瞬間には勢いよく頭を下げていた。


 「たのむマコト殿! どうか力を貸してほしい!!」


 「ちょ、ちょっとディルハルトさん!? 頭を上げてください!! てか、何を言っているのかまず説明を……。」


 「う、うむ。それもそうだな。実は……」


 頭を上げたディルハルトは、何が起きているのかゆっくりと話し始めた。











 「なるほど、そう言うことですか…。」


 しばらくして話を聞き終えた俺は、移動してきたホームセンター入り口近くにある売り物のベンチに腰を下ろした。

 もちろん、ディルハルト、ユイの2人もそれぞれ置かれている椅子に腰を下ろしている。


 まぁ、農民という所で察しは付いていたけどやっぱり植物が育たないという相談だったのか。

 しかも今年は種や苗を植えても例年以上に育たず多くの農地が手つかずの状態だとか。

 このままでは今年の税を収められないので、税の免除をお願いに来たということらしい。


 確かにこの世界は魔法はあっても文明レベルは中世?位な感じだからな、こういう問題も当然起きるだろうけど…。

 税が収められないとなるとディルハルトさんも死活問題なんだろうな。


 「それで、俺に手を貸してほしいということですね?」


 「うむ。ミュート様の小屋を作り上げた時のマコト殿の力を見てどうにか手助けをしてもらえないかと。」


 「うーん、手助けと言われましても…。俺も万能ということではないのでお力になれるかどうかは…。」


 「…そうか、いや、今の事は忘れてくれ! 突然このような事を言ってすまぬかったな!」


 パンッ! ディルハルトは俺の答えを聞くと、両足を勢いよく叩き立ち上がる。

 そして何とか笑みを作りその場を後にしようとしたのだった。


 これでいいのか? 俺みたいな得体のしれない奴を屋敷に置いてくれてるような人だぞ? 

 税の免除も受け入れるに決まっているし、そうなれば王国内でのディルハルトさんの立場だって悪くなるだろう。

 それに俺によくしてくれてる村の人達だって食料が無くなれば……。

 一応俺は農業大学を出てるし農業の基礎知識は頭に入っている。

 ……はぁ、仕方ないか。


 「ディルハルトさん! 待ってください!!」


 「な、何かなマコト殿!?」


 俺は勢いよく立ち上がり、ホームセンターを後にしようとしていたディルハルトに声をかけた。

 その声でディルハルトは驚いたようにこちらへと振り返る。


 「俺にどこまでできるかは分かりませんが、力にならせてください! ディルハルトさん、いやこの村の人達にはお世話になりっぱなしなんです。少しでもお役に立てるなら喜んで手助けしますよ!!」


 「ほ、本当か?! ありがたい! 流石は勇者様と同じ国から来たマコト殿だ! では早速準備を致す故少し待っていてもらえるか!? おい! ジルタ―!! 村に行くぞ!!!」


 ディルハルトは先ほどまでとは打って変わり満面の笑顔でその場から立ち去っていく。


 「あーぁ、もう行っちゃったよ……。」


 「フフフッ、マコト様の申し出が本当に嬉しかったのでしょう。」


 (おいマコト! どうしてあの男は血相を変えて走っていったのだ??)


 バサバサッ!! ユイがディルハルトの姿に笑みを浮かべていると、日課の朝の散歩?から戻ってきたミュートが俺達の目の前に降り立った。

 どうやら空からディルハルトが屋敷の中へ飛び込んでいったのを見ていたらしい。


 「今日は早いお戻りですね、ミュート様。」


 (うむ! ユイも元気そうで何よりだ。)


 ユイはミュートの側まで近づくと、その翼を優しく撫でていく。

 ユイはミュートの言葉は分からない。だがこの屋敷の中で最も世話をしているのはユイであったことからミュートもユイには体を触られても気にしていないようであった。


 そうだ、お前いいところに戻ってきたな! 少し手伝ってくれ。


 (なんだ? 何か我の力を借りたいことがあるのか??)


 ああ。多分結構な荷物になると思うから、それを運ぶのを手伝ってほしいんだ。


 (はぁ…、全くお前位だぞ我にそのような事を頼んでくるのは。)


 なんだ? 別に無理ならいいんだ、他の人に頼むから。


 (む、無理とは言っておらん! 仕方がないな、今回だけは手伝ってやるとするか!)


 ふっ、相変わらずちょろいな。

 

 「ではユイさん、ディルハルトさんが戻ってくる前にこちらも準備をしましょう。道具を運ぶのを手伝ってくれますか?」


 「は、はい! もちろんです!」


 俺はミュートが照れながら答えた後、隣にいるユイへと視線を移した。

 そして、体が大きすぎて店の中に入ることが出来ないミュートを外に残し、入り口に置かれているカートを手に見せの中へと入っていった。

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