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プリメラさまは堂々としてらっしゃいました。
元より王族としての振る舞いを常に心掛けておられるので、なんとご立派なことでしょう!
それに加え、公務をこなすようになってからは更に落ち着きも持っておられてですね……はあ~~~パーフェクトプリンセスとはまさにこのこと!!
ずっとおそばでその努力も見てきた私からすれば、毎回感動ものですとも。
映画だったら感動の超大作って銘打たれてもおかしくないですからね!
いえ、前世の記憶がいくら曖昧でもわかります。
私は映画関係者ではありませんでしたから言いすぎでした、はい。
でもこのユリア・フォン・ファンディッドからしてみたらそのくらい大事ってことです。
だってプリメラさまが赤ちゃんの時から見守ってますからね~~~~~!!
「お待たせしたかしら、マール侯爵、マール侯爵夫人」
「いいえ、そのような。王女殿下の貴重なお時間を割いていただき、誠に感謝を……」
「いいのよ。先日楽しい時間を過ごさせてもらったのだもの」
「は……」
マール侯爵は静かな人だった。
私も遠目にその姿を見たことがあるだけで、あとは人から聞いた評判ばかり。
まあなんといっても私とは関係のない人なのでそれも仕方のない話。
噂を鵜呑みにすることはしませんが、実家と縁があるわけでもないし、職場に影響がある相手というわけでもない以上そんなものでしょう。
とはいえ。
愚直なまでに真面目で融通が利かない人、という評判を聞いたことがありましたが、実際に目の前にしてみてもマール侯爵がそのような人物かはわかりません。
ただ、王城で長く勤めている私からするとその評判とは少し違うような気がいたしました。
どう違うのか? と聞かれたらまだわかりませんけれども。
「今日はわざわざ謝罪に来てくれたと聞いているけれど」
「は。先日の茶会にて、妻が招いた客の中に我が一門の寄子がおりました。その者が王女宮筆頭殿に対し大変な無礼を働き、また、王城の勤め人を愚弄する発言をいたしましたことお詫び申し上げます」
「そう……マール侯爵はそれらを受けてどのように対処なさるの?」
プリメラさまの問いかけに、マール侯爵は再び頭を深く下げました。
おや?
マール夫人はひたすら頭を下げているだけですが随分と顔色がよくありません。
夫君にそれほど叱られたのでしょうか……?
「寄子に関しては当面王都への出入りは禁止とし、今一度貴族教育をやり直す手配を進めております。現在は当領地に向かわせておりますので、その途におります」
「そう」
「また、王女殿下並びに王女宮筆頭殿に関してお詫びの品をと考えておりましたが、当家にて差し上げられるものであればどのようなものでもと思い目録を持参いたしました」
「まあ、そこまで?」
本当にそこまでする? と私も少し驚いてしまいましたよ。
確かにあの日、ご息女の売り込み&私を利用して寄子たちへの教育&家臣団への威信表明っていう二兎も三兎も追っちゃった結果熊の巣穴に飛び込んだ、みたいな見事なオチを披露してくださったマール夫人ですが……。
(国王陛下のお怒りを買うことを考えたら、未然に防ぐためにもこのくらいしなくちゃならないのかしら?)
さすがに陛下がいくらプリメラさまラブでもそこまで酷いことはしないと……思いますけど……。
なんたって、マール侯爵は上位貴族なのですから!
多少の叱責や今後起きる厄介ごと……例えば流行病の際など、被害が少なかった場合その分他領や国家に対して税金を増やされるとかそういうことでチクチク言われたりはするでしょうが、でもその程度でしょう。
なんならただ叱責のお言葉一つとかで終わりそうなもんです。
ぶっちゃけ、被害に遭ったのは私だけですしね!
これでプリメラさまにマール家のご令嬢が失礼をしたってんなら話は別ですが、そんな素振りはありませんでしたし。
「我が家の子どもたちも、再教育を施すために領地に戻しました」
(ええ!?)
これは驚きですよ、本当になんでそこまで?
ライアンに視線を向ければ、侯爵の発言は事実だと小さな頷きが返されたのですでにそのようにしているのでしょう。
「マール侯爵家は堅実であるべき立場。どうぞこれにてお許しいただけたらと思います」
「マール侯爵家を預かる女主人として至らぬことが多く、王女殿下のお目を汚したこと、重ねてお詫び申し上げます……」
夫妻が深く深く頭を下げました。
プリメラさまは少しだけ躊躇った様子を見せてから、私を見上げて頷きました。
「……わかったわ。マール侯爵の謝罪を受け入れます。目録や、それをどうするかは王女宮筆頭に一任するから後は彼女と話してちょうだい。お願いね、ユリア」
「かしこまりました」
「それではわたしはこれで失礼するわ。……マール侯爵、夫人。このような話の後だけれどよかったら後で庭を眺めていくといいわ。ライアン、その際は案内をしてあげて」
「承知いたしました、王女殿下」
プリメラさまが立ち上がり、ライアンがドアを開けて退室――その向こうには、セバスチャンさんがしっかり待機していました。
ええ、これから神学の復習をしに図書館に行かれるんですもんね!
「……それではマール侯爵、マール夫人。失礼して私も座らせていただきますがよろしいでしょうか?」
「勿論だ、王女宮筆頭殿」
さあ、私は私でお仕事しましょうね!
最初っからもう胃が痛いどころじゃないマール夫人。




