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「リモート魔王」――改善してたら魔王に定義されました。家族との絆が削られる魔王に…  作者: 遠藤 世羅須
第四章 「世界編」―真実の重み

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第四章 第11話 仕組まれた技

魔王対戦を引き分けで終えた直人、

負けなかった事で、自分を納得させていたが……

応接に案内された直人は、ミリアと隣合わせで座る。

ヴァルダスとミカゲも座る。

そして、ナンシーまで腰掛ける。

(なぜナンシー?暇なのか?)


アリアドネのお家芸、同時ドリンク。

見惚れてしまう。

挿絵(By みてみん)


ヴァルダスが口を開く。

「魔王対戦、お疲れ様でした」

直人は

「今回は手間をかけずに終わったのが進歩なのか」

ミカゲが

「それは重要ですが、やはりあなたのスキルは重要ですね」

直人が

「わかるのか?」

ミカゲとヴァルダスは顔を見合わせにこやかに笑う。

ヴァルダスが

「私共にはすぐわかりますよ。素晴らしいということも」

直人は

「あんな嫌なスキルがか」

ミカゲは

「大変面白いスキルです。期待しています」

ミリアが

「魔王さま、褒められた♡」

直人はミリアを見ながら

「子供じゃないんだから、褒められて嬉しいもんじゃない」


ミカゲが

「しかし、一つお聞きいたします」

「何だ」

「何故、火力団子をお使いにならなかったのですか?」

直人は、一瞬言葉に詰まる。

(やはり、そこに来るか)


「俺の……ポリシーは曲げられない」

ミカゲは直人をじっと見つめる。

「そうですか。Lv3より、1を取ったのですね」

直人は痛い所を突かれて黙る。

少し不快な表情に見えたのか。

ミカゲが、

「これは失礼しました。皆さん、其々に個性がありますから、

 そこを強制はいたしません」

続けて、

「しかし、佐倉魔王殿にはLv上げが必要かと思いまして」

直人はぐうの音もでない。

自分でLv99と宣言していたのだから。

しかし、

「俺は、俺のやり方で行く」

と一言だけ返す。


ミカゲは値踏みをするような感じで眺めていたが、

「わかりました」と一言だけ言うと、

表情が読み取りずらい顔で話し始める。


「では、これから大事なお話を致します」

直人はふっと気が抜けるが、

「何が大事なんだ。ひなより大事なことがあるか」

と棘のある返事をして、ミカゲを睨む。


ミカゲ少しだけ頷き、一息おいて、

「まず、最初に、お知らせ、いや、お伝えしたい事がございます」

「何だ」

ミカゲは一拍置く。

「私は、あなたの少し先輩にあたります」


(こいつは何を言ってるんだ?マウント取ってるのか?)

「それが何だ」

と、短く返す。


ミカゲは少し笑みを浮かべながら、

「実は、私も日本から来たのです。

 あなたより千年ばかり前の日本から。

 同じく門から入り、魔王でした」


直人は流石に驚く。

千年前と言ったら、日本は平安時代。

「本当なのか……」

「はい。平安時代です。当時、私は都で陰陽師でした」

「陰陽師!」

直人は心底驚き、声が裏返ってしまった。

ミリアが笑っている。

「魔王さま、同類♡」

いや、平安貴族などと同類などではない。

陰陽師などと会うのは初めてだ。

それにしても、平安時代とは……

 

「それは、……確かに先輩だ」

「はい。ですので、少しは御身のお里を存じ上げています」

「千年前とはずいぶん違うだろうけどな」

「最近の事も都度調べていました。色々な歴史や文化を」

(そうなのか……)



「それと」

ミカゲがもったいぶって言う

「あなたは、ミリアが現れた時や、魔界で言葉が通じるのは

 不思議では無かったですか?」


直人はその言葉に衝撃を受けた。

何の疑問も持たなかった。

最初にミリアが現れた時に、ゲームだと思い込んだから、

普通に言葉が通じるものだと思っていた。

「では、何故言葉がわかるんだ」

「私が、『言語変換術式』をかけさせて頂きました」

「この術は、魔界標準語、一般魔獣語彙、メール文章などを日本語に

 変換できます。

 しかし、特殊魔獣語、古代文字など、変換不能言語はございます。

 今後そのような場面に会う事もあるでしょう」

「因みに、これは、あなたが『管理者の杖』を手にした時から有効になっています」


直人は、驚きの顔のまま、ミカゲとミリアを交互に見ながら

「そうだったのか…」

とだけしか言えない。

今まで何の不自由も無く会話や文章を書いてきたが、

日本語である事に全く不思議を感じなかった。

「あなたの術式なのか。俺にかけた」

「はい。そうご理解下さい」

「しかし、それは魔界に来てからですので、

 最初、画面越しの時はあなたの言葉は

 『魔王語』とか呼ばれていましたね」

とミカゲは笑みを浮かべながら語る。


「そして、本題はこれからです」

(何だ、本題って)

「どういう事だ?」


「はい。あなたが最初の頃、言葉でゴブリンや宝箱が増えた事がありましたね」

「ああ、あった。理不尽な仕掛けがな」


ミカゲはニヤリと笑いながら言う。

「あれも術式です」

「何だと!」

直人は思わず立ち上がりかけて、座りなおす。

思えば苦しめられた、あの、「すみません」と「持ち帰ります」の言葉。

「どういう事だ」



「あなたには、魔界で魔王になっていただかなくてはいけませんでした」

「しかし、術式の心得もマナもない現世の方に、いきなり魔術というのは無理です。

 そこで、魔術訓練の代わりになる『術式』訓練になるようにと、

 ミリアが機転を利かせて、私に依頼してきましたので、

 あなたの一番使われる言葉が、呪文の代わりになるように仕込んだのです」

挿絵(By みてみん)


直人は口を半開きにしたまま固まっている。

「待て待て、あれが術式だと!?」

「はい。知らぬうちに大分訓練できたはずです」

「人がどれだけ苦労したと思っているんだ」

「魔界で一から訓練するのはもっと大変で時間かかりましたよ」

(それはそうかもしれないが……)


「あなたのスキルが早く発露したのも、そのお陰かと」

「それと、そのコントロールも魔術に慣れてきた証拠です」


直人は、この理不尽を冷静に振り返る。

デーモンロードとの訓練の時、バグやワームのスコープ、思えば確かにそうだ。

ひなだけでは説明もつかない。


直人は、

「まて、もう一つ、『定義してください』もあったな」

ミカゲが

「そうですね。それは、術式の速度を上げる訓練です。

 その3種類で、大分お力にはなったと思います」


ミリアを見る。

ニコニコしている。

「ミリア、俺が胃に穴が開きそうなくらい

 苦しんでるのを笑って見てたな」

「魔王さまのお勉強の家庭教師です♡」

「何が家庭教師だ。あれは『調教』だろ」

「うふ♡」


直人はイラつくが、

努めて冷静さを保ち、状況を分析する。


「それは、これからも続くのか」

「はい。暫くそのままですが、あなたのLvが上がれば

 解除または転用ができます」

「解除、転用?」

「はい。言葉が術式発動条件ですので、その言葉を解除ができます。

 また、別の効果に転換する事もできます。

 例えば『すみません』と言えば、防御術式発動とかですね」


直人は理解はする、

(それは便利かも……)

しかし、今まで被ってきた「精神的被害」が蘇る。

あれほど禁句言葉の呪いを恨んだことはない。


「起きている事は理解したが、理不尽な事には苦情上げたい」

ミカゲを睨む

「それに、対価が合わないぞ」

直人の精いっぱいの抵抗だった。


ミカゲは

「今はまだ道半ばですが、いずれ、あなたにも対価が分かる時があるでしょう」

目線を直人に固定し、

「それに、あなたの熟練度では、まだ解除、転用は無理ですが、

 いずれかその時は来るでしょう」


直人は驚き疲れ、目を閉じ天を仰ぐ。

イライラもしていたが、何を言っても丸め込まれるような

絶望感もあった。


ひなの顔が浮かぶ。

熱が心配だ。

心が乱れる。


一息つきたくて、UIを見てみる。


【魔王Lv】Lv61→Lv62(魔王対戦引き分けの為)

【ミュート5分】63日

【復活】496年


(496年……。何代先の子孫がいるんだ?)


これはいつものやつ。


その先のコマンドが多岐にわたっているので、

全部を見て無かったが、

調べていくと、あった。


【術式変換】権限不足


これか。

でも、権限不足。いつものヤツ。


ミカゲが

「最後にお話ししておきましょうか」

「何を」

「ここに居ますナンシーですが」

「そのナンシーがどうした」


ミカゲはナンシーを見てニコリとする。

ナンシーも笑みで軽く頷く。


「彼女も元魔王ですよ」


直人は今日何度目かの驚きで立ち上がりそうになる。

ゴーストライターがいるとはいえ、魔界で今まで苦しめられた忌み嫌う名前。

それが元魔王だと!?

「冗談はよしてくれ」

直人は、別ベクトルの胃を痛めた原因が、元魔王であると聞き、

今更ながら、魔界の理不尽が堪えた。


「彼女は以前、アメリカから来ました。

 魔王として活躍されたのですが、

 あなたのようなユニークスキルが発露しまして、

 それが『読心』だったのですよ」

「そのスキルは、相手の心が読めるスキルです。

 大変有用ですよね。

 それで、私が協会にスカウト致しました」


直人は色々納得してしまう。

こちらの考えを先読みしてくるようなメールや対応。

読心ならば納得する。

(しかし、それも「嫌なスキル」だな……)


ナンシーが笑いながら言う。

「そうですよね、嫌なスキルですよね」

直人は、早速心を読まれて居心地が悪い。


「すまない。俺のスキルもそうだが、嫌なのが来ると思ってな」

「構いません。私も嫌だと思っています。

 でも、魔人などは心が全く違いますから、仕事には便利だと思っています」

「そうだろうな」


ミリアが

「嫌な同士のお仲間♡」

直人は、無言で「黙ってろ」と目線を送る。


ナンシーが

「でも、あなたのスキルは非常に強力で魔界の理を破壊できるものです。

 危険ですし、大変有用です」


「有用とは?」


ミカゲが引き取る。

「時期が来たらお話致しますが、『その先』のお話になります」

「我々は、皆、期待しているという事をご理解下さい」


「ご理解と言われてもな。こちらはそれどころじゃない」


「ひなちゃんの件ですね。

 それについては、一つ試せる策を考案致しました」

「何だ、教えろ」

「次回で結構ですけど、ひなちゃんの大事にしているものを一つお持ち下さい」

「大事にしているもの?」

「はい。ぬいぐるみでも、洋服でも、何でも結構です」

「それでひなが助かるのか」

「アンカーを置きます。マナの影響を抑える」

「出来るのか!?」

「はい、少しだけではありますが」

「わかった。すぐに持ってくる」

「承りました」


直人はいても立ってもいられず席を立ち、

ミリアとその場を立ち去り、転移陣へ急いだ。


(つづく)

直人に対する「仕込み」の数々が明らかになるも、

自分の事よりも、ひなの事が重大事。

直人は、早速現世に戻る。

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