うちの一族のことを知ってください2 &勘違い
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「レミリア、なんて顔をしているのです?」
あ……きっといつも通りだらしない顔をしているだろうな。
ドレスに入ったミストラル家の紋章と品位に傷がついてしまう……。
それだけは絶対に避けなければ!
「―――で、なんでおじいちゃん泣いているのです??」
またか、と思いつつも突っ込まざるを得なかった。にしても、さっきもやった気がするぞ、そのやり取りは。
「いやあ、レミリアがここまで大きくなるとはなぁ。孫の成長が嬉しくてつい、な。」
「……おじいちゃん、孫がどれだけ居ると思ってるんです……? しかも、ブックマンですよ?」
ブックマンの成長は早い。
魔界を出る頃の私は今と大して変わらないはずだ。
それに、長寿のブックマンは必然的に子どもも多くなる。
繁殖力は他の魔物や魔族に劣るものの、子どもを産める期間も長い。
孫同士でも会ったことが無い人間は多いほどだ。
「この年寄りは何かにつけ泣ける理由を探しているだけですよ。嘆かわしい」
「年をとると涙腺が緩んでしまってな……。それに孫は全て可愛く思うよ。まぁ、その中でもレミリアは特に、だがね」
悪態をつくおばあちゃんと、機嫌を取ろうとするおじいちゃん。
硬軟織り交ざる良い夫婦だと思う。
「……それ、他の孫にも言ってませんか?」
「いかに子孫が多くとも、人間との子どもは少ないからな。否が応でも目にはつくよ。もしかしたら、他の孫には贔屓に見えたこともあるかもしれん。甘やかした自覚は持っておるし」
「あー、確かに半分ですがねー」
「ですが、レミリア、あなたの能力は半分どころではありませんよ。歴代のブックマンでも上位だと思います。それは、あなたも記憶の引き継ぎをしているから、何となくでも判断がつくでしょう?」
いや、それが全く思っていないんですよ。
だって、記憶の引き継ぎってことは、誰かしらがやったこと、出来たことなワケで……。
誰かがやったことの復習なんてのは、新しい発見・発明よりも遥かに容易いと思うじゃないですか?
私のオリジナルなんて、特性魔法のアンタッチャブルくらいなもので、特性魔法なんてのは、大体みんな持っている個性の一つに過ぎないワケで……。
例えば、おばあちゃんの特性魔法のピンポイントだって、アンタッチャブルで出来ないことはない。
障壁を作り出して思い通りのところへレールを作る。で、圧縮した障壁を一気に解放することで放つ。
『モノマネ』の域を出ないだろうけど、私のアンタッチャブルも同じようなことは誰かしら出来るはず。
故に、ただの個性。
オリジナルとは、マリさんのブレイブみたいなものを言うのだ。
想いの強さがそのまま強さに変わる。
そんな論理を一切無視したような力のことだと思う。
「やはり、レミちゃんはブックマンでも優秀だったのね!」
「正直に申し上げれば、他の者と比べて人間的にも優秀かと存じます。これは、爺の孫贔屓ではなく長としての目で見ても明らかであります」
みんなどうしました? 急に褒め殺しですか?
「私共、ブックマンは研究に没頭するか、探索で放浪するか、もしくは収集に重きを置く傾向がございます。そのせいか、生活能力や社交性を著しく欠く者も多くおりまして……」
確かに。
未知を知ることが何より楽しい私たちの種族は、とんでもない行動を平気で行う。
先ほどの外の惨状を見れば、どれほど自分勝手に振る舞うかは分かるだろう。
「その点においても、レミリアはキチンと育ってくれました。妻の指導もあるとは思いますが」
「それ以外にも、予習復習をするのはレミリアだけでしたね。これも、ブックマンには珍しいことです」
生まれた時から知識を持っているため、予習復習を怠るやつも多い。
更には、学校の勉強を蔑ろにすることも少なくない。
未知以外のものは学ぶものではない、とでも思っているのだろう。
「なるほど。本人の努力も―――努力出来る才能も持っているのですね」
「左様ですな」
「ただ私が一番買っているのは、戦闘能力ですけどね」
「え、マリさん何を言ってるんですか?」
「戦闘能力ですか?」
「はい。最近、訓練でも手こずります」
「いや、絶対嘘ですって、いつも完封されるじゃないですか」
移民局は戦闘訓練が義務化されている。
マリさんはよく私を誘ってくれるが、到底マリさんの訓練にはなっていない。
アンタッチャブルをフルに使っても、いかに魔力行使しても、バフをかけても、初見では対応が難しいマイナーな拳法も、とにかくありとあらゆる手段を使っても、その数秒―――いや、その数瞬後には転がっている。
「んーこう言うと角が立つかもしれないけど、移民局なら係長でも同じような感じよ?」
「えっ?」
「むしろ係長は杓子定規だから、与し易いかもしれないわねー。私の見立てではレミちゃんと互角かな?」
「今度久しぶりに係長と組手してみますかね……」
「ダメー! レミちゃんは私とじゃなきゃ! 退屈になっちゃうじゃない?」
いや、『先輩』、訓練ですからね? 業務の中でのことですからね?
「そこまでミストラル家の方に評価頂くとは光栄ですな。では、レミリアはよろしくお願い致します」
「ええ、もちろんです」
「まだ若く、お召抱えには至らない点もございますが、先に申し上げた通り、努力を欠かさず同じ失敗は致しません故、何卒、ご寛容な処置を重ねてお願い申し上げます」
「はいぃっ?」
お召抱え!? 一体何を言ってるんですか!?
マリさんも素っ頓狂な声を上げているじゃないですか!?




