お仕事の打ち合わせは大概こんな感じで決まります。
「スマート……か」
「はっきり言って、武力蜂起をして変えられるほど、この世界―――この国は狭いものじゃないわ」
「なら―――お前は国をどう変える?」
「皆が笑顔になれる国を作るわ」
険しい顔の少年と対照的に、先輩はニコニコと答える。
「……本音を言う気は無い……か」
「あら、本心で言っているのだけど?」
「まぁいい……。お前のその考えに乗ってやろう―――国と契約を結ぶ」
「ありがとう」
「で、対価は?」
「……さっき、『無い』って言ったじゃない?」
「……あぁ、そういうこと、か」
「そういうこと、貸し一つ、ね」
「そうだな……」
「よし、そしたらヤスモトさん、あとで合流しましょう。運搬まとめて頼んでも大丈夫?」
「ええ、拘束もしっかりしてありますし、問題ないかと」
「じゃあよろしく~」
話が決まると、航空機から離れ、ササッと車に乗り込んだ。
私もヤスモトさんに会釈をしたのち、先輩を追いかける。
車の運転は先輩がやってくれるみたいだ。
「―――先輩、報告書なんですが、何か指定はありますか?」
車の扉を閉めた後、私は今後の流れについて質問した。
「流石ね。そうねー、概ねいつもどおりで構わないわ。まだ分からないこともあるけど、エル・スチュアートとトラキア・エルシュタットの報告書は、私と一緒に作成してほしいかなー」
「エルもですか? トラキアはともかく……」
名士であるエルシュタットをどうこうするのはともかく、エルは生まれも育ちも普通の庶民だ。
「……アールの方が御しやすいのでは?」
「あの六人の中でエルは間違いなくサブリーダーよ。まだどうなるか分からないけど『使える』のなら優秀な方が良いわ」
感情の無い顔と声で、先輩は私に伝える。
「局についたら、その二人以外の三人の報告書を優先でお願いね。私は他部署に回ってくるから」
「分かりました。そしたら、アールもなるべく後に回しますか?」
「そうね、そうしてくれるといいかしら、私も聞き取りと契約の際に同席したいわ」
「ではそのように。ヤスモトさんの方はどうしますか?」
「まぁ、ほとんど聞き取りは終わっているし、自供もあるから、直ぐに終わると思うから余った時間は談笑してもらうように伝えておくわ。多分、同郷の類でしょ、名前の感じからして」
確かに、なんか名前の感じが似ている気がする。
「―――で、レミちゃんって、どこまで気付いてるの?」
「……おっしゃっている意味が……」
「はぐらかそうとする姿勢は買うわ。ただ、そういうのは私は好きじゃないなー」
「すみません、『何』を『どこ』までなのかが判断が付きませんでした。あの六人の処遇について、でしょうか?」
「そういうこと」
とても嬉しそうな声を上げる先輩。
私が、思わせぶりな問いへ返答したり、行動の機微に気づくといつも先輩は嬉しそうになっている。
私もそんな先輩が大好きだ。
「そうですね、上からどのように言われるか分かりませんが、あのボス格の少年―――コードと言いましたっけね? その子を手駒にしたいのだと、感じてます」
「あら、『手駒』なんて酷いわ~」
「ふふ、『使える』呼ばわりしたのは先輩が先ですよ」
「そうだったかしら?」
両手を肩の高さまで上げ、首をかしげておどけるが、運転中はやめてもらいたい。
「そうですよー。で、トラキアは家の繋がりもありますから、『色々な』交渉がしやすい。ハイデルベルグも名士ではありますが、勇者パーティの血筋であるトラキアの方が勝る、と」
「いいわねー、鋭いわレミちゃん!」
「ただ、エルに関しては分かりませんでした」
「これは私もまだ決めてはいないんだけどねー。あの二人が転生前も血縁関係にあるのかも知りたかったり」
「もしそうなら、片割れを手元か監視下には置きたいですね」
「そゆこと。で、置くなら優秀な方、ってこと」
これが今後、どういった手駒になるのかは分からないけども理にかなったやり方ではあると思った。
けれども―――
「私のことをドライとか言いますが、先輩も先輩で、いえ、先輩の方がドライですよね」
「知らなかったのかしら?」
「いえ、存じておりました」
二人して声を出して笑ってしまう。
車はよどみなく道路を進み、局までスムースに進む。
嬉しそうな先輩と仕事とは関係の無い会話しながら。
これが仕事じゃなかったらなぁ……。




