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人伝に聞きましたが、バルトチェッラ家の皆さまが先日王都の屋敷から領地の方へ全員お戻りになったそうです。
今代のご当主は王城での役職をお持ちではないため領地経営に専念されており、農作物の研究などが盛んだったと覚えております。
……スカーレットへのお見合いはまあ上手く行けばいいな程度に考えていたとしても、嫡男があれだけ落ち着いた成長を見せていればそれを支える次男と三男は当面多くのことを学ぶためにも王都に置いておきたかったでしょうに……。
今回の件で王都に残すより連れ帰ってしっかり教育し直す方針なのでしょう。
次男くんは巻き込まれる形でしたがお疲れさまってやつですね!
まあ私としてはその方がいいと思います。
スカーレットはこれまでのやらかしがあるのでまだ厳しい目を向けられがちですが、同時に今注目株でもあるのです。
その彼女とちょっとトラブルがあった……なんて話題は、どっからともなく聞きつけた貴族たちにとって大いに話題になることでしょう。
そうなるとバルトチェッラ家の方が損をすること請け合いです。
(あくまで兄を思っての行動だったという兄想いの少年っつったって、やらかした場所が王城で手をあげかけたなんてことになりゃあそりゃ紳士の風上にも置けないって言われちゃうからねえ)
息子をどう育てたのやらって嘲笑が飛んでくる、これが貴族社会ですよ!
面と向かって言うんではなく、おだやか~にやってくる人たちがいるからさ。
それを想えば次男くんはノーダメージっぽく見えますが、このまま王都で何かを学ぶにしてもあの弟の……とかスカーレットにフラれる前に終わった……とか意地の悪いことを言う人はやっぱりどこにでもいるので、そういう点では領地が一番安全です。
幸いピジョット家としては今後も友人としてお付き合いは続けるけど、前よりは距離を保ちたいなってスタンスのようなのでしばらく領地で大人しくしていれば堅実な運営も相俟って、話題に上ることはないでしょう。
スカーレットも『特に思うところはございませんわ!』って高笑いしかけて我慢してましたしね。
なんともなさそうです。
むしろもっと仕事をくれと意欲的なので、デボラさんと一緒にプリメラさまのお手紙担当として今頑張ってもらっております。
やっぱり彼女は字がとても綺麗なのでね!
たかがお手紙、されどお手紙。
プリメラさまのお立場を考えれば、手紙ってとても重要ですからね?
「ユリアさま、一通り書き終わりましたけれどいくつか確認していただきたいものがございますわ! 今お時間よろしくって?」
「ええ、大丈夫。どれかしら」
「ここなんですけれども……」
過去にやらかしたことはそう簡単には拭えませんが、スカーレットは確実に、以前に比べて何段も成長を遂げているのです。
彼女が意欲的である以上、それを伸ばしてあげたいと思うのは当然のことでしょう?
(……結局、私もまだ決めかねているんだし今はスカーレットとメイナに私が教えられることを教える、それでいいわよね)
そういえばメイナにも縁談の話が来ていたようなんですけど、しれっとセバスチャンさんが握り潰していたのできっといいものではなかったんでしょう。
今のところセバスチャンさんチェックを超えられていないようなので、良物件がないってことでいいんですかね。
一応本人の意向は……? と聞いてみたことはありますが、少なくともメイナを尊重してくれそうなタイプではないからということでした。
……いいご縁って、なかなか難しいね……!




