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バルトチェッラ家からは正式な謝罪文が届きました。
次男くんも熱意があるとしたって粘着質な手紙はいけませんよね。
本命を落とすためとはいえ、協力を求められた私が怖いんだから本命は本気で口説かれたら恐怖を感じそうなネバネバっぷりでしたからね!?
自然薯も負けちゃうんじゃないかなって思うねばっぷりでした。
そういやこの世界に自然薯ってあるのかしら。
まあそういう愛情が好きな人が世の中にはいるはずですので、合う方と出会えたらいいんじゃないかなと思いますが……。
少なくともスカーレットには合いそうにないですね……。
「あら、ユリアさま。どうかなさいましたの?」
「ああいえ……最近は何かと騒がしいなと思っただけですよ」
その当のスカーレットは今日も楽しそうにプリメラさま宛のお手紙を仕分けしているわけですけれども。
郵便課から届いたそれらを更に仕分けして、内容を確認した上でお届けに上がるわけですね。
ちなみにディーンさまからのお手紙はバウム家の印章であることと、ご本人の筆跡であることを封筒に書かれている文字から確認したら内容は確認せずにプリメラさまに届けるようにと陛下が許可を出しております。
基本的に王宮の奥まで届く手紙について、怪しげなものが混じらないようにいくつもチェックポイントを通過するので……だからこそ暗号だの隠語だのが発達するんでしょうね……。
私もセバスチャンさんに興味本位で尋ねたことがありますが、笑顔で封殺されてしまいました。
興味本位で触れてはなりませんね。
「ユリアさまを悩ませるなんて良くない人間がおりますのね? 必要でしたらワタクシが抗議して参りましょうか?」
「い、いえ、大丈夫よ」
なんで好戦的なの!?
いい子なんだけど、とてもいい子なんだけども……いや出会った時から確かに好戦的だったけども……!
「スカーレット、王女宮の侍女として確かに軽んじられる行為は良くないと思うわ。けれどこちらから抗議するにしたってやり方というものがあります。私たちの言動一つ一つがプリメラさまの名誉にも関わってくるのですから、そこを忘れてはいけませんよ」
「わかりましたわ!」
お返事はいいんですけどね……いつもね……。
いいえ、きっとわかってくれていますよね!
「そういえばユリアさま、聞きまして?」
「なにかしら」
「王女宮にまつわる噂話が最近多いんですの」
「あら……」
「そうなんですよお!」
メイナもひょこっと現れて教えてくれたことによると……。
王女宮に勤めると、奥まったところで殆ど表に出てこないから婚期を逃す。
「出会いがないって言われているみたいですね! そうでもないと思うんですけど……」
「そうねえ、他の部署とまったく連携を取らないわけでもないし」
いろんなところと書類だってやりとりしてますしね?
それこそ郵便課の人や巡回の騎士さんたちなんて顔見知りですよ。
そして食堂で食事だってしますし、話しかけられることだって少なくありませんからね。
「国王陛下の溺愛する王女殿下にお仕えしているからお高く止まっている、なんてものもありますわ」
「まあ……」
「実際ワタクシたちは高嶺の花であるべきですわ! この国で最も高貴な女性のお一人であるプリメラさまにお仕えしているんですもの!!」
今にも高らかに笑い出しそうなスカーレットですが、まあ間違ってはいません。
プリメラさまにお仕えできているっていうことはとても幸せなことですし……でもだからってお高く止まった覚えはないんですけど。
「でもその反面、王侯貴族と知り合えるから目が肥えているって話もありましたよ」
「そうですわね、選び放題なんじゃないかって話もありましたわ」
……それはハンスさんが頑張ってくれたんです、か、ね……?
他にもちゃんと仕事をしている姿が楽しそうだからきっといい職場に違いないって言われて同期に羨ましがられましたってメイナの話にちょっぴり心が癒やされました。
うーん、噂を操るって難しいなあ!




