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入ってきたのは小太りなおっさ……んんッ!
背が低くてふくよかな殿方でした。
ほほほ、言葉って大事。
しかしながらこのユリア、王女宮を預かる者としてこの人を見たことありませんね……。
責任者の一人として、関連部署の役職持ちはほぼ名前も顔も一致できるよう頑張ってるんですが。
流石に城内で働く役職持ち全員とは申しませんよ!
自分が直接関わり合いがある部署の人だけね!!
それだけでも半端ない数なんですよ本当に。
ですから関係部署の役職持ちの方だけでも顔と名前を一致させておかないといけないわけですが……あちらの方は存じ上げませんね。
体調不良や身内の不幸など、急な役職交代とかはどこでもあり得ますからそれかな? とも思いましたが関連部署でその報告を聞いたことはありませんし、なんといってもあの方は役職持ちならつけているであろう装飾品を身につけておられない。
(ってことは、一般職員)
一般職員がわざわざ王宮側に出向いて?
あえてやんわりした言い方をするなら執拗なほど無駄な力でドアを叩きまくって?
挙げ句にドアが開いたら開いたで挨拶も碌にせずズカズカと入ってくる輩がですか。
すーっと頭の中が冷えていく感じがしましたね。
「失礼する、王女宮筆頭殿! 一体何のおつもりですかな!!」
「どなた? まずは所属と名を名乗るべきでしょう。何者かも言えないならば力尽くでも排除することが許されていますよ、王宮側の責任者としてね」
どうも貴族のように見えますが、丁寧に接することも遠回しに何か言ってあげる必要もなさそうなので今回はストレートに言ってみました。
ええ、ええ、後ろでライアンが『是非そうしましょう』みたいな顔をしているのが気になるところですが……ちらりと横目で見たメイナもライアンに向かって頷くんじゃありません。
なんだきみら血の気多いな?
「それで? 名乗る名前はありますか」
「……王宮リネンの総合管理部、内勤のゲルググ」
「王宮リネンの総合管理部ですか。それで何のご用です?」
王宮リネンの総合管理部――読んでそのままの部署ですね!
雑巾一枚に至るまで、衣服以外の布という布を管理する部署です。
各部署で予算の割り当ての中で買いますが――例えば、プリメラさまの部屋のカーテンとかね?
そういうのも含めて、予算内でリネンをこれだけ使いましたよ、部署でのシーツやテーブルクロスは最低でも何枚必要です、という書類をこちらだけでもなくあちらも管理しているのですが……。
王女宮はともかく、外宮や内宮は人もものも多いので、そのリネン類は倉庫で総合管理部が管理してくれているってのもあります。
ちなみに王女宮ではタオルとテーブルクロス、絨毯を倉庫に預けてますね!!
ほらー、絨毯とかって季節ものですから。
柄とか流行もありますし……カーテンなんかもそう。
テーブルクロスに至っては年代物のレースものとかは骨董品でもありますが、質も良いし美しいから機会があれば使いたいので保管もしたいし……ってな感じで倉庫にあるのです。
人が少ないからと言って宮の管理は別物です!
それにしてゲルググさんとはちょっと個性的なお名前だなあ。
私のようによくある名前とは対極的ですね。
そのゲルググさんは私を睨み付けてビシィッと書類を突きつけて来ました。
それは見覚えのあるものです。
――そう、私が『再提出』とハンコを押して返したものでした。
「ああ、これですか。これが何か?」
「何かですと!? 一体何が問題で何回も戻されるのですか!」
「読めないからですけど!? そうお伝えしてますよね!?」
書類上、最も致命的だろうが!




