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「はー。マール侯爵令嬢までいなくてよかったわー、本当に」
思わず漏れた本音にいけない、と自分でも苦笑しました。
マール夫人が以前のままで、スカーレット……というかピジョット侯爵家に負けないようご息女を友人または侍女として送り込んでくる可能性はありました。
こういうのって本人たちの意向はあまり関係ありませんのでね。
(……思ったより、マール侯爵本人も曲者だったし……はあ、本当に高位貴族ってのは厄介な人が多いわ)
みんな言いたいことはあるだろうけれど、私としてはその印象が強めですね!
そうでもなきゃやってられないんでしょうけども……。
何せ高位貴族は名前と共に背負うのは、名誉と体面だけではありません。
自分たちの家族、親族、家臣団、なんだったら領民たちのことまで含めてのことであり、高位になればなるほどその範囲は大きくなるのですからただのんびりと構えるだけでは生きていけないのでしょう。
理屈はわかる。
わかるけども、それと相対したいか? と問われると答えはノーです。
勿論一択ですとも!!
私はただの一般人ですからね。
役職持ちでそこそこのつながりがあるとはいえ、長所は真面目ってだけの一般人ですからね!(強調)
「……結局もしかしなくてもこれってあれね、私に貴族としての経験を積ませようっていう作為を感じるわ……!」
思わず口に出してしまいましたが、多分そう言うことでしょう。
誰が仕組んだのかって?
まあ陛下でしょうね、ええ、うん。
高位貴族相手でも上手いこと立ち回れるか絶対どこかでチェックしてますよあの方は。
(多分あとは、マール侯爵に何か仕掛けているんでしょうけど……そこまではこちらで把握できないし、する必要もないってところかな……)
大変厄介です、厄介ですよ。
とはいえ私は今回、きちんと『正解』を選んで行動できたと思います。
マール侯爵が持ってきた目録の中からきちんと問題ない品を選び、アッチを立ててコッチを立てて……と今の貴族たちのパワーバランスを頭に頑張りましたから。
おそらく貴族としての立ち居振る舞いとしても、侍女としても、及第点どころか花丸をいただいてもいいのでは?
(結果はボーナスで! ……なーんてね)
さすがにそんなことは期待しておりません。
いえ、ちょびっとは。
思うくらいは、許していただいても……。
(あとでプリメラさまのご様子も確認しなければ)
変に気になさるところはなかったと思うけれど。
マール夫人に関しては……きっとマール侯爵がしっかりと監督してくださるでしょうから、そこは気にしないことにします。
あちらの……家臣のウーノだかビーノだか、そんなお名前の男爵家の方は今後どこかでお目にかかることもないでしょうし……。
私は荷物を片付けて、応接室を後にしました。
そして数歩進んだところで立ち止まって――振り返ることなく、声をかけました。
「とりあえずこれで一段落。……そうでしょう? ニコラス殿」
「いやーはははバレちゃいました?」
「勝手に入ってくるとは不届き者としてセバスチャンさんに後でお説教してもらった方がよろしいかしら」
「うわ、止めてくださいよいや割と本当に」
いつからいたのを知っていたのか?
いいえ、この人がずーっと出たあと視線がうるさかったから気付いたんですよ!
「わざわざ王女宮までなんのご用でしょうか?」
「はは……大変申し訳ございません。本来ならばおじいさまを通してご連絡をいれるべきだとは思ったんですが、どうにもできませんで」
「……え?」
ニコラスさんが、どうにもできない?
それっていやな予感しかしませんが!?
「王太子殿下がお呼びです。大切な話があるから……と」
ほらあああああ!
やっぱり面倒ごとっぽいじゃないですかあああ!




