交渉
<業務日報>
フランツ・ハイデルベルク、カティア・マクドナルド、エル・スチュアート、アール・スチュアート、トラキア・エルシュタットの転生者五名を、マリ・ミストラル同伴のもと確保。
その際に、親交を深めるために、異世界より伝わった遊び(デコピン、高い高い、あっぷっぷっぷ、おしりぺんぺん)を行うも、アクシデントの為四名が気絶。
一名が暴れたため、麻酔銃にて拘束を行う。
別件にて同現場に出向いたミサ・ヤスモトの航空機へ引き渡した。
「こんな感じで日報はいいですかね?」
「バッチリ! そしたら―――――――洗いざらい吐いてもらいましょうか」
ヤスモトさんの航空機内、中心に居るボスと壁際の五人へ話しかける。
拷問とかはしたくないんだけど、やむを得ないかな?
「まぁ、何を企んでいるのか分からないけど、あなた達五人は奇襲をかけた上で、スーツも何も装備していない私たちに瞬殺されたのよ? 吐いた方が身のためだと思うんだけどなぁ?」
「……吐いてどうなる?」
他の子どもが顔を見合わせてうろたえる中、中央に居るボスが口を開く。
「本来なら刑務所送りだけど内容次第では、何かしらの便宜が」
「分かった。私が話そう。その代わりこいつらには何もしないで欲しい」
「オッケー」
「では、まずは何が聞きたい」
「そうね、あなた方の目的と、何故移民局への出頭を拒んだのか、あたりからかな?」
「……目的か……」
静かに語りを私たちは聞いていた。
男の名前はアルフレッド・コード。
転生前は、ヤスダユウイチロウというらしい。
そして、ヤスダの最終的な目標は、転生者による革命であった。
同じ学校に、転生者が集まっていることは運命とさえ感じたそうだ。
「この世界は、転生者を歯車として見ている。私はそれが嫌なのだ、有り体に言えばな。しかし、物語のように勇者であったり、チートめいた力を持っているわけではない。相対的にな」
まぁ、転生者に限らず、私たちだって国の歯車ではあるんだけど。
異世界で勇者扱いされたいのに、この世界に来てしまったのなら可哀想だな。
「故に、私たちはそのまま仲間を集めつつ、ゆっくりと仲間を増やしていこう、ということになった。もちろん私たちの研鑽も含めてな。仕事についてしまえば、時間的な制約も出てくるだろう。だから移民局に出頭しなかった。また大層な理由もなく、子どもの今の生活が良いという者も居るが」
確かに子どもに戻りたい時はある。
力を蓄えるのも良い判断だと思う。
「さ、本来はこんなことを聞きたいわけではないのだろう?」
「……話が早いわ。転生民として働かないかしら?」
「危害を加えようとした人間に、働け、か」
「歯車を否定していたけど、それも悪いものじゃないわよ?」
「そうか……。なら仲間を逮捕ではなく、勤務ということにはしてもらえないか?」
「あら、あなたは?」
「国に刃向かったのだ、どう考えても刑は逃れられないはずだ」
「あー、大丈夫ですよ」
「なに?」
押し黙っていたヤスモトさんが端末から映像を出す。
「これ、私の今日の日報とあなたの報告書。なにもトラブルがありませんでした、って書いてあります」
「ま、そういうことよ。うちとしては犯罪者が多くなると、やはり始末すべきだ! っていう風潮になるのが怖いのよね。転生者のイメージなんて直ぐに悪くなるし」
「……しかし、お前にとってメリットが無い」
「あー、私はね、偉くなって国を変えたいの。あなたみたいな革命とか言う野蛮なやり方じゃなくてね」
「…………国を……内部から変えるのか」
「そう、だから実績も沢山詰まないといけないのよ。それがメリット」
「その割には私たちを捕らえた武力を喧伝しないのだな」
「だってそれじゃあ――――――スマートな感じがしないじゃない?」




