ドレスを見せます!
「さて、お客様を待たせるのも良くありませんからね」
というと、私の服を引っぺがして強引にドレスを着付け始める。
「うん、やはり引っかかるものがないのでスルッと入りますね」
「……」
「丈も袖も良さそう。これなら特にお直しも必要なさそうです。問題無し、と」
「だ……い、もんだ、い……で、しゅ」
「何を言ってるんですか?」
「い、きが……」
「……む、締め過ぎましたか……」
ドレスの下に着込むコルセットだかビスチェだかが私の肋骨をきつく締め付け、呼吸がままならなくなっていた。
段々と脚に力が入らなくなっていく。今度は比喩などではない。
「あら、大変」
大変とは言うものの、その素振りを感じさせることもなく、私を支えながら、ドレスのファスナーを開きながらビスチェを緩めてくれる。
「ヒューハー、ゼーハアー……」
「……これくらいなら大丈夫そうですね。少し髪もいじりましょう」
こちらの呼吸がまだ整いきらないうちに、再びの着付けを終わらせ、私の頭に手をやる。
鏡が無いのでよく分からないけど、ボブの長さでいじることもそんな出来ないだろうに。
それにも関わらず、髪から伝わる動作は引っ張ったり捻じったりと忙しそうだ。
「よし、出来ましたよ。あとはこれでも着けておきましょう」
背後でパチッと音がすると、おばあちゃんが肩を軽く叩く。
どうやら終わったようだ。
首元に風を感じることが出来、後頭部の重心の変化も感じる。
「では、ミストラル様にチェックしてもらいましょうか」
私の答えや反応はどうでもいいようで、ササッと部屋から出ていってしまう。
それに着いていき、おじいちゃんの部屋の前に来ると、ちょっと緊張してきた。
変とか言われないかな? それとも、勝手にうちの紋章使うなとか言われたりするかな?
そんな私の心配をよそに、おばあちゃんはとっとと中に入ってしまうし……。
うー、どうしよう、勇気が出てこない。
「おや、レミリアはどうしたのかね?」
「あの子なら扉の前で突っ立っていますよ。どうせ恥ずかしいのでしょう」
「確かに。学校の制服なんかも最初は見せてくれなかったな」
「何にせよ見せることになるのですから、恥ずかしがるだけ無駄というものですけどね」
くそ、好き勝手言ってくれる……。
そりゃ、いつかはみせるんだけど、ね?
「レミリア、いつまでミストラル様を待たせるんです。早くなさい!」
やばい、ちょっと怒ってきている。
それでもまだ踏ん切りがつかない。
「レミちゃーん、おいでー?」
「はーい! ……はっ!?」
せめて綺麗な仕草や姿勢をしながら入ろうとしたのに、いつもと変わらず出ていってしまった。
「~~~~~~~~~あ、あの、あの、えと、その」
「素敵ね!」
柏手を打ちながら、マリさんは私をそう評した。
「うんうん、やっぱり黒が似合うと思ったわ。それにレースの模様はうちの紋章なのね、気を遣ってもらったのかしら? だとしたらごめんなさいね?」
「いえ、私が勝手ながらレミリアにこちらのドレスを勧めました。五代目より賜ったものですが、家紋に傷がつくようでしたら、選び直して参りますが?」
「あら、五代目が差し上げたものなのね? それなら是非エイプリル家の人に着てもらってほしいです」
「ありがとうございます。良かったですね、レミリア?」
「……変じゃ、ないです?」
恥ずかしくて、チラチラとマリさんの顔見るだけで精いっぱいだ。
そのマリさんは笑みを浮かべながら、こちらに近づいてくる。やめて、心臓が爆発する……。
「とっても可愛いわ。編み込んでアップみたいにまとめた髪もね」
「あ、あの、ドレス、なんですが、その……マリさんの本に似てた、やつ、です」
ああー、上手く言葉が出てこない。
「私がさっき雑誌で勧めてくれたものを覚えててくれたのね! ありがとう!」
そういうと、私の頭をそっと撫でて、ハグしてくれた。
あ、今日私は死んでもいいかもしれない。




